第39回 ディスプレイ産業フォーラム 第4回 大型テレビ市場は欧米が巣ごもり需要で伸びるも都市封鎖で鈍化する新興国

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新興国と先進国で需要動向が異なるテレビ市場

市場動向調査会社Informa/Omdia主催の「第39回 ディスプレイ産業フォーラム」において、Omdiaのテレビ市場調査担当チーフアナリストの鳥居寿一氏は、大型テレビ市場の動向について、新型コロナの問題発生直後は、需要が大幅に落ち込むと予測していたが、新興国はロックダウンで過去最悪の落ち込みを記録したものの、欧米では巣ごもりにより逆に需要が伸びており、市場動向が目まぐるしく変動しているとし、以下のような状況になっているとする。

  • コロナ・ショック直後はロックダウンによるマクロ経済悪化、失業率上昇で全世界的なテレビ需要が大幅に減少すると予測。その後、7月ころには欧米での巣ごもり特需からテレビの出荷が2020年第2四半期以降に急回復、8月時点では米国の実売が“Back-to-School”の特需で好調が継続
  • 一方の新興国のテレビ需要は、アジア(特にインド)、中南米(特にブラジル)ではロックダウンの長期化、新型コロナの感染状況の悪化により、2020年第2四半期の出荷が大幅に悪化、過去最大の落ち込みとなった
  • 2020年の米国の年末商戦の見通しについては、正反対の見方(現行の延長線上の楽観論と、厳しい見方の悲観論)があり、容易に見通せない
  • 2020年は有機EL(OLED)のコストダウンが進まず有機ELテレビに対する需要も停滞。8Kテレビもなかなか立ち上がらないが、2021年に入ると韓国ならびに中国のテレビブランドが代替として低価格対応のミニLEDバックライト搭載テレビの導入を計画しており、すでにTCLなどは低価格ミニLEDバックライト搭載テレビを発売するに至っている。マーケティング(ネーミング)先行で“Fake”ミニLEDバックライトテレビも含み、中国ブランドのものが市場で増加する見込み。Samsungなど大手ブランドも導入を計画しており、高価格帯テレビ、特に有機ELテレビに対し、どのような影響を与えるか含め、仕様・画質など注視する必要がある

コロナ特需に沸くモバイルPC市場

OmdiaのSenior Principal Analyst(モバイルPC担当)のJeff Lin氏は、モバイルPC(ノートPC/タブレット)市場動向についての見方を示した。

  • ノートPCの需要は2020年第2四半期に新型コロナウイルスによる悪影響をうけなかったどころか特に欧米でコンシューマおよび教育用ノートPCのアップグレード需要が継続した。在宅勤務とオンライン学習の普及で、第2四半期にはタブレット需要が高まり、消費者は、小型サイズではなく10型より大きなサイズのタブレットを好んで購入している
  • ノートPCの需要が米国と欧州で2020年下半期に増加傾向にある。日本でも教育用パソコンの需要が増している。このため、2020年のPC需要は1億9670億台に達する見込みである
  • ゲーム用ノートPCに関しては、HPがシェアを上げている。中国ブランド(Xiaomi/Hasee)は、スクリーンサイズを16.1型に広げている。
  • 今後の動向としては、(1)ノートPC用ドライバICの供給不足が続く、(2)ノートPC用ディスプレイは高解像度に向かう、(3)ノートPCの新製品開発はカスタマイズしたパネルデザインを採用する方向にある

再び注目を集めるようになったデスクトップモニター市場

Omdiaシニアプリンシパルアナリスト(大型業務用ディスプレイ・デスクトップモニター市場担当)の氷室英利氏はデスクトップモニター市場についての見方を示した。

  • 新型コロナの感染拡大は3月以降、先進諸国のB2Cチャネルにおけるテレワーク・オンライン学習・巣ごもり需要の盛り上がりとなり、PC+周辺機器市場にとっては結果的にプラスに作用した。コロナ前に戻ることはなく、2021年に向けてこのトレンドが続くと予測するが、一方で新興国およびB2Bチャネルの需要は低迷、ロックダウンなどで経済活動の制限を受け、また企業業績が悪化が予想される中、需要減となると予測されるが、コロナの影響は時間差、地域差があり、世界的に見て大きく落ち込まない可能性もある。新しい買い替えサイクルが2020年から始まり、次の需要期は2025年ごろと予測する
  • モニターが接続されるホストデバイスはノートPCが中心となりつつあり、モニターの「大画面、高解像度、高画質」の需要が加速する。また、ゲーミングモニターやウルトラワイド・カーブドモニターに代表される付加価値モデルの出荷増が続き、モニター需要の下支えとなっていく。今後単価上昇に伴い、金額ベース市場規模の緩やかな上昇につながる可能性もある
  • 「ウイズ・コロナ」の環境下で、「ノートPCに接続する付加価値の高い表示装置」となるモニターの位置付け・再定義が今年一気に加速した。中国ITメーカー勢の参入も垣間見えて来ており、モニター市場は再び注目すべき市場となった。

複数の技術が入り乱れるパブリックディスプレイ・デジタルサイネージ市場

大型業務用ディスプレイ担当も担当する氷室英利氏はパブリックディスプレイ・デジタルサイネージ市場動向についての見方も示した。

  • 新型コロナの感染拡大に伴う経済活動の自粛や人の移動の制限で、足元のパブリックディスプレイセットの出荷は大きく減らすこととなった。ただしプロジェクト対応のほとんどが「延期」であり、2020年下半期以降徐々に再開する可能性が高い
  • 「ウィズコロナ」で人の流れが変化しても、サイネージの意義は変化しない。ただ環境に合わせてコンテンツや見せ方が常に変わっていく。例えばセンサやカメラと組み合わせて「密」を避ける、サーモグラフィと組み合わせて体温が高い場合にアラームを出すなど、新しいサイネージの使い方が模索されている。新しい需要、新しい価値は常に生まれているので、「ピンチはチャンス」ととらえるべきである

複数の表示デバイス技術が入り乱れ、大競争時代に入ったパブリックディスプレイ市場。中長期的に見ても、大画面のによるサイネージソリューションの需要は堅調に推移すると見るが、コロナ禍により事業環境が劇的に変化する中、各ブランドの総合力が試されることとなってくる。企画~開発から納入まで、および包括的かつ柔軟な保守サービス体制など、メーカーごとの付加価値、差別化をいかに推進していくかが生き残りのカギとなるだろうとしていた。