シリコンバレーの人々を虜にするテスラ(TESLA)の魅力とは?

 IT業界の世界的な聖地とも言えるカリフォルニア州のシリコンバレー。この地に在住して10年、元NFLチアリーダーの齋藤佳子がシリコンバレーの見逃せない情報や、地元に飛び交う噂話などをお届けする。今回はシリコンバレーに限らず、世界中から注目されているテスラ(TESLA)が、これほど羨望される理由を紹介しよう。

ブランドに流されないエンジニアたちも、テスラは好き

 我が家のご近所は、「テスラ(TESLA)本社のお膝元」ということもあるが、とにかくテスラを所有している家が多い。1ブロックに1台は駐車されており、道行く車も10台に1台はテスラという印象だ。 近所にあるテスラのチャージング・ステーションは、週末になるとごった返し、列を作ってチャージをしている。

 実は私の夫もテスラの魅力に惹かれて、昨年1台購入した。シンプルな生活を好む「ザ・シリコンバレー・エンジニア」の夫は、ポルシェやフェラーリなどの高級ブランド車には「ブランド名にお金を払うだけだ」と見向きもしないが、それらのブランド車と同じような価格のテスラの性能・機能には、「それなりの料金を払う価値がある」と納得したようである。購入して一年半以上経った今もルンルン気分で運転しているようで、大変満足していると言っている。テスラは購入後の顧客満足度が非常に高く、2017年12月のコンシューマー・レポートでは、数あるブランドを押しのけてナンバー1となった。

 今月は、質実剛健のシリコンバレーの人たちを虜にしているテスラの魅力をご紹介しよう。

テスラの何が支持されるのか?

充電の早さ

 一般に電気自動車の充電は短くて3時間、長くて8時間かかるが、TESLAのスーパー・チャージング・ステーションを利用すると、充電0%を100%に充電させるのに、たった45分しか掛からない。スーパー・チャージング・ステーションはショッピングセンターなど商業施設に隣接しているため、食事やお茶をしている間に充電ができる。ただし、家などで充電をする場合の充電時間は、他の電気自動車と変わらない。

走行距離が長い

 バッテリーを満タンにしても、日産リーフは107マイル(約172キロ)、BMW i3は150マイル(約241キロ) しか走らないところ、一番大きなバッテリーを持つテスラだと、フル充電で335マイル(約539キロ)も走行できる。また、スーパー・チャージング・ステーションはアメリカ全土に設置されているため長距離のロードトリップも可能になった。これによりテスラは、「電気自動車は短い距離しか走行できない」という常識を覆した。

「バイオ・ウェポン・ディフェンス・モード(対生物兵器モード)」搭載

 空気中の微粒子をHEPAフィルター(空気清浄の際に使用されるエアフィルターのひとつ)を使って濾過することで、外の粒子を車内に入れず、車内の空気をきれいに保つ機能。同社CEOイーロン・マスク氏いわく、通常の車の800倍の性能があるそうだ。うっかり車内で異臭を放っても、これなら安心だ。この「バイオ・ウェポン・ディフェンス・モード」、実験ではたった2~3分で車内の粒子をほぼゼロにするだけではなく、車外の空気までキレイにする、という結果が出たという。テスラ車を走らせることで、町の空気をクリーンにすることができるのだ。

アフターサービスがよい

 アメリカで車の修理やメンテナンスをするために専門店に行くと、いろいろと問題があるようなことを言って客から少しでも高い金額をもぎ取ろうとする店が少なくないが、「メンテナンスでは、ビジネスをしない」という同社CEOの方針により、テスラでは不具合があっても厳しい質問もなく、快く修理やメンテナンスをしてくれる。また、修理中には代替車として、テスラを無料で貸し出ししてくれる。

頻繁なソフトウェアの更新

 ソフトウェア・アップデートは数カ月に1度ほどされる。PCやスマートフォンのソフトウェアがアップデートされるような感覚なので、新機能がアップデートの度に追加されると、フレッシュな車になった気分を味わえる。

とにかく加速が速い

 ガソリンで走る車と異なり、ギアがない(ギアチェンジがない)ため、加速がものすごく速い。通常仕様のテスラが時速60キロに達するのは4.2秒。それでもかなりの加速だが、オプションの「ルディクラス・モード」搭載車となると、なんと、たった2.5秒で時速60キロに到達する。我が家のテスラは通常仕様だが、それでも一気に加速をするとつい声をあげてしまうくらいのGがかかる。まだ私は「ルディクラス・モード」を経験したことはないが、想像をするだけで鳥肌が立つ。こちらの動画で「ルディクラス・モード」のスリルを見ることができる。

車体が安定している

 ものすごい速さで加速できる一方、バッテリーが車の下に搭載され重心が下にあるため、横転などの心配がなく、安定した運転ができる。

フロント部分のトランク「Frunk」

 バッテリーは車の下、エンジンはないため、テスラの車体フロント部分は、トランクとして使用でき、「Front」と「Trunk」を合わせて「Frunk」と呼ばれている。このフロント部分は鍵を持っていないと開けられないため、万が一、車上荒らしに遭っても盗まれにくい。

便利な「サモン(招集)」機能

 車に乗っていなくても、鍵もしくはアプリで、車を自分の元に呼び寄せることができる。現在、最大で40フィート(約12メートル)の距離をこのサモン機能を使って動かすことができる。同社CEOはなんと、「将来的には、アメリカを横断できるようなサモン機能にしていく」と言っている。例えば、ニューヨークに車があり、自分がロサンゼルスにいるとして、車が自分の元へニューヨークからロサンゼルスまでやって来るのだ。「まさか、それはないだろう」と思う人も多いかもしれないが、今まで常識を覆し続けてきたテスラなので、実現の可能性はあるかもしれない。

オートパーキング(自動駐車)機能

 後ろから駐車する場合と、縦列駐車をする場合は、「オートパーキング機能」を使える。駐車スペースを見つけて、センサーに感知させてから「オートパーキング」のボタンを押すと、アクセルとハンドルが勝手に動き、自動で駐車をしてくれる。

アプリと連動

 テスラはアプリと連動できる。アプリでは前述のサモン機能、GPS(車がどこにあるか)、車の状況(駐車中か運転中か)、充電状態、ロックの開閉、車内気温の設定などがスマートフォンで設定や確認することができる。私のお気に入りは、車内温度の設定だ。真夏日に外出している際は、車に戻る数分前にテスラのエアコンをオンにしておくと、涼しい車内に戻ることができる。しかし、アプリ機能はワイファイのある場所でしか機能をしないことを忘れてはいけない。あるドライバーが、テスラで人里離れたネバダの州立公園へ鍵を持たず、スマートフォンひとつで行き、車外に出て写真を撮って戻ったところ、Wi-Fiが通じずに鍵が開けられなかった話が有名だ(テスラは車外に出ると数分で自動的にロックされてしまう)。この人は仕方なく、電波の届く場所を探して2マイルも歩き、鍵を家に取りに行くために友人に電話をしたそうだ。

オートパイロット(自動操縦)

 テスラの真骨頂と言えば「オートパイロット」だろう。運転中に「オートパイロット」を設定すると、その速度で、前後左右にあるセンサーを使い、適度な車間距離を保ちつつ、車線に沿って運転をしてくれる。高速道路で「オートパイロット」を何度か試したことがあるが、自分で運転することに慣れていると、車にハンドルを預けるのはなかなか怖い。夫が「オートパイロット」をよく使うのは渋滞のときで、アクセルとブレーキを何度も踏まなくて済むので便利だそうだ。なかには「オートパイロット」を使い、自分はぐっすり……という人もいるらしいが、「オートパイロット」中でもハンドルは必ず握ることが、法律で決まっているのでご注意を。また、「オートパイロット」の使用はフリーウェイ(高速道路)のみということも法律で決まっている。

クールなデザイン

 これまでの電気自動車は性能重視で、お世辞にもカッコイイといえるデザインではなかった。しかし、テスラは見た目にもこだわり、電気自動車をバカにしていた車好きたちをも唸らせるクールなデザインを目指した。テスラが最初に発売したのは、スポーツカー「Roadster(ロードスター)」。2016年にポルシェのデザイナーだったフェリックス・ゴダールを引き抜いたため、テスラファンの期待はより高まっている。

 今まで、人々を「あっ!」と言わせるような機能を発表し、高級車としてのイメージの強かったテスラだが、Model 3は他のモデルと比べてぐっと安価となり、販売価格は35.000ドル(約400万円)からである。Model 3の発売により、テスラがぐっと身近になった。同社が長期的に目指しているのは、「限りあるガソリン資源ではなく、無限の太陽光発電を利用していく」ことだ。そのような「地球に優しい」考えが根底にあるからこそ、テスラは「本質重視」で「環境に配慮」するシリコンバレーの人々の心を虜にしているのだろう。

© 株式会社メディアシーク