ふるさと納税 大幅増に貢献 波佐見の「スチームシップ」 業務受託 地域のブランド化を重視

自治体のふるさと納税事業を受託し、実績を上げているスチームシップのオフィス=波佐見町折敷瀬郷

 東彼波佐見町で従業員30人のベンチャー企業が躍進している。自治体のふるさと納税に関わる業務を専門に請け負う「スチームシップ」。2017年に創業し、これまでに担当した市町で軒並み、寄付金額を大幅に増やした。好調の背景には、地域のブランド化を重視した返礼品開発やプロモーション戦略がある。
 自治体の委託を受け、返礼品の企画・開発や事業者とのやりとり、ウェブページ運営、納税者窓口などふるさと納税に関わる業務を一括して請け負う。17年度に初めて受託した波佐見町は、前年度約4500万円だった寄付額が約5億円に急増。その後も伸び続け、昨年度実績は県内2位の14億円に上った。
 同社の藤山雷太社長(37)は、東京のIT大手での勤務をへて、11年に地元の佐賀県にUターン。有田町のまちづくり公社創設メンバーとして、ふるさと納税事業に携わり、年間約300万円の寄付額を3億円にまで押し上げた。ノウハウを生かそうと独立した時、波佐見町の担当者の目に留まった。
 波佐見焼を中心に返礼品を充実させ、統一感がなかったインターネットサイトを改善。デザイン性を高め、掲載するポータルサイトも増やした。納税者には、商品情報だけでなく、波佐見の地域情報や観光マップを掲載したカタログを送り、満足度向上やリピーター獲得につなげた。

スチームシップが納税者に送付しているカタログ(同社提供)

 現在までに受け持つ7市町(うち県内5市町)のいずれも寄付額が増加。各自治体の担当者は「地域の事業者を細かく回り、返礼品が充実した」と口をそろえる。東彼東彼杵町では茶農家からの出品が増え、北松小値賀町は宿泊や体験型観光チケットが加わった。
 重視するのは地域のブランド価値。平均年齢30歳、女性が過半数を占める社員が地域を地道に回り、特性を生かした返礼品を提案することで、自治体のブランドイメージを高めている。
 藤山社長は「結果としてふるさと納税の仕事をしているが、やりたいことの本質は、地域に若者が帰ってくる環境づくりと都会ではできない仕事」と語る。創業時3人だった同社には現在、年間100人近くの入社希望者がある。「目指すのは、地域でも、ではなく地域だからかっこいいと思われる会社。この会社が地域の価値を高める希望となれば」

 


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