空き家物件での不動産投資は稼げる?契約の流れやメリットデメリットを解説

転勤で家が空いてしまう人や、別荘を持っている人、親族から不動産を譲り受けた人のなかには、「空き家物件を有効活用したい」と考える人も多いと思います。そんな人には不動産投資がおすすめです。不動産投資とひと口に言っても、さまざまな形態があるので、用途や予算に合った投資方法を選ぶことが大切です。今回の記事では、不動産投資の種類やメリット・デメリット、契約の流れについて解説します。

空き家物件を活用した不動産投資は3パターンある

空き家物件を活用した不動産投資は、三つのパターンに分けられます。
・空き家をリフォームして賃貸経営
・空き家をリフォームして再販する
・空き家を活用して事業を展開する
空き家をそのまま放置すると、築年数の経過にしたがって建物の価値が下がったり、崩壊や害虫・害獣の侵入によって、近隣の住民から苦情が来たりするケースもあります。ただ、家を取り壊すとなると100万~300万円ほどかかってしまうことを考えると、賃貸や売却、事業展開として活用するのがおすすめです。

空き家をリフォームして賃貸経営

「賃貸経営」は、空き家の不動産投資において人気の投資方法です。ある程度の築年数が経過している空き家を貸し出す場合、リフォームしてきれいな状態に整えることで、より人が集まりやすくなります。リフォーム費用はかかりますが、家賃収入が得られるのは大きなメリットです。

駅の近くや、人気のエリアであれば、借り手が見つかりやすく、長期的な収入につながります。築年数が古い、もしくは駅から離れている不動産であれば、家賃を低めに設定することで空き室のリスクを抑えられます。また、空き家が古民家のようにレトロなデザインであれば、大幅なリフォームはせずに建物本来の「味」を残すのもありです。

レトロな物件は一定の需要があるので、耐震・断熱工事をし、トイレや浴室、キッチンを新調して、残すべき部分はそのまま生かしましょう。リフォームの際も、レトロモダンスタイルやカフェ風のデザインにすると、より人が集まりやすくなります。

空き家をリフォームして再販する

空き家をリフォームして再販するのも不動産投資方法のひとつです。空き家の築年数が20年以上である場合、リフォームをしなくても中古住宅として販売できます。築年数が浅くきれいな状態なら、高値で売却できる可能性もあります。不動産の価値は、築年数によって大きく差が出るものです。築年数が20年以内(マンションの場合は25年以内)であれば、基本的に「住宅借入金等特別控除(住宅ローン減税)」の対象となるので、買い手が見つかりやすくなります。

ただ、空き家の築年数が20年以上の場合でも、リフォームすれば中古物件として販売できます。通常なら、築年数が20年を超える不動産は「古家付き土地」として売却するのが一般的です。古家付き土地とは、価値が低くなった住宅が建っている土地を指します。基本的に、築年数が20年以上の空き家は建物の価値がほとんどなくなってしまうので、「土地」をメインに売るケースが多いものです。

ただ、古家付き土地は、解体費用がかかることや、新築物件を立てるまで時間がかかることから買い手がつかないリスクもあります。そんなリスクを回避するためにも、古い空き家にはリフォームが必要です。ただ、フルリフォームしてもリフォーム費用を上回る金額で売却するのは難しいので、大がかりなリフォームは控えましょう。

空き家を活用して事業を展開する

近年は空き家を活用した事業も注目されています。増加する空き家問題の対策として、現在はさまざまな企業や個人、自治体が空き家の魅力を生かしたサービスを次々と展開しています。

【空き家を活用した事業例】
・古民家カフェ
・泊まれるカフェ
・民宿
・シェアハウス
・DIY可能物件として借主を募集するサブリース

レトロな古民家カフェは、アットホームな雰囲気で人気を集めています。そのほか、空き家を民宿として経営したり、シェアハウスとして貸し出したりする事例も少なくありません。近年は観光旅客の宿泊ニーズが増えていることもあり、2018年には「住宅宿泊事業法」が施行され、以下の条件をクリアすれば民宿事業が可能になりました。

【住宅宿泊事業法の条件】
・事前に都道府県知事へ届け出ること
・年間180日を越えない範囲であれば、住宅に人を宿泊させる事業(住宅宿泊事業)ができる
・衛生への配慮、騒音防止のための説明、苦情対応、宿泊者の名簿作成、標識の表示などの義務
・家主不在の場合は管理業者へ委託すること

最大稼働日数が年間180日と規定されているものの、副業や片手間として活用するにはぴったりのサービスです。

参考:「住宅宿泊事業者編│民泊制度ポータルサイト」

空き家を使った不動産投資のメリット

空き家を利用した投資には、新築の不動産とは違った魅力があります。「初期費用を抑えられる」「利回りがいい」「リフォーム費用を経費計上できる」という点で有利なのです。それぞれのメリットを解説します。

他の不動産投資と比べて初期費用が少ない

空き家を購入する場合は、新築物件よりも安く購入できるというメリットがあります。新築の注文住宅の相場は2000万~4000万円程度と高く、初期費用がかさみがちです。しかし、空き家なら相場が数百万円程度なので、大幅にコストを圧縮できます。損傷が少なければ、リフォーム費用をはじめとする初期費用も抑えられ、不動産投資の初心者でも手軽に始められます。基本的には現金でのやり取りになることから、ローン利用によるリスクの心配もありません。

表面利回りが高い

表面利回りが高いのも空き家の不動産投資の大きなメリットです。利回りとは、投資金額に対する年単位の収益の割合を指します。利回りは「表面利回り」と「実質利回り」の2種類に分けられます。表面利回りは「物件の購入価格に対しての家賃収入」を単純計算した数値です。

空き家をすでに持っている、もしくは購入した場合、初期費用が安いことから家賃を平均的な金額に設定しても利回りが高くなります。都内の平均的な不動産投資の利回りは3〜3.5%ですが、空き家のなかには10%を超える高利回りの物件もあります。

空き家のリフォーム費用が減価償却できる

空き家の大がかりなリフォームは、減価償却の対象です。減価償却とは、築年数の経過によって価値が下がる分を、耐用年数に応じて「必要経費」として計上する会計処理のことです。確定申告が必要ですが、購入費用を経費として計算できるので、節税効果が期待できます。リフォームのうち、耐震性の確保や、資産価値を上げるための大がかりで金額の高い工事は「資本的支出」ですので、減価償却の対象です。

【資本的支出の該当例】

減価償却費は、物件の取得価格と、耐用年数に応じた償却率をもとに「定額法」で計算します。定額法の計算方法は「1年間の減価償却費=取得価格(購入価格)×定額法の償却率」です。資本的支出については国税庁のホームページにて掲載されているので、計算する際はチェックしてみてください。

参考:「資本的支出と修繕費│国税庁」

空き家を使った不動産投資のデメリット

リフォームが前提なので運用までに時間がかかる

初期費用が抑えられて高利回りというメリットがある空き家ですが、弱点もあります。
・リフォームや修繕費用がかかる
・流動性が低く空室リスクが高い
・土地の担保価値、評価が低い
・ローンの融資を受けづらい
それぞれのデメリットをみていきましょう。

リフォームや修繕費用がかかる

空き家を投資物件にするには、リフォームや修繕費用がかかります。築年数が浅かったとしても、ハウスクリーニング代や部品の交換などの費用が必要です。古家の場合は、湿気や熱による傷みや雨漏り、さびやカビが発生するリスクが多いので、リフォームが必須です。

1981年以前に建てられた住宅の場合、「旧耐震基準」をもとに設計されているので、「新耐震基準」に見合う耐震補強が必要になるケースもあります。旧耐震基準は「震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しない構造」が基準です。一方新耐震基準は「震度6強~7程度の揺れでも倒壊しない構造」が基準です。一般的に、空き家のリフォーム代の相場は150万円~500万円程度とされています。部分ごとに必要な費用は次のとおりです。

【空き家のリフォーム代の目安】
・雨漏りの修繕費用:5万~30万円程度
・屋根の葺き替え:100万~200万円程度
・外壁を全面塗装する際の費用:100万円程度
・キッチンのリフォーム費用:100万~150万円程度
・トイレのリフォーム費用:100万~200万円程度
・畳や壁紙の張替え費用:10万~15万円(6畳)

上記を目安にした場合、全面的にリフォームするとおおよそ400万円以上かかってしまいます。空き家をリノベーションして賃貸経営を始めても、定期的なメンテナンスが必要なので、出費が長期にわたることも少なくありません。

流動性が低く空室リスクが高い

空き家の不動産投資は、「流動性が低く空室リスクが高い」というデメリットがあります。ここで言う流動性とは「売りやすいこと」「お金に替えられること」です。残念ながら、空き家は流動性が低い資産として知られています。その理由は、ほかの投資と比べて一回の出費が多いからです。

株やFXなどの投資は、1000円単位の少額取引ができます。しかし、空き家の購入には数百万円かかってしまうので、買い手側からすると「気軽に購入できない/手が出しづらい」ものです。また、立地の悪さも流動性が低い要因として挙げられます。駅やバス停から遠い場所の場合、なかなか買い手が見つからないケースが多いのです。リフォームして賃貸に出しても入居者が集まりづらく、長期間空室が続いてしまう可能性もあります。

土地の担保価値、評価が低い

担保価値とは、担保(金融機関の貸し付けを債権者が返済できなくなった場合の損害に備えて債務者が金融機関に渡す土地や家)の財産価値を指します。つまり、担保の評価が低ければ不動産が安く売られ、評価が高ければ高く売れるというわけです。よって、空き家を購入して後日売ろうとしても、なかなか売れないのが現状です。

ローンの融資を受けづらい

金融機関による融資金額は、担保価値に左右されます。担保価値の高い不動産は、もしも債権者が貸し付けを返金できなくなった場合、担保不動産を競売で売り出して資金を回収できることから、金融機関が積極的に融資する傾向があります。一方、担保価値の低い不動産は融資金額が少ないものです。

しかも、もとの価値が低い分、金利が高くなるケースもあります。ただ、金融機関は融資の際に担保価値だけで判断するわけではありません。債権者の属性、すなわち年収や事業の大きさもチェックしています。債権者の年収が高く、事業が大きく安定していれば好条件の融資を受けられる可能性もあります。

空き家投資の始め方・契約の流れ

空き家投資のメリットデメリットを把握した上で、次は空き家投資の始め方を解説します。空き家投資の契約の流れは次の4ステップです。
・物件を探す
・物件の管理者に問い合わせて購入する
・空き家を賃貸用にリフォームする
・維持の管理や退去の対応をする
それぞれのポイントをチェックしていきましょう。

物件を探す

空き家を持っていない場合、まずは物件を探します。物件を探す前には、予算や希望条件を整理したりするとスムーズです。収支のシミュレーションをしておけば、余計な出費も抑えられます。賃貸経営をする場合は「駅から近い」「人気のあるエリア」「ほかに競争物件がない」といった物件を選びましょう。カフェや民宿に向いている「古民家」を選ぶのか、リフォーム費用が少なそうな物件を選ぶのか、目的や予算に合った物件を選ぶのも大切です。物件を探す方法は大きく分けて三つあります。

【物件を探す方法】

一番手っ取り早いのは、空き家バンクや不動産会社のホームページで物件を探す方法です。不動産会社で探す場合、複数の不動産会社が異なる値段で同じ物件を販売・貸出しているケースもあります。仲介手数料も不動産会社によって異なるので、費用を最小限に抑えたい場合は、総合的な値段を計算してから利用する会社を決めましょう。

物件の管理者に問い合わせて購入する

気になる物件が見つかったら、管理者に問い合わせて、購入にあたっての相談をしてみましょう。管理者が不動産会社の場合、実際に店舗へ足を運ぶことで、インターネットでは知りえないコアな情報を入手できる可能性があります。来店客にしか紹介していないお宝物件もあるので、購入前の情報収集として活用してみましょう。

相談や見学を経て、購入の決意が固まったら売主へ申し込みをします。売主との間に不動産会社が介入する場合は、不動産会社が用意した購入申込書を記入して、売主へ提出します。その後の流れは次のとおりです。

・重要事項説明を受けて売買契約終結(手付金の提出)
・ローンの申し込み・審査
・決済

空き家バンクで空き家を購入する場合は、自治体の求める書類を提出し、見学や情報説明を経て購入手続きをしますが、基本的に間に不動産会社が入ります。

空き家を賃貸用にリフォームする

空き家を購入した後は、賃貸用にリフォームします。不動産会社に修繕すべき部分や予算を聞いた上で、リフォームを開始します。

【一般的にリフォームが必要な部分】
・トイレ
・外壁塗装
・フローリングの張り替え
・照明
・キッチン
・お風呂

部分的なリフォームの場合、1箇所あたり2~3週間ほど(床・壁・天井など)ですが、フルリフォームの場合、工期は5~8カ月ほどかかります。賃貸経営をすぐに始めたい場合は、なるべく早い段階にリフォームの依頼を済ませておきましょう。

不動産業者に入居者募集を依頼する

空き家のリフォームが済んだら、不動産業者に入居者募集を依頼します。
・家賃の設定
・敷金・礼金
・管理費(共益費)
上記の内容や募集条件などを不動産会社とすり合わせた後、インターネット広告やチラシで宣伝してもらいます。その際、手数料や広告費もかかるので、事前に用意しておきましょう。

維持の管理や退去の対応をする

大家自身が直接賃貸経営に携わらない場合は、賃貸物件の経営・管理を代行してくれる「管理業者」に依頼します。大家自身が経営する場合、建物や設備の維持や、入居者の入居・退去の対応、家賃のやり取りなどを行います。

空き家投資の注意点

予算は長期的な運用を前提として組もう

最後に、空き家投資の注意点をふたつ解説します。

ほかの不動産投資よりも手間がかかる

空き家の不動産投資は、新築のアパート・マンション投資と比べると維持や管理が大変です。もともとの不動産が古い分、賃貸経営を開始してから数年で損傷が目立つようになったり、修繕部分が増えたりします。予算を組む場合は、長期的な目線で必要になる資金を計算しましょう。

空き家の性質をしっかり見極める必要がある

空き家を選ぶ際は、立地やエリアなどをよく吟味する必要があります。空き家の価値を見誤ってしまうと、空室が続いてしまう可能性もあります。空室のリスクを防ぐには、サブリースがおすすめです。サブリースとは、業者が大家から賃貸物件を借り上げて、その賃貸物件の入居者募集や家賃の回収を行うものです。

入居者と大家が賃貸借契約を結ぶ通常の管理委託とは違い、サブリースでは入居者が業者と契約するという特徴があります。礼金や更新料などの一部がサブリース業者へわたってしまうデメリットもありますが、クレーム処理や面倒な事務作業を委託できるので、お金に余裕がある場合はおすすめです。

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