コロナ禍で在宅ワークも増え、夫婦で一緒にいる時間が増えた人も多いことでしょう。そうなるとお互いの不満も増えて、喧嘩も増えるのが常。でもそれ、雑談で解決できるかも?!“兼業主夫”である筆者が、仕事のノウハウを夫婦間でも活用する方法をお教えします。
夫婦で雑談してますか?
突然ですが、イズミダ家では毎朝、夫婦で雑談する時間を設けています。私が娘を保育園に送り終える時間と、妻が会社に出勤する時間がちょうど同じくらいなので、夫婦で朝マックしながら朝食兼雑談する時間にしています。
話す内容はそれこそ雑談なのでいろいろですが、その週の予定や娘の様子、お互いに気になっているトピックについてざっくばらんに話しています。
もともと、私が基本在宅勤務でちょこちょこ現場仕事などで外出するスタイルで、妻はオフィス勤務でコロナの関係で在宅勤務が混ざる、という複雑な生活スタイルだったため、お互いの予定を共有するためにはじめた雑談タイムでした。
ところがこれが意外とよいガス抜きとして機能しているというか、夫婦間の空気感のようなものを整えるのに一役買っているなと感じはじめ、夫婦の日課として取り入れています。
夫婦、お互いの不満をもちがち問題
よくSNSで夫や妻への不満を書いた投稿を見ることがあります。世の中の夫婦はこういう不満を抱えているのかー、あーこの不満、わかるわかる。でも相手の立場もわかるなー。といろいろ思いを巡らせながら拝見しています。
いくつも読んでいると、わりとみなさん書いていることに共通点があって、
妻「夫が家事や育児をやってくれない。言ったことだけやるけど自発的に動いてくれない」
夫「仕事だけでも大変なのに家事もしろと言われる。体や心が休まる時間がない」
というような、「相手が察してくれない、理解してくれない」ことを発端としている内容が多いように感じます。
この気持ち、すごくわかります。夫婦といえども、お互い置かれている状況や見えているものが違う。そしてそこに齟齬が生じて、「もしかして自分ばかり苦労しているのでは?」と疑心暗鬼になってしまう。
また、それを指摘してもスルーされたり嫌がられたり、いつまでたっても改善が見られなかったり。
最終的には指摘するのも嫌になって「言っても無駄」と自分の心の中にしまい込んでしまう…。
そして一度「言っても無駄」状態になってしまうと、不満を口にしないがために相手に伝わらず、結果的にさらにしんどい状況になってしまう。そんなネガティブなスパイラルに陥ってしまっているのだと思います。
でも、なんでこんなにも世の夫婦はお互いに不満をもってしまうのでしょう。その一端として「相互理解の欠如」があるんじゃないかな、と思っています。
チームになろうよ
私は家庭人として家事育児もしますし、仕事人としてガツガツ仕事もしています。両方の経験があるため、どちらの大変さも、そしてどちらの尊さも理解しているつもりです。どちらが優れていてどちらが劣っている、というように優劣があるようには感じていません。
育児の「人ひとりの命を預かっている」という緊張感も、仕事の「家族を路頭に迷わせるわけにはいかない」という使命感も、どちらも家庭というチームを支える大事な思いのひとつでしょう。
それなのに、個人プレーのように「私のほうが大変だ」「いや俺のほうが大変だ」とやっているのはもったいないなと感じます。チームとしてうまく機能するには、お互いを理解してそれぞれ信頼しあうことが必要不可欠なはずです。
とはいえ、そんな理想論が簡単に実現できるのであれば、どのご家庭もこんなに苦労はしていないはず。言うは易く行うは難し、やはりそういう関係をつくるのは一筋縄ではいかないんですよね。
でももし、夫婦がチームとしてよい関係を構築できる方法があるとしたらどうでしょう?しかもそれを示しているのが、あの「Google」だったとしたら…?
その答え、Googleが知っている、かも
チームとしてよい関係性を構築するにはどうしたらよいか。これ、会社組織でもよく議論になる題材ですよね。
いわゆるチーム論や組織論と言われる類のお話で、どういったチームを組んだらよいか、どういう方法論で組織運営をしていけばいいのか、など古今東西さまざまな学者さんがそれぞれの方法論を世に示してきた一大ジャンルです。
そして、あの「Google」が興味をもって積極的に研究してきた分野でもあります。Googleは2012年に、「Project Aristotle」というリサーチプロジェクトを開始し、「効果的なチームを可能とする条件は何か」という問いに答えを出しました。
しかもGoogleは、その成果を広く一般に公開し、誰でも閲覧できるようにしています。太っ腹。
__LB_BL__ Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る __LB_BL__
詳細を知りたい方は上記のサイトから成果の全体をご見てもらえればと思いますが、ここではその中から、とくに大事な部分だけをかいつまんで説明します。
Googleは研究の結果、「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」のほうが重要であるとしました。つまり優秀なメンバーをそろえることよりも、メンバーがお互いに協力している状態のほうがチームとして成果を出せる、ということを示しました。
そして、そのようなよいチームになるために不可欠な5つの要素を割り出し、その中でも圧倒的に重要な要素が「心理的安全性」であると結論づけました。
なるほど、心理的安全性とな……。それっていったい何?
夫婦に必要なのは「心理的安全性」
上記サイトによると、「心理的安全性」とは、
「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうか
としています。ちょっとわかりづらい表現なので端的に言うと、
ミスしたりネガティブなことを言ったり、逆に相手に厳しい指摘をしたりしても、そのせいで馬鹿にされたり怒られたりしないと信じれる状態
のことを「心理的安全性」と呼んでいます。
想像してみてください。
- バタバタしていて夕飯を作るのが遅くなってしまった
- 仕事が忙しくつい愚痴を言ってしまった
- お互いに仕事しているのに、あなたは家事をやってくれないと指摘した
こんなときに相手が逆ギレしたり、無視したりしてきたら悲しい気持ちになりますよね。萎縮してしまって、次回から何かを話したり共有したりするのをためらってしまいますよね。
そしてそんな状態が続くと、夫婦間で情報の共有がなされなくなって、お互いの距離が遠くなり、それにより問題が増え、その結果さらに萎縮していく、というネガティブなスパイラルに陥ってしまいます。
これ、先ほど書いた「言っても無駄」からはじまるネガティブなスパイラルと完全に一緒です。こういう状態に陥ってしまうと、チームとしての生産性が非常に落ちてしまうんです。
なので、夫婦間でもこの心理的安全性を高めることが重要で、「何を言ってもOK!」な健全な関係性を確立することで、お互いに信頼し合い、チームとして生産的に家庭の問題に取り組めるようになるわけです。
そして、そういった状態をつくるために、実は冒頭に紹介した夫婦の「雑談の時間」が一役買うのではないかと思っているんです。
心理的安全性を高める“雑談”
心理的安全性を高めるには、自己開示と相互理解が不可欠です。つまり、自分が今どんなことを考えていて、相手はどんな状態にあるのか、をお互いにゆるく知っておくことが、円満な関係性につながるわけです。
そういった、ゆるい情報共有には雑談が最適です。軽食やドリンクなどを口にしながら、他愛もない話をする。そんな時間がお互いを知り安心感を得るために一役買うのです。
話は少し飛びますが、北欧の国スウェーデンには「フィーカ」と呼ばれる生活習慣があります。仕事の合間などにコーヒーブレイクしながら雑談を楽しむ風習で、リラックスしてお互いの関係を深めることができます。
バレッドプレスでも、水田千恵さんが北欧のライフスタイルを紹介するコラムでフィーカのことを紹介していました。
こんなときだからこそ“気軽さ”も大切 スウェーデンから子育てや仕事の「ラーゴム」なバランスを学ぶ - バレッドプレス(VALED PRESS)
また、私がフリーランスの傍らで所属しているBASSDRUMという組織でも、この「フィーカ」の時間を設けていて、コロナ禍においてなかなか会えないメンバー同士が、連帯感を維持するために一役買っています。
この6ヶ月、BASSDRUMが試してきたリモートコミュニケーション|qanta
こういった他愛もない雑談の時間を夫婦でもつと、お互いの近況や思っていることなどを知っておくことができるので、
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あ、彼は今仕事が忙しいって言っていたな。じゃあしばらくは家事を肩代わりしよう
とか、
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彼女、最近は体調がすぐれなさそうだな。子どもの面倒は、自分が中心になってみよう
なんて、相手を自然に思いやれるいいチームに成長していけるのではと感じています。
【コラム】よい雑談と“HRT”
じゃあさっそく夫婦で雑談の時間を設けてみよう、と思われた方に向けてもう1つだけ。雑談の時間を設けたとしても、その中で話される内容がお互いに対する嫌味や愚痴では心理的安全性を育めませんよね。
そこで“HRT”を意識して雑談をしてみるのはどうでしょう、という提案です。HRTとはTeam Geekという書籍で紹介された、チーム内で健全なコミュニケーションをとるために必要なソーシャルスキルの3本柱と呼ばれるもので、以下の3つの頭文字をとったものです。
- 謙虚(Humility)
- 尊敬(Respect)
- 信頼(Trust)
謙虚な姿勢で、相手のことを尊敬し、信頼をもって話せば、おのずと心理的安全性を育む雑談ができるはずです。ぜひ夫婦でよい雑談ライフを送ってみてください。
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