「多国籍人材と会話する能力は、最も大切」バンコクのインターナショナルスクールが大切にしていること

海外留学・教育移住を考えている皆さんに、実際にタイのバンコクで暮らしている筆者が、バンコクにおける教育事情をお届けします。今回はバンコクの中心街から車で30~40分ほど行ったところにあるインターナショナルスクールを紹介します。

バンコクの中心部からそう遠くない場所にある、キンケード・インターナショナルスクール

キンケード・インターナショナルスクール(Kincaid International School)は、バンコクの中心街(スクンビットエリア)から車で30~40分ほど行った、パタナカーン通りのソイ69にあるインターナショナルスクール(以下インター校)です。

スティーブ校長

学校の設立は2000年と比較的新しく、設立者である校長のStiveさん(以下スティーブ校長)は、7か国語が話せるタイ&アメリカのハーフでタイ在住30年。アメリカでの暮らしも長く、英語/タイ語はもちろんネイティブスピーカーの先生です。

そんなスティーブ校長率いるキンケード・インターナショナルスクールは、就学年次の幅が広く、下は生後半年の赤ちゃんから上は高校3年生(Grade12)まで学んでいます。多国籍の生徒を受け入れ、日本人の生徒も10数パーセントの割合で在籍しているとのことでした。

個性を大切にする教育方針

キンケード・インターナショナルスクールには多国籍の生徒がいます。小さい子から大きなお兄さんお姉さんまで、ゲストである筆者にも、そして先生にも廊下ですれ違うたびにさりげなくあいさつをしてくれる姿が印象的でした。

一般的に「みんな違ってみんないい」といったスローガンはよく耳にします。しかし、国籍の違う子どもたち同士がお互いを尊敬し合えるようにするためには、そこに行きつくまでにいくつものステップがあり、それぞれ段階に見合った工夫も必要になるのは、容易に想像できます。

キンケード・インターナショナルスクールでは授業はすべて英語で行われていますが、それ以外の時間は、積極的に他の言語で話すことも勧められています。自分と相手の立場を深く理解するためには、母国語でフレンドシップを築くのもとても大切だという思想があるからです。

自己の土台形成に密接につながる母国語。それを話せる気のおけない友達と毎日学校でも会話することによって、それぞれの個性が尊重される仕組みがしっかりと醸成されているようでした。

母国語のスタイルであいさつして、英語でおしゃべりする姿も

驚いたのは、筆者がキンダークラスのお手洗いをお借りしたときのこと。4~5歳の肌の色も髪型も背格好も違う子どもたちが、それぞれ自分の母国語の一番ていねいなスタイルで私にあいさつをしてきてくれたのです。日本語の子は頭を下げ、タイ語の子は胸の前で手を合わせ、英語の子は手を膝のあたりで重ねてお辞儀をしてくれました。

そのあと、その子たちは、何事もなかったかのように、鏡の前で彼女たちの共通言語である英語でぺちゃくちゃおしゃべりを続けます。とっても個性的で、かわいくて、胸がいっぱいになりました。

サイエンスクラスでのディスカッション風景

学校にお邪魔した日は、カフェテリアを兼ねた講堂でSience(科学)の授業が行われ、4人1組となって取り組んでいました。分厚いテキストブック片手に、なにやら大きな画用紙に作画をしています。

話はしているのですが、明らかに私語ではありません。たしかに科学の授業中のようですが、生徒たちの学ぶ姿はまるで放課後大好きなサークル活動にワクワクと参加しているようなくつろいだ姿です。

実際教師からは「違う価値観や習慣をもった相手を尊重しながらディスカッションを進め、プロジェクト(作画)をすすめる」というミッションが課せられていたようです。

「こういった授業では、とくに同じ国籍の子が固まらないように、あえてバラバラで勉強に取り組ませることもあります。多国籍人材同士で会話する能力は、今後最も大切になってくると思います」と話すスティーブ校長。

適宜スマホやタブレットも参照しながら、ディスカッションを展開して、画用紙にひとつの人体図を描く生徒たち。筆者も、わずか数分の授業参観の間に、「これがこどもたちのすぐ目の前に広がっている日常なのだ」と、臨場感をもつことができました。

タイの伝統を学ぶ特別クラス

学校内には「タイの言葉と文化」という特別クラスがあります。中で教わるのは、タイ語はもちろんのこと、習慣や王政についてなど、トピックは多岐にわたるようです。

案内役の先生によると「地元のタイ人でも知らない人がいるような礼儀正しすぎる程に礼儀正しい所作なども、ここではあえて教えています」ということでした。自分たちの住んでいる歴史的な文化や伝統を実際に体験することで、今の生活がどのような流れのもと成立しているかを学び、翻って多国籍の子どもたちがそれぞれの国のアイデンティティに思いをはせるきっかけともなるでしょう。

先生の個性を大切にする授業

教室内の風景をみたところ、椅子にもたれ掛って身体を楽にしている生徒がいるクラス、逆に日本の義務教育でも見ないようなきっちりと正しく椅子に座ってみんなが同じ方を向いているクラス、椅子や机さえ無視して床に座っているクラスもそれぞれありました。その姿はクラスごとで何となく似ているので、生徒の個性というより、先生の個性を発揮しているようにも見えました。

国籍ごとのあいさつの違いひとつとっても、「身体性」にかかわることは、その人それぞれの文化に依存します。キンケード・インターナショナルスクールは、生徒の個性を大切にするだけではなく、先生の個性も出来る限り授業に反映されているようです。筆者は首尾一貫したその教育方針にとてもいい印象を受けました。

食事について

食事の時間は、コロナ禍の影響で、普段使われているカフェテリアではなくて、各々の教室で昼食がとられます。ユニークなのはお替りのシステム。一人前にしても十分すぎるくらいの量の食事がお代わりプレート(写真)としておいてあって、あとからカフェテリア内で好きなだけお皿をとって食べていいそうです。

「さまざまな家庭環境に配慮して、学校に来てお腹がすいて勉強ができないということがないように。すぐ食べられる軽食を用意してあります」ということなのだそうです。

学費について

キンケード・インターナショナルスクールは、非営利組織の運営です。大学院生を先生として起用するなど、経費面を考慮してさまざまな工夫がされており、それによって一般の大規模インター校より低額の学費で通えます(詳しくは学校のホームページをご覧ください)。

Kincaid International School of Bangkok

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