親の資産をどこまで把握?実際に親の死でわかった必要な「お金の手続き」

皆さんは、両親が今、どれだけの財産を持っているのか、どの金融機関と取引しているのか、キャッシュカードの暗証番号やインターネット金融機関のIDやパスワードがどうなっているのかを把握していますか。縁起でもないことは考えたくないし、口に出すのも憚れると思いますが、自然に考えれば自分よりも先に親は亡くなります。そうなった時に慌てないようにするためにも、親が持っている財産の情報を出来るだけ早めに共有しておくようにしましょう。


突然ですが実父が亡くなりました

私事で恐縮ですが、先般、実父が亡くなりました。経緯はこうです。

今から7年ほど前に脳梗塞を患い、一時は生命の危険にさらされましたが一命を取り留め、懸命なリハビリによって普通に歩けるようになり、言語機能もほぼ正常に戻りました。

それからは実家で暮らしていたのですが、脳梗塞の後遺症なのか、時々夢の世界に行ってしまったり、徐々に歩行にも支障を来したりするようになりました。

そして2018年12月、深夜に自宅で転倒して救急車騒動となり、そのまま総合病院に入院。2019年2月に退院するのと同時にショートステイを受け付けている施設に入り、入所中に介護認定で「要介護3」が取れたため、そのまま特別養護老人ホームを探して同年5月にお引越し。そこからしばらく平和で静かな生活をしていたのですが、今年4月に誤嚥によって肺炎を起こし、総合病院に入院。この時点でもうあまり長くはないことを担当医師に告げられ、7月9日に終末期医療の病院に転院。同月21日に亡くなりました。

時間は深夜。事務所で原稿を書いている時に「危ない状態です」という電話が架かってきたため、病院に行くこともできず、死に際に立ち会うことは叶いませんでした。

故人を偲んでいる時間はありません

親が亡くなると、やらなければならないことが山積みです。この記事は、まだ両親が健在である人を対象にして書いておりますので、その点は了承ください。

まずは遺体の引き取りです。うちの場合、互助会に入っていたので、深夜でも電話1本で引き取りに来てくれました。遺体はそのまま実家近くの斎場で預かってもらいました。

翌日、互助会と打ち合わせ。お通夜と葬儀の日取りを決め、お寺と連絡。僧侶のスケジュールを確認して、お通夜と葬儀の参加者を決め、通夜振る舞いの食事をどうするか、祭壇はどれにするかなどを決めていく過程で、葬儀費用が徐々に固まっていきます。この間、大量の書類を確認して住所や氏名を記入し、捺印をする必要があります。もちろんすべて手書きです。自分の名前を手書きであれだけ書いたのは、本当に久しぶりのことでした。

ちなみに葬儀費用は、最近は大分安くできる方法もあるようですが、比較的リーズナブルなプランを選んでも、僧侶のお布施などを合わせれば200万円近いお金が一時的に発生します。なので、これは事前に現金で用意しておくこと。私は父がそろそろヤバイと言われた時点で預金を降ろしておきました。

あと久々に礼服を着る人は、サイズが合わないなんてこともありえるので、これも事前に確認しておいた方がいいですね。

そんなこんなで準備にバタバタしてお通夜、葬儀に突入。申し訳ないけど、故人を偲んでいる時間はありません。でも、本当に大変なのは葬儀が終わってからなのです。

やらねばならない手続きはたくさん

人が一人亡くなると、役所などの間でさまざまな手続きをしなければなりません。

まず区役所などに死亡届を出し、死体埋葬火葬許可証を取る必要があります。といっても、これは互助会が代行してくれたので、私自身は何もせずに済みました。ちなみに死亡届と死体埋葬火葬許可証は、葬儀の前までに取っておかないと火葬が出来ないので、速やかに手続きを取る必要があります。

葬儀の後もさまざまな手続きが生じます。

年金事務所に連絡をし、父親が亡くなったことを告げて、父の厚生年金の受給停止と共に、母親が遺族年金を受け取れるように手続きを取る必要があります。そして役所に行き、父親の健康保険証、介護保険証を返却します。

加えて実家の電気、ガス、NHK、電話、新聞の引き落とし口座を、父の銀行口座から母の銀行口座に切り替える手続きも必要です。

とまあ、ここまでやって一旦、落ち着く感じですが、私の場合、大きな落とし穴がありました。

今回のコロナ騒動で今年2月から特別養護老人ホームが家族との面会がシャットアウトされ、誤嚥で入院した病院も面会不可。さらに転院した終末期医療の病院も面会できずということになり、父に実印や銀行印などのある場所を聞くことができなかったのです。

もちろん、母が知っていると思っていたのですが、お金の管理はどうやらすべて父がやっていたらしく、母は自分の銀行印がどれかも分からないという状態でした。辛うじて母名義の銀行口座のキャッシュカードはあったものの、暗証番号が分からない。マイナンバー通知書も出てこない。家の権利書、父の遺言書は見つかったものの、未だに実印と銀行印、マイナンバー通知書は見つかっていません。

そのうえ、葬儀の後に母が入院したため、本人が窓口に行けば簡単に済む手続きをすべて私が代行することになりましたが、両親が高齢の場合、私のように母が入院するというイレギュラーに直面しなくても、子供が諸々の手続きを代行しなければならないケースが生じます。特に両親が地方に住まわれていて、その地元に兄弟がいない場合、自分が住んでいるところと実家との行き来もあるので、なるべく短時間で、効率的に手続きを済ませられるような工夫が必要になります。

近年はデジタル遺産の問題も

まあ、いろいろダラダラ書いたのですが、要するに親がある程度の年齢になったら、財産がどのくらいあるのか、実印や銀行印、土地の権利書などはどこに保管してあるのかなどの情報共有が大事だということです。たぶん、聞きにくいことなのだとは思いますが、この情報共有をしないで放置しておくと、最後に困るのは子供です。

もちろん母親がしっかり者ですべてを把握しているなら問題はないのですが、そうでない場合、この手の重要情報を墓場まで持っていかれてしまうと、かなり苦労することになります。特に最近はデジタル遺産の問題もありますから、暗証番号だけでなく、インターネット口座のIDやパスワードなども重要情報として、家族間で情報共有するようにしましょう。

今回はコロナ禍という特殊な状況だったので致し方ありませんでしたが、人がいつ亡くなるかは誰にも分かりませんし、両親が高齢になるほど認知症になるリスクも高まります。なかなか聞きにくいことだとは思うのですが、ご両親が心身ともに健康なうちに、話し合っておくことをお勧めします。

© 株式会社マネーフォワード