阪神・西勇が巨人戦3連勝 元Gの分析家も脱帽「同じコースの出し入れが完璧」

阪神・西勇輝【写真:荒川祐史】

西勇輝は巨人戦負けなし3勝、防御率1.47、圧巻は3種類の変化球駆使した外角低め4連投

■阪神 4-1 巨人(2日・甲子園)

阪神の西勇輝投手は2日、本拠地・甲子園球場での巨人戦に先発して8回5安打、8奪三振無四死球で1失点の快投を演じ、8勝目(4敗)を挙げた。今季巨人に対しては、前回対戦の9月17日に4安打完封するなど、3勝0敗、対戦防御率1.47と滅法強い。1987年から22年間にわたって巨人のスコアラーを務め、特に2002年以降はチーフスコアラーとしてデータ収集・分析を任された三井康浩氏も「同じコースの出し入れが完璧だった」と“脱帽”した。

この日、三井氏がとりわけ「圧巻だった」と舌を巻いたのが、8回1死走者なしで左の代打・田中俊を迎えた場面だった。1球目は外角低めいっぱいにチェンジアップを配し、ストライク。2球目は外角低めのスライダーがわずかに外れ、ボール。3球目にシュートでファウルを打たせた後、4球目にボールゾーンから外角低めいっぱいへ切れ込むスライダーで、見逃し三振に仕留めた。

わずか4球の間に、同じ外角低めに3種類の変化球を投じ、しかも微妙にストライクゾーンへ出し入れして、田中俊を翻弄した。この日の西勇を象徴する配球だった。

数少ないピンチだった4回2死一、二塁でも、大城を内角のスライダーで詰まらせ、遊飛に打ち取った。三井氏は「西勇の強みは、鋭いスライダーとシュートがあること。打者から見ると、途中まで同じ軌道で来て、逆方向へ曲がるので、なかなかとらえられない」と説明。「この日くらい調子がいいと、どのチームでも打つのは難しかったでしょう」と結論付けた。

西勇はウィーラーが苦手? 「手元を狂わせるのか、抜けた球が行っていた」

その西勇も“相性”は覆せなかった。唯一の失点は、8回先頭のウィーラーに浴びた左越え9号ソロ。西勇はオリックス時代、楽天に在籍していたウィーラーと対戦し、4年間で通算38打数13安打、対戦打率.342と打ち込まれていた。三井氏は「本塁打は、ど真ん中に抜けたスライダーを打たれた。ウィーラーには5回の打席でも、抜けたスライダーを打たれ、結果的には中飛だったが、非常に危なかった。苦手意識が手元を狂わせるのか、ウィーラーにだけは抜けた球が行っていた」と首をかしげた。

三井氏は長年にわたる巨人スコアラー在任中、味方投手から何度も「なぜか、アイツには甘いボールが行ってしまう」と嘆く声を聞かされたという。一方で「松井(秀喜氏)は、プロ初本塁打を放った相手である高津(臣吾氏、現ヤクルト監督)を得意としていて、自分には必ず甘い球が来ると確信しているようだった」とも証言。データを分析し、苦手を克服しようとチームぐるみで対策を練っても、時には相性がそれを超越することがあった。

巨人が難敵・西勇を攻略するには、ウィーラーを前面に押し出すことが近道ということだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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