コロナ禍でも止まらぬ巨額投資~ニセコの光と影~

けいナビ

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今週のテーマは「ニセコ」。日本有数の国際リゾートとなったが、まるでコロナ禍がなかったかのように開発・投資が進んでいる。一方で、そのスピードについていけない地域の現実もある。その光と影を紹介する。

投資止まらぬニセコ

今年、倶知安町花園エリアで開業したパークハイアットニセコ。巨大な建物にはホテル以外に投資家向けに分譲する住居棟がある。価格は1部屋2億円ほど。新型コロナの感染が拡大した3月以降も売れているという。

ニセコエリアの不動産大手「ニセコリアルエステート」の森広浩二郎さんに投資の現状を聞いた。

ニセコリアルエステート 森広浩二郎さん
「今年8月は会社が担当しているコンドミニアムで5件ほど成約まで至った。開発案件、いわゆる大きな土地を探している投資家の客はたくさんいて、問い合わせは非常に多い。渡航制限で現地に見に来れないので、オンラインで物件を見せるなどの営業方法で、購入してもらえるよう努力している」

札幌の円山にある不動産会社「レック」。大友社長は現在、倶知安町の中心部にアパートを建設中だ。そんな大友社長に5月、驚きのオファーが。建設中のアパートは全部で4棟あるが、「4棟すべてを15億円で」また「1棟のみというオファーも寄せられた。その数合わせて5件。相手はすべて外国人投資家だ。

レック 大友淳社長
「海外のリゾート地に比べると高い利回りを得られるのでその金額を付けた、という説明は受けたが、本人と会っているわけではない。今はまだ売る気はない」

北海道銀行のNISEKO出張所。投資家と直に接している葛西所長に話を聞いた。

北海道銀行NISEKO出張所 葛西英剛所長

北海道銀行NISEKO出張所 葛西英剛所長
「アジアの投資家は、渡航制限がある中で金の行き場を探している。競合先がコロナ禍の後だとどんどん増えてくるので、今がチャンスだという投資家もいる」

ニセコへの投資はコロナ禍でも盛んだ

コロナ禍で生まれた「ニセコ難民」

動き続ける投資家の一方で、施設を運営する側は新型コロナウイルスの深刻な影響を受けている。海外の富裕層をターゲットにしたビジネスモデルを前提にした施設は、日本人向けに単価を下げることに抵抗を感じるところも多く、営業停止で耐える選択をするところも多い。問題になっているのが、「ニセコ難民」。

ニセコ町で訪問型の治療院を営むブレント・ヴァーコさん。ヴァーコさんは新型コロナ拡大後、ニセコエリアに留まる外国人の生活実態をSNSで調査した。今年4月の段階でニセコエリアに滞在する外国籍の人は約1,500人、前年に比べ3割ほど多い。ヴァーコさんの調査に回答があった約300人のうち100人以上が職を失ったという。

ニセコ町で治療院を経営するブレント・ヴァーコさん
「20人が経済的苦痛を抱えていて、他の人たちも滞在を続けると数週間から数カ月以内に経済的に苦しくなる。ここに住むすべての人々にとって十分な仕事の機会がない。もし行政のために働いたり、ニセコエリアで忙しい場所で働いたりできれば、この地域にとって良いことだと思う」

ニセコ難民の実態を伝え、支援を求める鈴木直道知事への手紙

言葉の壁などで新しい職を探すのが困難な外国人たち。外出自粛が続いていた5月、ニセコ難民を少しでも救おうと動いている会社があった。ラフティングなどのアウトドア体験を提供する「ニセコアドベンチャーセンター」。今年職を失った外国人18人を雇い入れた。営業を自粛した5月は入社まもない社員たちの研修期間にあてた。6月に営業を再開し、8月は前年比52%まで客足が戻ってきたという。

営業を自粛した5月は入社まもない社員たちの研修期間に。

ニセコアドベンチャーセンター ロス・フィンドレー社長
「ニセコ難民は、だいたいみんなスキーのインストラクター。ここでラフティングの資格を与えれば、資格はずっともつもの。そこで少し仕事をあげて、この数カ月だけでも生活できるようになればいい」

国際リゾート支える自治体の“懐事情”

倶知安町ヒラフ地区にあるホテル「ニセコアルペン」。このホテルが建っている 約8,800平方メートルの土地は、倶知安町の町有地。ホテルを運営しているのは東急不動産のグループ会社で、町有地への賃貸料を払い続けていたが、去年、土地を買い取る方針を決め倶知安町に打診していた。

しかし、新型コロナの拡大が目立ち始めた4月、東急から「現状では新規投資は難しい」と告げられた。鑑定額については現時点で27億~28億円。町の財政を潤すはずだった町有地の売却は先が見通せなくなった。倶知安町の地価の上昇率は全国トップ。地価が上昇すれば固定資産税が増え財政は潤うように思えるが、町の税収が増えれば国から支払われる交付金は減少する。倶知安町への交付金は、10年前より5億円近く減少している。

倶知安町への国からの交付金は10年前から5億円減っている

急激なホテル開発に伴う上水道の整備や、新幹線の延伸に伴う駅周辺の再開発など、倶知安町は今後10年間で200億円を超える支出が控えている。苦しい財政を潤そうと、去年11月宿泊税を北海道で初めて導入した。しかし、新型コロナウイルスの影響で、リゾートのインフラなどを支える町の財政は“金欠”寸前状態だ。

新たな問題 開発への規制は…

ニセコエリアでは、国際リゾートならではの問題も浮上していた。
倶知安町のヒラフ地区から少し離れたところにある「ペンションアリス」。夏場の宿泊料金は、1泊2食付きで7,500円。良心的な価格設定で常連客も多い。オーナー代理の早川貴士さんは、27年前、父親が始めたペンションをスタイルを変えずに守り続けている。

宿の魅力の1つが羊蹄山が見える景観。しかし、まもなく宿の目の前に外資系の大型コンドミニアムが建設され、景観はピンチに。早川さんの願いはさまざまなスタイルの宿が共存できるリゾートの実現だ。

ペンションアリス 早川貴士オーナー代理
「一時期にどっと土地の値段が上がって、売却してさよならではなく、ずっと世界のさまざまな客層から愛されるリゾートとして、今後も発展していってほしい」

ニセコエリアの不動産大手、北海道トラックス。14年前に会社を立ち上げたサイモン・ロビンソン社長は、今の開発の状況に警鐘を鳴らす。

北海道トラックス サイモン・ロビンソン社長
「開発はすべきだと思う。ただその開発にはコントロールが必要。これまでに倶知安町と地元の民間企業が共同で開発に関する一定のルールを作ったが、私から見るとそのルールは“ゆるい”と思う」

倶知安町は今、建物の高さ規制など一定のルールを設けてはいるが、「外資系を中心とした乱開発」に歯止めはかかっていない。去年就任した倶知安町の文字町長は、景観や自然保護にも配慮した新しい開発ルールを2年後に作るための調査を始めた。

去年就任した倶知安町の文字一志町長

倶知安町 文字一志町長
「100人いれば100人みんな違うイメージを持っていると思うが、一番大事なのは価値観の共有をどれだけ住民と共に作っていけるかに尽きる」

北海道が世界に誇る国際リゾート「ニセコ」。持続可能で、真の意味で魅力的なリゾートとなるよう期待したい。
(2020年10月3日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)
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