友達できるかな

 新入生向けのオリエンテーションが始まるのを待っていた教室の隅っこ、最初に掛けられたのは、質問のような念押しのような、不思議なひと言だった。「現役…じゃないよねえ」▲その決めつけは何なのだ、初々しさに欠けているのか、それとも苦労人に見えたのか-といろいろ考えたのは後日の話だ。「あ、いえ、現役ですけど」。へえ、出身どこ? 高校は? 長崎西? あっ、甲子園出たよね…▲そんな風に会話が続いて「和歌山出身のトットリ君」が大学でできた友達第1号になった。話の輪が少しずつ広がって、2号も3号も同じ日にできた。すっかりほこりをかぶった遠い遠い春の記憶、今年は季節外れの回想だ▲大学の後期授業が始まり、新型コロナ対策でお預けになっていた対面授業が増え始めた、と一昨日の紙面に記事がある。県外出身者の切実な声が印象的だ。「友達をつくりたい」▲スマホにネットにツイッター。誰かとつながるツールは多様化しているかもしれない。それでも、会って話せない、会って笑えない寂しさを繰り返しかみ締めた数カ月▲自己紹介から始まって、すぐに「です・ます」が外れ、距離が近づいていく。あのくすぐったい感じが大学のあちこちで増殖しているはずだ。想像すると楽しい。友達100人できるかな。(智)

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