FIAレースディレクター、ペナルティに不満を持つハミルトンとは「喜んで話し合う用意がある」

 FIAレースディレクターのマイケル・マシは、6度の世界王者であるルイス・ハミルトン(メルセデス)がソチで行われた第10戦ロシアGPの後、レーススチュワードが「僕の走りを邪魔しようとしている」と抗議の声をあげた一件について、話し合いの「扉はいつでも開かれている」と述べた。

 ハミルトンが声をあげたのは、ロシアGP決勝で、グリッドへ向かう前のスタート練習を指定ゾーン外で行い、ピット出口を一定の速度で走らなかったことについて、レーススチュワードがペナルティを科したことに対してだった。

 ハミルトンは、それぞれについて5秒ずつ、計10秒のタイムペナルティと、スーパーライセンスにも計2点のペナルティポイントを科された。しかし、スタート練習がピットレーン出口を過ぎた後の特定エリアで行われたことに関して、ハミルトンがチームの指示に従っていたことが判明したため、スチュワードはペナルティポイントについては取り消した。

「これから戻って規則を確認する必要がある」と、ハミルトンはレース直後に語った。

「僕が何を間違えたのかを正確に把握する必要がある。こんなばかげたことに対して5秒ペナルティがふたつも科されるなんて、これまで一度もなかったはずだ」

 彼はレーススチュワードに言及して、「彼らは僕の走りを邪魔しようとしている」と付け加えた。「でもいいんだ。僕は自重して、集中力を切らさず、今後どうなるのかを見極めるだけだ」

2020年F1第10戦ロシアGP ピットストップ時に2つのタイムペナルティを消化したルイス・ハミルトン(メルセデス)

 その後、マシはハミルトンとメルセデスF1チームの代表者たちと会ったうえで、ドライバーのスタート練習は指定エリアでのみ行えるという規定はFIAのレース前ノートで明確に示されており、ソチで走る全員に手渡されていると述べた。

「もちろん、スタート練習の場所はコースごとに異なるため、各レースで渡されるノートに詳しく記されている」とマシは語った。

「だからこれまで他のレースでは、ルイスも他のドライバー全員も、レースディレクターの指示に応じてどこでレースをし、練習をして良いのかが決まるという規定に従ってきた」

「我々がスタート練習のエリアを決めるのは、すべてのドライバーの安全を守るためだ」

「コースで実際に何が起きているか、みんな認識しているはずだ。だから我々は考え抜いたうえでエリアを決めている」

「通常、我々はエリアに色を塗ったりはしない。単にそこを特定するだけだ。それは私がディレクターになる前から続いているやり方だと理解している。どこを指定するかは当然コースごとに異なってくる。その観点からいえば、今日の一件は単純なミスといえるだろう」

 ハミルトンがレース直後に発した「彼らは僕の走りを邪魔しようとしている」というコメントについて、マシはもしも彼がFIAの決定に不服があるのなら、喜んで話し合いに応じる用意があると述べた。

「私の立場からはとてもシンプルな話だ。もしもルイスが何か問題提起したいのなら、以前彼にも言ったし他のドライバー全員にも何度も言っていることだが、扉はいつでも開かれているし、喜んで話し合う用意がある」

「しかしFIAの観点で言えば、我々は競技の規制者として、規則の管理者としてここにいる」

「スチュワードは独立した判定者として各ケースへの裁定を下す。したがってそこに何らかの違反があったのなら、それがルイス・ハミルトンであれ他の19人のドライバーであれ関係ない。規則違反を認めたら、彼らはそれが違反者のメリットにつながったかどうかを検討し、あらゆる主だった要件を考慮に入れたうえで、公平、公正な裁定を下す」

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