歪んだ正義感をもつ人々の誹謗中傷とどう向き合うべきか

芸能界では立て続けに自死された方の報道がありました。今週飛び込んできた竹内結子さんのニュースは、非常にショッキングで動揺を隠せない人も多かったのではないでしょうか。しかしそれに対しても、歪んだ正義感をもつ人々はSNSや掲示板に誹謗中傷のコメントを載せています。日本メディアリテラシー協会代表理事の筆者が、これらの誹謗中傷とどう向き合うべきかについて迫ります。

有名人のショッキングなニュース

今年、22歳の若さで亡くなった女子プロレスラーの木村花さん。人気リアリティーショーに出演し、番組上のあるシーンをきっかけにインターネット上で誹謗中傷を浴びました。

公式TwitterやInstagramでは亡くなる直前にも、酷いリツイートやコメントが溢れていました。ご本人の心の叫びのような、センセーショナルな自虐行為の写真はすでに削除されていますが、多くの人の記憶に残っている悲しい出来事でした。

著名人・有名人とSNSへの誹謗中傷について考えさせられる大きなきっかけとなったにもかかわらず、歪んだ正義感をもつ人々は、この瞬間にもSNSや掲示板に誹謗中傷のコメントを載せています。

そしてその後、芸能界では立て続けに自死された方の報道がありました。今週、飛び込んできた竹内結子さんのニュースは、非常にショッキングなものでした。

歪んだ正義感をもつ人々

SNS上での誹謗中傷などの深刻化が問題となっている状況を踏まえて、総務省は2020年8月に総合的な対策として「インターネット上の誹謗中傷への対応の在り方に関する緊急提言」を取りまとめました。

それを踏まえ、2020年9月17日、インターネット上の誹謗中傷に関する注意事項などをまとめた「インターネットトラブル事例集(2020年版)追補版」を公表しました。SNSの投稿や再投稿で個人を攻撃する問題点や誹謗中傷被害の対処方法などを解説しています。法整備が、少しずつ進んでいる状況です。

総務省|インターネット上の違法・有害情報に対する対応(プロバイダ責任制限法)|インターネット上の誹謗中傷への対策

今までは、各投稿に関する誹謗中傷に対しての法的処置を取ることが主でしたが、ここ最近では「リツイート」「リグラム」「リポスト」など再投稿して他者に広める行為を含め、「人格を否定または攻撃するような投稿は正義ではない」と上記の事例集でも投げかけています。

「誹謗中傷は、再投稿者でも“広めることに荷担した”とみなされる。投稿・再投稿する前に必ず『自分が言われたらどう思うか』を考えて」とアドバイスしています。荷担していても、罪に問われる時代へと変わってきています。

またこの半年間で起こった芸能界の痛烈な出来事の特徴はテレビやSNSなどで、事実無根である特定の人に対しての、誹謗中傷が集まります。憶測で責任を求めたり、事実ではないことを拡散されることが増えています。「こんなときに、非難するべきではない!」といった言葉や、「批判して嘆くより、安らかにご冥福をお祈りします」いった言葉がたくさん使用されています。

「非難」「批判」「誹謗」「否定」の混同

日本のマスメディアでは、「非難」「批判」「誹謗」「否定」が同じような意味として、混在して使われています。言葉の正しい意味を辞書で調べてみると、

  • 批判
    批評して判断すること。物事を判定・評価すること。
  • 非難
    人の欠点や過失などを取り上げて責めること。
  • 否定
    そうではないと打ち消すこと。非として認めないこと。
  • 誹謗中傷
    誹謗:他人を悪く言うこと。
    中傷:根拠のないことを言いふらして、他人の名誉を傷つけること。

このように、誹謗中傷は、根拠がある非難よりさらに悪質で、何も根拠がないことを言いふらされたり拡散されたりして、人を傷つけることなのです。見比べてもわかるように、批判、非難、誹謗中傷はどれも意味が異なります。

言葉は、ときに凶器にもなり得る

本来、批判は悪い言葉ではありません。批判的思考(クリティカル・シンキング)という言葉はよく使われているので、聞いたことがあるかと思いますが、あらゆる物事の問題を特定して、適切に分析することによって、最適解に辿り着くための思考方法です。ディベート(議論)が多い欧米では、よく使われる思考法のひとつです。

しかしながら、SNS上では批判、非難、否定、誹謗中傷の境目がわからないような言葉が並んでいることが多々あります。相手への尊重とその言葉に根拠があり、正しい方向へ導くための建設的なコミュニケーションや発言が、批判ではないでしょうか。根拠はあって、攻撃性があるものは非難、根拠のない悪口は誹謗中傷です。

とくに、顔が見えない匿名性のコメントなどは悪口がエスカレートしやすい傾向にあります。悪意ある言葉は、ときに凶器にもなり得るのです。

言葉は、人を助ける力にもなりますが、凶器のように心に深い傷を残すことになることを私たちは忘れてはいけません。名前がわからないから大丈夫、自分が言ったことが正しいから何も言っても大丈夫ではないのです。

著名人や有名人も生身の人間

こうした一連のことを踏まえて、大手芸能事務所のアミューズが9月14日、所属アーティストや関係者への誹謗中傷、デマ情報などに対する公式コメントを発表しました。

当社所属アーティストや関係者への誹謗中傷、デマ情報、憶測記事、なりすまし等について

会ったことがない著名人や有名人も生身の人間で、有名税だから何を言っても大丈夫というわけではありません。日ごろ自分の周りにいる仲間や友だちに対して顔を見て言えないことは、たとえインターネット上であっても、言うことは許されないのではないでしょうか。

これまでの【寺島絵里花の子どもメディアリテラシー講座】は

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