勝負の分かれ目は“内角攻め” 分析のプロが解説する巨人痛恨の阪神糸井への配球

巨人・今村信貴【写真:荒川祐史】

前の打席で3球連続内角攻めの伏線も…

■阪神 4-1 巨人(2日・甲子園)

阪神は2日、本拠地・甲子園球場で巨人を4-1で破り、首位を独走する相手に一矢報いた。勝敗を分けたのは、近本光司外野手の機転と、糸井嘉男外野手に対する巨人バッテリーの配球だった。元巨人チーフスコアラーで、データの収集・分析を任されていた三井康浩氏が解説する。

阪神は1-0の最少得点差で迎えた5回、巨人の先発・今村を攻め1死二塁とすると、近本が初球を三塁方向へセーフティーバント。三塁手・岡本があわてて前進したが、送球がやや右へそれ、近本はしてやったりの表情で一塁を駆け抜けた。これで1死一、三塁とチャンスが広がった。三井氏は「巨人サイドはノーマークで、完全に意表を突かれた。岡本の守備位置が後ろへ下がっているのを見て機転を利かせ、初球を1発で決めた近本が素晴らしかった。これで一気に、試合の流れが阪神へ傾いた」と感嘆した。

さらに近本は二盗に成功、北條は四球とたたみかけ、1死満塁。糸井がこの日の第3打席を迎えた。巨人にとっては、ここでの配球が悔やまれる。今村の初球のシュートは真ん中高め、やや内角寄りに浮き、糸井は見事に中前へ打ち返して、走者2人を迎え入れたのだった。

「巨人バッテリーは3回の糸井の第2打席では、初球から3球続けて内角を攻め、左飛に仕留めていた。当然、この打席で糸井はインコースを意識していた。その状況で、内角の甘い所へ投げてしまったのだから、“雑”だったと言われてもしかたがない」と三井氏は分析。「確かに糸井はインハイに弱点がある打者だが、この大事な場面では、初球の入り方には細心の注意を払わなければならない。やはり最初は体から遠い外角、それも低めを見せておく必要があったと思う」と指摘した。

結局、今村は5回途中に降板し、6安打3四死球3失点で今季2敗目(3勝)を喫した。「1回に大山に先制ソロを食らったフォークの失投と、5回の糸井への初球以外は、あらゆる球種がよく制球されていた。それだけに、もったいなかった」と三井氏。近本の咄嗟のバントが均衡を破り、勝利をぐっと引き寄せたといえるだろう(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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