スマホ片手に自由な日本の旅を WAmazingが見据えるMaaSと地方交通の姿とは?

新型コロナウイルスの感染拡大により痛烈な打撃を受けた観光業界。特に外国からの渡航が制限されたため、インバウンド需要は著しく減少した。そんな逆境にあって「今後もインバウンドに特化したサービスは成長分野」と信じて挑戦を続ける企業がある。

インバウンド向け観光プラットフォームサービスを提供する創業4年のスタートアップ、WAmazing 株式会社(以下、ワメイジング)だ。「日本中を楽しみ尽くしてもらうために」と掲げる彼らの取り組みについて、また、外国人旅行者視点だからこそ見える日本の交通課題やモビリティサービスへの期待について、代表取締役社長の加藤 史子氏に話を伺った。

インバウンド向けスマホアプリ「WAmazing」

――御社のサービスについて教えてください。

加藤氏

:ワメイジングは訪日外国人旅行者、いわゆるインバウンドに特化した観光プラットフォームサービスを展開しています。現在は香港・台湾・中国を中心に、ASEAN諸国 やオーストラリア、北米でもサービスを展開中です。スマートフォンアプリ「WAmazing」は、現在、英語と中国語(中国簡体字、台湾繁体字、香港繁体字)に言語対応しています。

訪日外国人旅行客は1回の旅行で、1人あたり約15万円消費すると言われています。主な使い道は、宿泊、飲食、施設への入場料、買い物、そして交通の5領域です。ワメイジングはまず飲食以外の4領域でサービスを提供しています。

私たちは「日本中を楽しみ尽くしてもらうために」をミッションに掲げています。外国人旅行者が日本を旅行している時に使える情報を提供し、宿泊施設やレジャー施設等の予約・決済まで完結するワンストッププラットフォームを目指しています。

――特に多い利用客はどの層なのでしょうか?

加藤氏

:2017年1月のアプリリリース以降、台湾や香港、中国などの利用者を中心にサービスを提供しています。このアジア圏の特徴の1つが、日本以上にスマートフォンが普及している点です。

日本はスマホ保有率が約7割と言われていますが、中国や韓国、香港では、ほぼ100%に近い割合です。その中でも若年層は、いわゆるデジタルネイティブと言われる世代で、スマホからSNSで情報収集し、消費行動を決定しています。

このような層に対して、デジタルマーケティングを中心としたスマホ中心の旅行サービス

を展開しています。

※インタビューを行った2020年9月時点では、海外からの旅行客がいないこともありサービスを一時停止している。

スマホ片手に自由な旅行ができるように

――日本を訪れた旅行者は、具体的にどんなサービスを受けられるんでしょうか?

加藤氏

:ワメイジングのアプリをインストールして個人情報を登録していただいた方に無料のSIMカードを提供しています。観光庁の調査によると、外国人旅行者が旅行中に困ったことの1位が「無料の公衆無線LAN環境が整っていない」と、ネット環境に困っている方々が多いことから始めました。

この配布サービスは口コミで徐々に広まり、新型コロナが感染拡大する直前までは、平均して1カ月に1万人会員が増え続けていました。外国人の旅行者はグループで日本を訪問する場合が多いので、1人が無料SIMカードのことを知ると仲間に伝え、結果、全員がアプリをインストールして会員登録するというバイラル効果が働きやすいのだと考えています。

アプリで会員登録完了した後、空港に設置されたワメイジング専用マシンでQRコードによる本人認証を完了すると、SIMカードが出てきます。現在、専用マシンは日本国内の国際空港22カ所に設置されていて、空から来る外国人旅行者の9割以上をカバーしています。

ワメイジングのもう一つの集客の柱はオウンドメディアでのコンテンツの発信です。日本の旅行時に参考になる観光ガイドのようなオリジナルコンテンツを、これまでに2,000本以上掲載してきました。

WAmazing 代表取締役社長の加藤史子氏
(提供:WAmazing)

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