【MLB WCシリーズ】ダルビッシュ、飛躍の2020年一問一答「感謝しかない」「トップとの差はまだ遠い」

本拠地でのワイルドカードシリーズ第2戦マーリンズ戦に先発登板したカブス・ダルビッシュ有【写真:AP】

メジャー9年目は最多勝獲得、サイ・ヤング賞有力候補に挙がる活躍ぶり

■マーリンズ 2-0 カブス(WCシリーズ・日本時間3日・シカゴ)

カブスのダルビッシュ有投手は2日(日本時間3日)、本拠地で行われたマーリンズとのワイルドカードシリーズ第2戦に先発。6回2/3を5安打6奪三振2四球2失点(自責2)と好投したが、打線の援護に恵まれず、0-2で敗れた。これでチームはシリーズ敗退が決まり、ダルビッシュのメジャー9年目は終戦した。

34歳右腕は今季、8勝を挙げて日本人投手初の最多勝を獲得。ナ・リーグ2位の防御率2.01、同5位の93奪三振を記録するなど、サイ・ヤング賞有力候補とされるパフォーマンスで沸かせた。この日、試合終了後の会見では、飽くなき向上心を見せつけた。

――今日の投球について。
「今日はそんなに力強かったわけではなかったので、すごく慎重に投げました」

――今季を振り返って。
「僕が投げた試合でチームが多く勝てたのが良かったです」

――プレーオフでは打線が復活して援護してくれると考えていたか。
「最後のホワイトソックスの時も良かったですし、点は普通に取れると思っていましたけど、向こう(サンチェス)がいいピッチングだった」

――待望のプレーオフだったが敗退。今の気持ちは。
「今日は僕としては、レスターにもう1試合、最低でもリグリー(フィールド)で投げてもらいたいっていうのが、僕の今日の一番で唯一のモチベーションだった。それが達成できなかったのが僕の中ではすごい悔しいです」

――昨季後半からここまで、キャリアの中で最高の状態にあるか。
「今までの中でもちろん、人生の中で段違いでいいと思いますけど、もっと良くなると思っています、今は」

――レスターがシカゴで残した功績について。
「やっぱり僕ら投手陣にとっては本当に大きな存在なので、来年ももちろん残ってくれることをみんなで願っています」

1被弾を含む2失点「自分のやることはやった」「仕方ないです」

――前日が悪天候順延。試合開始時間も夜まで分からない状態だったが、今日の試合の入りと感触は。
「全体的にはそこまでは良くなく、球もそこまで力があったわけではなかったけど、その分、ちゃんとミスをしないようにっていうのはずっと考えていました」

――あらゆる球種で各打者に対して内外角投げ分けていた。
「コントロールに関してはそんなに悪くなかったので。何か特別1つ悪い球があるわけではなかったし、全体的に平均レベルというか、そういう日でしたけど、コントロールがまあまあよかったので、何とか試合は作れた感じになりました」

――7回途中まで好投。2失点した場面について。
「うーん、その後(ホームランの後)も僕は自分のやることはやったし、ゴロは打たせたし、別に特別悪いことがそこで起きていたわけではなく、何かミスがあったかっていうと何もなかったし、仕方ないです」

――これで終戦。コロナ禍でのシーズンを振り返って。
「やる前は厳しいだろうと思っていたし、想像ができなかったけど、でもシーズンが始まってみると、このカブスっていう球団がいろいろなことをしっかりケアして、みんなが健康でいられるようにベストを尽くしてくれたので。だから、みんなでこのNLセントラルのチャンピオンになれたと思うし。そういう意味ではよかった部分もいっぱいあったと思います」

――自身にとって収穫の多いシーズンになった。
「数字を見れば、どの投手ともある程度張り合えるくらいの数字はあったと思う。だから、そこのレベルにいけてるっていう、去年の後半くらいから『そこが見えている』って周りには言っていた。『トップレベルが見えている』って言っていて、そこの位置に自分が来れたに近いとは思っているけど、同時に、例えばデグロムであったりとか、カーショーであったりとか、バーランダーであったりとか、あの辺との差が自分の中ではまだ遠いかなとすごく思いますね」

――昨季後半から今季はいい状態。また来年もいい状態を続ける確信はある?
「いや、この状態では張り合えないので、もっと自分がよくなるために何が自分に必要なのか。ま、必要なものは見えているんですけど、それを達成するために、モノにするためにはどうしたらいいか、まだ答えが出ていない。それをすると、もちろん崩れるかもしれないし、分からないですけど、もうちょっとレベルを上げられるかなと思っています」

深夜に応援する日本のファンにも感謝するも…「僕だったら絶対に見ないですけど(笑)」

――今年は無観客試合。シカゴ、日本のファンへメッセージを。
「地元のカブスファンっていうのはすごく、僕もここ(シカゴ)へ来た時にすごくビックリしましたけど、すごく熱烈ですごいたくさんのファンがいつも来てくれていて、(球場で試合を)すごい見たい人もたくさんいたと思うんですけど、それをテレビであったりラジオであったりでしか、応援する術がなかった。でも、球場に入る時とか『頑張れ』って言ってくれたり、ツイッターとかでもそうですし、いろんなサポートっていうのは直には感じられなかったですけど、しっかりそれは僕は感じていたので、まずカブスのファンの人たちには感謝したいと思います。

日本からでも、こうやって今日みたいに夜中3時に起きて見ましたとか(声が届いた)。逆だったら、僕だったら絶対に見ないですけど(笑)。そんな時間に起きたくないから。でも、そうやって自分の睡眠時間を削ってくれたり、楽しみにしてくれたり、僕のピッチングを見て『今日もまた頑張れる』っていう声とか(届いた)。今年はすごく僕がよかったっていうのもあるけど、そういうのは僕の力にもなったので、本当にいろんな人に感謝しかないです」

――球団のサポートがあって2か月やり遂げた。野球以外の部分でのやり遂げた感はあったか。
「自分はもう、いつも皆さん分かっているように、妻に自由にやらせてもらっているので、僕は好きに生きているだけなんですけど、妻や子どもたちはすごくタフな年で、なかなか遊びに行きたくてもいけなかった。そういう中でダルビッシュ家としても、この難しいシーズンを乗り越えたっていうのは、うれしいですけど、僕は感謝しかないです」

――コロナ禍のネガティブな世の中に、SNSを通じていろいろ発信した背景は。
「いつ開幕が始まるか分からない中で、日本の野球も開幕が延期になって、野球ファンがなかなか選手の動向を見る機会がなかった。そういう中でYouTubeのゲームのやつを一生懸命やろうかなって思いだして、あれでもいろんな野球ファンの方に喜んでもらえたし、そこでコミュニケーションもたくさん取れた。ちょっとでも本当に見てもらっていたので、いろんな人の暇つぶしになれたのかなっていう意味ではすごくよかったですね」

大一番での先発も「どうにか目の前のバッターからアウトを取っていこうと冷静になれた」

――実際に今日のマウンドに上がるまで、上がってからの気持ちは。
「シーズンとそこは全く変わらなかったです。ただ、いつもより勝たないといけない……いつも勝たないといけないんだけど、負けたら後がないっていうことで。レスターにももう1試合、どうにか投げてほしいっていうのはあったし。でも、自分はすごく冷静ではあったし、今日は球がそんなに力強くないって中でもパニックにならず、今日自分があるもので、どうにか目の前のバッターからアウトを取っていこうと冷静になれた。そういうメンタル的な部分では今年はさらに今までと違うレベルにいけたので、それが試合の中での自分の感情というのはすごくよかったと思います」

――今季投げた13試合で掴んだものは?
「掴んだものは足りなかったものですね。足りなかったものがすごく見えたので、自分のどうしても足りない部分っていうのが見えたっていうことが、自分の中で掴んだことっていうか、得たものだったかなと思います」

――トップレベルまで足りないものは何?
「フィジカルと技術ですね。フィジカルな部分っていうのは天性のものがあるから、そこを僕が同じように何もせずに、いじらずに勝負してても一生相手にならないので、いかにその天賦の才に対して、頭でどうやって勝つか。頭でどうやって天賦の才に近付けるか。努力的な部分で」

――変化球の技術に関しては第一人者。
「やりたいことが何でもできるっていうことは自分のアレですけど、真っ直ぐ系ですね。真っ直ぐ系がまだ改善の余地がいっぱいあると分かっているので、そこですね」(Full-Count編集部)

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