古びた大磯舞台に「ある殺人-」 茅ケ崎で先行上映 三澤監督の長編第2作

大磯町を舞台に映画を撮影し、中﨑久雄町長(左)に完成を報告した三澤拓哉監督=大磯町役場

 神奈川県寒川町出身の映画監督・三澤拓哉さん(32)が大磯町を舞台にメガホンを取った映画「ある殺人、落葉のころに」が10月2日からイオンシネマ茅ケ崎で初上映される。歴史が深くも寂れかけた街並み、良くも悪くも深い人間関係…。長編2作目となる三澤監督は「大磯の撮影地を聖地として足を運ぶ人が増えてくれれば」と期待を寄せる。

 作品は主役の青年4人組をファッションモデルの守屋光治さんのほか、中崎敏さん、森優作さん、永嶋柊吾さんの成長株の若手俳優が演じた。大磯町で生まれ育った幼なじみの4人の友情が、中学校時代の恩師が不審な死を遂げたことをきっかけに嫉妬や恨みをはらんだ関係へと変わっていく姿を描いた。

 茅ケ崎を舞台にした初監督作品「3泊4日、5時の鐘」では男女の恋模様を軽いタッチで描いたが、今回は「人間関係の変化や、1作目にはできなかった人間の負の感情を描きたい」と自ら脚本を執筆。韓国と香港のスタッフと共に4年かけ製作、今年3月の大阪アジアン映画祭ではインディーズ映画の部門でグランプリを獲得した。

 「3泊4日─」のロケ地となった縁から老舗旅館「茅ケ崎館」(茅ケ崎市中海岸)の森浩章社長が共同プロデューサーとして後押し。森社長が「湘南地域の潜在能力を映画のロケ地として示したい。大磯には古い邸園文化もあるし、海も山もある」と大磯での撮影を提案した。

 森社長に誘われてロケ地の下見をした三澤監督。潮風を浴びてさびた店のシャッターや、車では上がれないほど細長く延びた住宅街の坂道が「この場所で若くてくたびれた男たちを歩かせたい」と新作の着想とぴったり合致したという。

 2016年夏に町内で撮影し、地元店舗も協力。観光地だけではなく、どこか哀愁の漂う片田舎の風景を通して経済的格差やしがらみの多い地域社会も描き、「社会問題も扱い、力のある映像が撮れた」と三澤監督は胸を張る。

 来年からの本格的な全国上映に向けクラウドファンディングも展開。茅ケ崎での先行上映が国内初公開となる。上映時間は79分で、上映期間は未定。三澤監督は「ミステリー映画ではないが、いろいろな謎を疑って見てほしい。感想を多くの人と語り合えば映画の印象もさまざま変わるはず」と呼び掛けている。

© 株式会社神奈川新聞社