台風被害 生活への支障続く 佐世保・高島 フェリー運航中断1カ月 通勤・通学 家庭ごみ処理 物資搬入

清掃業者と協力して船にごみを積み込む住民=佐世保市高島町

 県内各地に被害を及ぼした台風9号の長崎県接近から1カ月。佐世保市の離島、高島町では港の浮桟橋が破損し、今も本土と島を結ぶフェリーの運航は中断したまま。人の往来やごみの収集、物資の搬入など島民生活への影響が続いている。現状を取材した。
 9月末の朝。高島漁港西地区に臨時に設けられた収集場。住民たちがリヤカーなどで次々と家庭ごみを持ち込む光景があった。本来島内には収集場が複数あり業者が回収してフェリーで本土に運搬。しかし、9月2~3日の台風9号で港の浮桟橋が損壊しフェリーの発着ができなくなった。
 このため、家庭ごみを港の収集場に集め、週2回、遊漁船で相浦港へ運んでいる。市の委託を受けて船を出している漁師の男性はこの日、明け方に漁から戻ったばかり。仮眠を済ませ慌ただしく業者と一緒にごみを船に積み込んだ。「島のためだから頑張らんばね」と男性。
 163人が暮らす高島。船で本土へ通勤・通学する人も少なくない。台風後、海上タクシーは島内の別の港に着岸するようにし、島民の「足」は辛うじて確保できているが、物資の搬入には支障が出ている。島外業者がフェリーで搬入した商品を島で販売する「移動販売」は当面休止。活用していた高齢者にとって負担は軽くない。
 家族5人で暮らす漁師の長尾秀之さん(81)によると、島で入手できないのは「魚と一部の野菜以外のほぼ全て」。市内に通勤する息子の妻に買い物を頼んでいるが「数人分の物資を一人で買ってくるのは大変やけんね」と話す。
 フェリーで運んでいたプロパンガスなどを海上タクシーで搬入するのも困難。町内会の木村栄会長は「本土に例えるなら、外へつながる唯一の道路が遮断されたのと同じ状態」と危機感を募らせる。
 市は国に対し、浮桟橋の早期復旧への支援を要請。ただ、復旧工事は潮の流れや天候に左右されやすく、復旧は2022年2月ごろになるとみられる。フェリーの早期運航再開に向け、市は運航会社と協議し、以前使用していた岸壁を仮発着場にすることを計画。ただ、フェリーが接岸するには水深が足りず、海底掘削工事が必要となるため、運用開始は3~4カ月後になる見込みだ。
 市は1日から、海上タクシーの利用料金の一部補助を開始。台船でし尿収集車を運ぶことを決め、プロパンガスの搬入も調整中。ただ車や家、電気設備の修理、海上タクシーが欠航した際の通勤・通学手段の確保など課題は他にもある。「とにかく1日でも早くフェリーの再開を」。木村会長は、島民たちの切実な思いを代弁するように語った。

© 株式会社長崎新聞社