国にとって「最も基本で重要な統計」 国勢調査、回答しない人には罰則も

国勢調査の調査票のサンプル。左は調査票表面、右は裏面

 5年に一度行われる国勢調査の調査票(紙)による回答が10月1日に始まった。今年で100年目という節目を迎えたこの調査は具体的にどのようなことをどうやって調査するのだろう。Q&Aでまとめた。(47NEWS編集部)

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 Q 「国勢調査」って何?

 A 日本の人口や世帯構成を調べるため国が5年ごとに実施する調査。日本に住む全ての人および世帯が対象となる。国籍に関係なく調査の対象となるので、外国人も含まれる。

 調査を担当する総務省のホームページは、国勢調査を「国の最も基本的で重要な統計調査」と位置づけている。

 ちなみに「国勢」とは「国の勢い」ではなく、「国の情勢」の意味。重要な調査なので、政府の機関が統計を作成・提供するときの基本的なルールを定めた「統計法」では総務大臣に国勢調査を行うことを義務づけている。

 Q いつ始まったの?

 A 1920年(大正9年)。今回の調査で21回目となる。国勢調査の重要性を最初に訴えたのは、早稲田大の創設者で政治家としても活躍した大隈重信だったとされる。1902年(明治35年)に「国勢調査ニ関スル法律」が制定。05年に第1回の国勢調査を行う予定だったが、04年に起きた日露戦争の影響で断念された。

 その後の1915年(大正4年)に実施されることになった。しかし、第1次世界大戦によって、またもや見送られてしまった。

 Q 困難を経て、始まったんだね。具体的にどんなことを調査するの?

 A 大きく分けて二つの事項がある。10月1日時点での(1)世帯員に関する事項と(2)世帯に関する事項だ。

 (1)は次の15項目について聞く。

 ①氏名 ②男女の別 ③出生の年月 ④世帯主との続柄 ⑤配偶の関係 ⑥国籍 ⑦現在の住居における居住期間 ⑧5年前の住居の所在地 ⑨在学、卒業等教育の状況 ⑩就業状態 ⑪所属の事業所の名称及び事業の種類 ⑫仕事の種類 ⑬従業上の地位 ⑭従業地又は通学地 ⑮従業地又は通学地までの利用交通手段

 (2)は「世帯の種類」「世帯員の数」「住居の種類」「住宅の建て方」の4項目に関する質問に答える。

国勢調査のインターネットでの回答画面

 Q 調査に答えないことはできるの?

 A 統計法によると、調査票を提出することの義務(報告義務)が課せられている。報告の拒否や虚偽の報告をした場合の罰則(50万円以下の罰金)も定められている。

 Q 回答はどうやってするの?

 A 調査員によって配布された調査表への記入のほか、スマートフォンやパソコンを使ったインターネット回答も可能だ。

  現在の課題は、対象者から調査票への回答が得られない「未回収率」が上昇していることだ。国勢調査は全員から回答を得る「全数調査」が原則だが、不在などのため本人から回答が得られないケースがある。この割合が未回収率となる。

 2000年調査の未回収率は1・7%だったが、05年は4・4%、10年は8・8%、15年には13・1%と回を追うごとに悪化している。 要因としては、単身や共働きで不在がちな世帯の増加やプライバシー意識の高まりが挙げられている。

 インターネット回答は2010年の調査で試験的に導入された後、15年調査から全国で実施された。その時の回答率は36・9%だった。

 今回は新型コロナウイルスの感染拡大防止策としてインターネット回答を推奨している。だが、9月14日から受け付けが始まったインターネット回答へは同24日時点で約1003万世帯が回答した。前回2015年調査の世帯数を基に集計した回答率は18・8%で、前回の同期間の35・9%に対し伸び悩んでいる。総務省は今回の調査でインターネット回答率50%を目指している。

 Q 調査の結果はどのように利用されるの?

 A 各市区町村の人口移動や高齢化率を把握できるので、国や自治体が少子高齢化対策や産業振興に取り組む際の基礎資料となる。また、衆院小選挙区の区割りや地方交付税の算定にも用いられる。このほか、学術研究や企業で利用されている。

国勢調査の未回収率の推移

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