2020年の半導体企業買収額は、2件の大型案件で史上2番目の高値となる可能性

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2020年の半導体企業に対するM&A案件は新型コロナウイルス感染症の問題もあり、スロースタートとなったが、7月のAnalog Devices(ADI)によるMaxim Integratedの買収、そして9月のNVIDIAによるArmの買収という2つの大型案件により、半導体のM&Aの歴史の中で2番目に高い買収契約合計額の年となる可能性が高いと、半導体市場調査会社であるIC Insightsが発表した。

2020年下期に一気に動いた半導体M&A市場

2020年上半期の半導体企業に対するM&Aの動きは新型コロナの影響もあり、ほぼ停滞状態となり、約20億ドル程度に収まっていた。しかし、7月に入りADIが210億ドルでMaximを、9月にはNVIDIAが400億ドルでArmをそれぞれ買収すると発表。中でもNVIDIAの400億ドルという買収額は、半導体関連の買収額としては史上最高値となる。ただし、この取引に関しては、関係各国の独占禁止法規制当局の審査と承認を必要とするため、実現されるかどうかは不透明となっている。

半導体M&A額の史上最高値を達成したのは2015年。30件以上の買収が行われ、その取引額は1077億ドルとされている。また、2016年もIC Insightsでは当初1007億ドルの見通しを示していた。しかし、QualcommによるNXP Semiconductorsの買収が、中国当局からの承認を得られずにキャンセルとなった結果、598億ドルへとその額を減らしていた。2020年、NVIDIAとADIが各国当局の承認を得られれば、この2016年を超え、2番目に買収総額が高い年となる可能性が高まることとなる。

NVIDIAのArm買収に反対するArmの顧客たち

NVIDIAのArm買収については、多くのArmの顧客が反対の意を示しており、このまま買収作業が進めば、その一部は、RISC-V陣営に移る見込みである。また、Armの中立性・独立性が継続することを切望している世界中のArm顧客も、各国の規制当局に上申書やパブリックコメントを出すことで、NVIDIAの今回の買収劇は当局が承認しない、もしくは承認しても条件付きとなる可能性が高いとも見られる。

過去にも、中国が認めなかったQualcommのNXP買収だけではなく、米国が承認しなかったBroadcomによるQualcomm買収などの前例もあり、半導体企業同士の巨額買収はすんなりと承認されそうにはない。その上、今回は米中貿易戦争がらみのややこしい問題が加わり、Armの力も借りて「中国製造2020」の目標(半導体自給自足)に一歩でも近づきたい中国政府にとってArmが米国の対中規制当局支配下の米国企業(の子会社)になることを阻止しなければならない事情があるとみるべきだろう。

海外は勝者連合、日本は弱者連合や撤退のM&A

海外勢が行うM&A;は、勝者同士のM&Aであり、ビジネスの拡大を図ることを意図したものがほとんどだが、日本勢のM&Aには悲壮感が漂ったものが多い。例えばパナソニックは、すべての半導体関連事業を、Winbond Electronicsの子会社Nuvoton Technologyへの売却した。旧三洋電機グループの半導体主力工場だったON Semiconductorの新潟工場も売りに出されたが、9月末時点で買い手は見つかってはいないようだ。東芝は、ロジックLSIに次いでシステムLSI事業からの撤退を表明、770名のリストラ計画を行う予定としている。

こうした現状を踏まえれば、もはや弱体化しきった日本のロジック・システムLSI事業を買おうという企業を見つけるのは困難、あるいは不可能な状況にあるといえるだろう。こうした日本の国内事情だけを見ていると、半導体産業そのものが衰退産業に見えてしまうが、日本以外の国では、投資家も注目する新型コロナにも負けない数少ない成長産業という認識である。

半導体は5G、AI、IoT、EV、自動運転、ビデオゲームなど成長産業の中核エンジンとして関連する装置産業ともども大きな成長が続いていくことが期待されている産業であり、このメガウェーブに乗るために(自社開発していては遅れを取ってしまうので)、手っ取り早く他社の技術を入手し、スピード感をもって短期にビジネスを急拡大させる手段が欧米流M&Aであるといえる。