「描ける限り描いていきたい」漫画家・中村明日美子“20年展”で美麗な手描き原画を披露

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漫画家の中村明日美子が、9月26日(土)より池袋PARCO内のPARCO FACTORYにて、自身の漫画家生活20年を記念した展覧会「中村明日美子20年展」を開催。9月25日(金)にメディア向けの内覧会が行われ、中村自身も来場して取材に応えた。

会場には中村明日美子自身がセレクトした約120点の原画が並ぶ

初期作品「Jの総て」(太田出版)、アニメ化もされた「同級生」(茜新社)シリーズをはじめ、「ノケモノと花嫁 THEMANGA」(幻冬舎)「王国物語」(集英社)など、中村が描いてきた珠玉の作品の中から選りすぐりのカラー原画や漫画原稿、アイディアの基となった資料やコレクション、制作段階が垣間見られる下描き原稿も展示され、“中村明日美子ワールド”を楽しめる。

デジタルでの作画が主流となってきている昨今でもアナログで執筆し、アシスタントを使わず自分一人で仕上げまでを行っている原画からは、印刷では伝えきれない緊張感のある美しさが漂う。線の1本1本が有機的な表情を持つ美麗な原画を間近で見られる貴重な機会だ。

会場の入り口には「Jの総て」の特大パネルがフォトスポット用に設えてあり、会場内にも人気キャラクターが並ぶ同様のスポットが用意され、来場者の気持ちを高めてくれる。

会場入り口にある「Jの総て」フォトスポット

高校時代にわら半紙に描いた漫画や、投稿作品、実際に使用しているペンや秘蔵コレクションの「卵」、パリで撮影された資料用の写真がまとめられたアルバムなどのエリアを過ぎると、「鶏肉倶楽部」「コペルニクスの呼吸」「Jの総て」といった、初期の耽美な原画から始まる展示を堪能できる。

愛用の執筆道具
愛読書とともに並ぶ高校生時代に好きな小説を書き写していたノート

鮮やかな黄色い壁のエリアにはアニメ化もされた人気作品「同級生」シリーズの世界が広がり、シリーズ最新作「blanc」(茜新社)の原画と下書き原稿も展示されている。

「同級生」シリーズの原画が壁一面に
最新刊「blanc」の下描き原稿も展示

「漫画を描くのが好き。描ける限り描いていきたい」

「いつも描き始めるとワクワクして楽しい。漫画を描くことが好きなんです」と中村は語る。漫画を描くこと、ストーリーを紡ぐことへの苦心はないと淡々と明かしながらも「でも、描き終わりの頃には体力的に少し辛くなります(笑)」とアシスタントを使わず一人で仕上げまでを行っているからこその苦労を滲ませた。

デビュー当時の耽美的な作品から、BL(ボーイズラブ)、少女漫画、ファンタジー、ガールズラブと、描くジャンルが多岐にわたることについては、「たぶん少女漫画を描いている人でも、たまにはエログロを描いてみたくなることもあるのでは。私の場合、ありがたいことに描きたいものを描かせてもらえる場所があった」と語る。

リラックスタイムはあるのか心配になり尋ねると、「最近は『AXNミステリー』(ミステリー専門チャンネル)でイギリスのミステリー番組を見ることくらい」と振り返りながらも、「映画でも小説でも、何かを見ることと漫画を描くことが切り離せなくて、つい『次はあれを描こう、これを描こう』と考えてしまう。次の作品を描くことが楽しみになる」と尽きない意欲を見せた。

左)「王国物語」の原画、右)20年展のために描き下ろされたメインビジュアル

展示されている原画に修正の跡が見られないことに驚いたと伝えると、「修正は嫌なので、なるべく修正がないようにごまかしています」と答えつつも、「それでも修正が必要な場合は、それが正しいのか分からないけれど、青いキャップの修正液を使っています」と、意外にも普通の文房具を使用していることを明かした。

アナログでの執筆ゆえに、「使用している画材も生産されなくなったり、変わっていったりしていますが、その都度その変化に合わせて、漫画をずっと描ける限り描いていきたい」と漫画への思いを語る姿からは“生粋の漫画家”という言葉が浮かぶ。

中村明日美子20年展オフィシャルブック

本展で展示されている内容、作品がすべて網羅されているオフィシャルブックも見逃がせない。「原画を選ぶのも大変で、紙って重いんですよね(笑)。オフィシャルブックの制作は大変でしたが描き下ろしもあり、見ごたえがあるものになっていると思います」と語るように、描き下ろし漫画やロングインタビューも掲載されており、中村明日美子の世界を満喫できる充実した内容になっている。

グッズには描き下ろしのイラストが多数使用されている

「中村明日美子20年展」の最新情報は公式サイトへ。