松田聖子最初のピークは「風は秋色」サードシングルで初のオリコン1位! 1980年 10月1日 松田聖子のサードシングル「風は秋色 / Eighteen」がリリースされた日

サードシングル「風は秋色」キャリア3位の大ヒット!

断じて「青い珊瑚礁」の二番煎じなどではない。だったらキャリア3位のセールス記録など残せやしないだろう。

It was 40 years ago today.
40年前の今日、1980年10月1日。松田聖子3枚めのシングル「風は秋色 / Eighteen」がリリースされた。

前のシングル「青い珊瑚礁」はオリコンチャートで9月8日付から29日付まで4週連続で2位を記録した。そしてTBSの『ザ・ベストテン』では9月18日から10月2日まで3週連続で1位に輝いていた。

そんな絶好調の中リリースされたこのシングルはオリコンで10月13日付で1位に初登場し、5週連続1位に輝く。松田聖子初のオリコン1位であり、5週は未だキャリア最長。以降9年に渡って24曲連続1位を獲得する第一歩がこの曲だったのだ。

そしてこのシングルは「あなたに逢いたくて~Missing You~」(1996年)、「ガラスの林檎 / SWEET MEMORIES」(1983年)に次いでキャリア3位のセールスを記録している。

しかし何故か話題に上ることは多くなく、リマインダーでも「Eighteen」しか取り上げられたことが無い。そこでリリース満40周年の今日、「風は秋色」を真正面から語ってみたい。

三浦徳子のキラーフレーズ “泣き虫なのはあなたのせいよ”

「風は秋色」は、デビュー曲から3曲連続で作詞は三浦徳子、作曲は小田裕一郎が担当。編曲はデビュー曲の「裸足の季節」以来となる信田かずおが手がけた。小田と信田は、松田聖子のシングルA面はこれが最後となる。

この曲は「裸足の季節」以来の資生堂の化粧品エクボのCMソングとなった。『ミルキィクリーム』という商品名で、サビで「ミルキィ・スマイル」というフレーズが出てくるのはこのためである。「裸足の季節」同様、三浦はキャッチーなサビに商品名を上手くブレンドし、CMソングとしての役割もきちんと果たさせた。

しかし三浦の出色なフレーズはやはりBメロ冒頭の、

 泣き虫なのはあなたのせいよ

だろう。「泣き虫なのは」の部分で目線を自らの肩の方に落とし、「あなたのせいよ」で正面を向くという振り付けは、大げさでも何でもなくアイドル松田聖子のひとつのピークだったのではないか。その後に続く「ふるえる心愛のせいなの」「心のあざは愛のせいなの」という歌詞も含めて胸を焦がした男子中高生はどれくらいいただろう。当時中3の僕も間違い無くその1人だった。

小田裕一郎のマジック!「青い珊瑚礁」には無かったサビの転調

先述のキラーフレーズは「青い珊瑚礁」では「素肌にキラキラ珊瑚礁」にあたるであろう。イントロの後いきなりサビから始まり、抑制の効いたAメロからBメロ、サビへと続き間奏、そしてまたAメロからBメロ、サビと続きアウトロで終わるという曲構成は「風は秋色」と「青い珊瑚礁」で酷似している。

そして最後の「その愛で」のメロディーも、「裸足の季節」の最後の「シルエット」によく似ている。いずれも同じ作曲家だから致し方無いだろう。

しかし「風は秋色」には「青い珊瑚礁」に無い展開があった。それは最後のサビの転調だった。さらにキーが上がる。松田聖子が張り裂けんばかりの高音で歌い切る。少し危なっかしくも感じるのだが、この危うさに僕らはまた胸ときめかせたのだった。これはやはり小田マジックというほかあるまい。

信田かずおの秋の色合い、ピアノとマリンバで繋ぐ珠玉の間奏

「青い珊瑚礁」と言えば、アレンジの面でも「風は秋色」との相似点が指摘される。音が上昇していくイントロ、LRに分けられたエレキとアコギ、厚めなストリングス、ギターソロの無いちょっとドラマティックな間奏。信田が「青い珊瑚礁」の大村雅朗のアレンジに全く影響を受けていないとは言えないだろう。

しかし信田はフルート2本とマリンバも使い、夏の「青い珊瑚礁」とは全く異なる秋の色合いを濃く出すことに成功している。若松宗雄プロデューサーが「青い珊瑚礁」の間奏を激賞していたが、「風は秋色」の、ストリングスとフルートをそれぞれベースにした、ピアノとマリンバでソロを繋ぐ間奏も決して引けを取らないと僕は思う。

信田が弾くピアノが2小節め最後にちょっとミスタッチの様に聞こえるのもご愛敬だが、もしかしたら敢えて生かしたのかもしれない。これに続く、さだまさしとの共演で知られる宅間久善のマリンバソロも秋感を大いにたたえていて胸が温かくなる。というか、アイドルの曲でのマリンバソロというのもなかなか無いのではないだろうか。

「風は秋色」というタイトルは若松プロデューサーが付けたそうだ。名は体を表す。濃密なまでに秋色な名曲が出来上がった。小田も信田もこれがシングルA面最後となるとは思えない程の仕事をしていた。

今回改めて聴き直してあっという間に40年前の秋に引き戻されてしまった。「風は秋色」はエヴァーグリーンならぬ“エヴァーブラウン”の名曲ではないだろうか。

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カタリベ: 宮木宣嗣

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