ジュリーが演じた光源氏!「源氏物語」と「あさきゆめみし」に捧げる沢田研二の曲は? 1980年 1月3日 沢田研二が主演したTBS系ドラマ「源氏物語」が放送された日

きゃー! ジュリー!! 1980年のお正月ドラマ「源氏物語」

光源氏を演じた俳優といえば、古くは長谷川一夫に片岡孝夫(現・十五代目片岡仁左衛門)、東山紀之、天海祐希、生田斗真など、錚々たる “二枚目” が顔を揃えているが、ここで紹介したい、いや、せざるを得ない(なぜだ)のは、沢田研二である。それほど、この豪華絢爛平安絵巻『源氏物語』でのジュリーは蠱惑的で魅力的でセクシーだ。

きゃー! ジュリー!!

『源氏物語』は1980年のお正月ドラマとして放映された。時はシングル「TOKIO」の発表直後。俳優としては映画『太陽を盗んだ男』(1979年)、『魔界転生』(1981年)で妖艶さに脂が乗っていた期間と重なっている。まさにジュリーが一番美しい時を切り取ったような作品だ。

残念ながら当時テレビは一家に一台の時代。小学生だった私は冒頭のジュリーの流し目にイケナイものを観るような気持ちで画面に食いついていたのだが、即座に父にチャンネルを変えられてしまった。

確かに『源氏物語』がどんな内容か知らなくても、“これはエロなんだ” というのはわかったし、ジュリーの豊潤な色気に当てられて罪悪感で少しドキドキした。

主演:沢田研二、脚本:向田邦子、演出:久世光彦、共演女優も美女揃い!

主演・沢田研二、脚本・向田邦子、演出・久世光彦。久世は「エマニュエル夫人のように撮りたい」と意気込み、ジュリーに8人の女たちと恋物語を繰り広げさせたという。ジュリーはそれまでの光源氏のイメージを払拭したいと、眉毛を剃らずに演じたそうだ。

また、古の風流な言葉使いで男女を呼応させる台詞回しは、さすが向田邦子。光の君を含む男同士で「雨の夜に女の品定めも雅なもの」とのたまう女談義もユーモラスで面白かった。

何より、ジュリーの美しさを堪能し、妖しさを愛で、画面の前で目をハートにして悶絶するためのドラマと言っても過言ではない。共演女優も美女揃いのキャスティングなのに、ジュリーの前では霞んでしまいそう! その光源氏のお相手はこちら!

■ 藤壺(桐壺):八千草薫
■ 六条御息所:渡辺美佐子
■ 葵上:十朱幸代
■ 朧月夜:倍賞美津子
■ 夕顔:いしだあゆみ
■ 末摘花:風吹ジュン
■ 女三宮:藤真利子
■ 紫上:叶和貴子

とにかくどの姫もラブシーンが濃密すぎて、まさにエマニュエル夫人状態である。「いけませんいけません!」と吐息まじりにあえいでジュリーに押し倒されていく大女優。その大女優が惜しげもなく柔肌を晒す晒す! ジュリーも負けずに晒す晒す! その肌をジュリーの手が悩ましげになぶるなぶる! ぼかしがかかるかかる! 照明のライトはテカるテカる!

束帯や狩衣、十二単など衣装もゴージャスで美しかった。

昭和40年代女子にとっての古典、大和和紀の名作漫画「あさきゆめみし」

ちなみに、『源氏物語』を題材にした大和和紀の名作漫画「あさきゆめみし」は、1979年12月号から月刊『mimi』(講談社)で連載を開始している。まるでこのドラマとリンクしたかのように。

「あさきゆめみし」は昭和40年代女子にとっての古典の教科書と言っていいだろうか。私も「源氏物語」の授業のサブテキストにしたし、平安時代の恋愛はなんて男本位で自由で不自由なんだろうと色々考えさせられた。

光に押し切られ彼の子を懐妊する天皇の妃たる藤壺、光を恋するあまり生霊にまでなる年上の六条御息所、その六条の生霊に嫉妬で取り殺される夕顔、光を愛しているのに素直になれない正妻の葵上、光源氏に10才で見初められる紫上、不器量だけれどチャーミングで一途な末摘花などなど、光源氏の恋愛はまこと多様性に満ちている。

ああ、そして「あさきゆめみし」の主人公、光源氏の実写化イメージも、やっぱり私にとってはジュリーなんである。

光源氏に捧げる曲を、アルバム「思いきり気障な人生」で解説してみる

なんだか久々に本ドラマを見て、ジュリー演じる光源氏のプレイボーイっぷりに往年のジュリーの名曲の数々を思い出した。考えてみたら光源氏って、恋愛に関しては阿久悠作詞で歌われていたダメ男そのものじゃないの?(笑) … ということで、「光源氏に捧げるジュリーの曲」を考えてみたんだけど、どうしても1977年、ジュリー29歳の時のアルバム『思いきり気障な人生』しか思いつかなかった。そこで『思いきり気障な人生』を全曲光源氏解説してみたい。

1. 思いきり気障な人生「あなたも僕を縛りたいのか」と苦しげに歌うドラマチックチューン。嫉妬深い六条御息所に捧げたい。

2. あなたに今夜はワインをふりかけまさに恋の絶頂期! 平安時代だと日本酒をかけるんだろうか。お祓いか。

3. 再会「あなたは心を開いてくれない」ときたら気位の高い正妻、葵上に捧げようかな。寂しげなバラード

4. さよならをいう気もない男女の微妙な関係、でも別れられない。当世風の朧月夜を思い出す。

5. ラム酒色のオレンジ「あどけない顔は誘い水。中身は大人」ってそれはやはり、源氏が大人にした(!)紫上の歌か!?

6. 勝手にしやがれ逆に不倫をされてしまった妻、女三宮への源氏の思いの吐露に聴こえたり聴こえなかったり。

7. サムライ平安貴族にサムライはないけれど、一夜限りの逢瀬となった空蝉に捧げよう。

8. ナイフをとれよ失恋した友を慰めるような自分を慰めるような男っぽさに泣ける。

9. 憎みきれないろくでなしこれほど的確に光源氏を表したタイトルもない。

10. ママ…光源氏が亡き母にそっくりと慕う藤壺に捧げる。若干「ボヘミアン・ラプソディ」っぽくもある。

源氏物語を題材にしたコンセプトアルバム「女たちよ」

最後にもう一つ。なんとジュリーは1983年に『源氏物語』を題材にしたコンセプトアルバム『女たちよ』をリリースしている。曲タイトルは「夕顔 はかないひと」や「おぼろ月夜だった」など割と古風で直球なのに比べ、サウンドは80年代ニューウェーブ調なのがアンバランスで興味深い。全曲作詞は詩人の高橋睦郎、作曲は筒美京平、編曲は大村雅朗。

ジュリー、光源氏との縁(えにし)深すぎ!

結局、私にとって光源氏のイメージは永遠に “あの” ジュリーなのだ。これまでも。これからも。

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