WH軽量組低迷で予選から勢力図一変。DENSO KOBELCO SARD が今季初勝利【第5戦富士GT500決勝】

 2020年3度目の開催となった富士スピードウェイでの2020年スーパーGT第5戦GT500クラス決勝は、39号車DENSO KOBELCO SARD GRスープラのヘイキ・コバライネン/中山雄一組が5番手スタートからの逆転劇で今季初優勝。2020年シーズン最初の観客動員レースで、うれしい勝利を手にした。

 10月4日開催の66ラップ決戦は前日予選も曇り空だったが、決勝前12時10分開始のウォームアップ走行時でも晴れ間は見えず。決勝スタートの13時30分には気温21度、路面温度29度と、事前予想よりも低い気温レンジの状況に。湿度も76%と、新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の影響で、これが2020年初のサーキット現地観戦となったファンにとっては、ある程度すごしやすい気候での”観戦日和”となった。

 そんな初の観客動員実現でファンの応援を背に争われた前日予選では、ARTA NSX-GTの福住仁嶺が後続をコンマ5秒突き放す驚異のタイムで自身初のGT500クラスポールポジションを獲得。不運続きの前半戦を取り返す走りを見せると、同じくここまで決勝では結果に恵まれてこなかったカルソニック IMPUL GT-Rがフロントロウ2番手を確保。

 セカンドロウにもトヨタ陣営の19号車WedsSport ADVAN GRスープラ、ニッサン陣営の24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rとヨコハマタイヤ装着車が並び、上位から4台は8kg、0kg、6kg、2kgと、積算ウエイトハンデの少ない軽量組が続くグリッドに。

 一方、ランキング上位勢は軒並み搭載ウエイトが50kg以上の領域で課される燃料リストリクターの流量ランクダウン措置を受け、前半戦2勝で選手権首位のKEIHIN NSX-GTは3ランクダウンの影響で最下位15番グリッド。36号車au、37号車KeePerのTOM’S GRスープラ勢は10番手、11番手と1ポイントでも多くの加算を狙い、決勝は後方からの追い上げを期す形になった。

 フォーメーションラップを経てコーナーへと飛び込んだ隊列だが、このオープニングの攻防でいきなりのアクシデントが発生。ポールシッターARTAのアウト側から首位奪取を狙ったカルソニック IMPUL GT-Rが止まりきれずにオーバーシュートすると、その背後では7番手争いのCRAFTSPORTS MOTUL GT-RとRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTがクリッピング付近で接触。

 これでRed Bull MOTUL MUGENの武藤英紀がスピンを喫すると、なんとかコースに留まったCRAFTSPORTS千代勝正も、続く2コーナーでボンネットが吹き飛びコカコーラコーナー先でストップ。その破片が最後尾のKEIHINベルトラン・バゲットの頭上に落下し、間一髪の状況で切り抜けていく。

 その余波で、スピンしたRed Bull MOTUL MUGEN NSX-GTを避けた38号車ZENT GR Supra立川祐路も14番手まで大きくポジションを落としてしまう。

 一方、その1周目にジャンプアップを果たしたのが1コーナーの首位攻防を背後で見ていた4番グリッドの24号車リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rで、そのままBコーナー進入でARTAのアウト側から仕掛け、高星明誠が首位浮上に成功する。

 しかしここでコース上のデブリ除去(3号車のボンネット)の必要からいきなりのセーフティカー(SC)導入となり、リスタート後のタイヤ発動を見据えて仕切り直しの展開となる。

 5周目突入でSC解除になると、各車ウィービングを見せながらホームストレートを通過し1コーナーへ。先頭の24号車リアライズコーポレーションとARTAに続き、同じくオープニングの混乱に乗じて3番手に上がっていた23号車MOTUL AUTECH GT-Rのロニー・クインタレッリも続いていく。

 すると続く周に向けニッサンのエースカーにロックオンしたカルソニック佐々木大樹が、スリップから抜け1コーナーでオーバーテイク。その後方では100号車RAYBRIG NSX-GTの牧野任祐も、KeePer TOM’S GRスープラのニック・キャシディとのサイド・バイ・サイドを制して、コカコーラコーナー手前で7番手に上がってくる。

 10周目に入るとModulo NSX-GTのペースが落ち始め、Red Bull MOTUL MUGENの武藤とZENT立川が前へ。続く11周目の1コーナーでは、前のラップでディフェンスされたDENSO KOBELCO SARD GRスープラのヘイキ・コバライネンが、19号車WedsSport ADVAN GRスープラを仕留めて5番手を取り戻す。

 一方、セクター3でGT300の隊列に行く手を阻まれた好機を掴み、13周目のホームストレートに向け首位24号車の背後をとったARTA福住は、続く1コーナーのアウト側からかぶせて首位奪還に成功。NSX-GTを先頭にリアライズ、カルソニック、MOTUL AUTECHと3台のGT-Rが追う展開へと変わっていく。

 しかし早くもその牙城を崩したのは好調DENSO KOBELCO SARDのコバライネンで、14周目の100RでGT300に詰まっていたMOTUL AUTECHを仕留め、4番手へ。するとここで12号車カルソニックの佐々木に「黄旗区間追い越し」のペナルティが下り、16周目終わりでピットレーンのドライブスルーを消化して最後尾へと下がってしまう。

 これで5番手争いとなった19号車WedsSport国本以下は、17周目の最終コーナーからRAYBRIG牧野と横並びで立ち上がり、アウト側へ弾き出されながらも、GRスープラの最高速を活かしてホームストレートで追いすがると、37号車KeePerのキャシディもこのバトルに加わり、3ワイドで1コーナーへ。

 ここで小さな勝利を手にしたのはキャシディで、国本はRAYBRIG牧野の背後へ。ここで19号車にはタイヤのドロップダウンが訪れたか、au TOM’S GRスープラのサッシャ・フェネストラズ、WAKO’S 4CR GRスープラの大嶋和也、21周目にはRed Bull MOTUL MUGENの武藤にも先行され10番手へと下がってしまう。さらに25周目にはリストリクター3ランクダウンのKEIHINにもパスされたことで、WedsSport国本は25周終わりでピットへと向かっていく。

 一方で、19号車と同じタイヤ銘柄を装着しながらここまで好調さを維持するのが2番手リアライズの高星で、首位ARTAを追い詰め秒差圏内でレースを進めていたが、26周目には早めのピットへ。39秒1の静止時間でヤン・マーデンボローへとチェンジし、同じ周回ではMOTUL AUTECHやカルソニック、WAKO’Sなどもタイヤ交換に入ってくる。

 それに反応したARTAも27周目にピットへ飛び込み、野尻智紀へとバトンタッチし35.1秒の静止時間でトラックへと復帰していくと、100号車RAYBRIG山本尚貴の前7番手でコースへ。しかしタイヤのウォームアップに時間が掛かり、そのRAYBRIG山本と24号車リアライズの2台ともども先行を許す展開となる。

■チームに”復帰”した脇阪寿一監督に待望の勝利をプレゼント

 最後までルーティンピットを引っ張った16号車Red Bull MOTUL MUGENが32周目にドライバー交代に向かうと、ライバルより早めのタイミングで作業を終えていたDENSOの中山雄一がコース上でARTA NSX-GTをかわして首位浮上に成功。その背後には37号車KeePerの平川 亮も続き、2台のGRスープラがピット戦略と迅速な作業時間でライバルたちを出し抜く。

 背後では、長らく3番手の100号車攻略に苦しんでいた24号車のマーデンボローが、33周目の1コーナーからコカコーラコーナーへの攻防でNSX-GTをかわし、続くラップの1コーナーではARTA野尻も続き、リアライズ、ARTA、RAYBRIGのトップ5へと入れ替わる。

 すると36周目。ここまで好レースを披露してきたその24号車が100Rで突如スローダウン。そのまま力なくヘアピンのインサイドまで進むと、なんとか勢いを取り戻すもそのままピットへと向かい無念のガレージインとなってしまう。

 その間、コース上では14号車WAKO’Sの坪井 翔がRAYBRIG山本をかわして4番手へ。40周を過ぎた頃には23号車MOTUL AUTECH GT-Rの松田次生が、GT300のバックマーカーと接触して左サイドのラテラルダクトを破損しながらも、5番手RAYBRIGの背後に迫る。その前方でも、軽量なマシンを利したARTA野尻が2番手KeePer平川を追い詰めていく。

 しかしここから、ストレート後半の最高速が伸びるGRスープラの特性を武器に、KeePer平川が老獪なドライビングを披露。燃料リストリクター2ランクダウンをものともせず、10周以上にわたって抑え込むと、背後から迫ってきた4番手WAKO’Sの坪井が一閃。ダンロップコーナー進入でズバリとARTA野尻のインを突き3番手へと浮上する。

 しかしここで喰い下がった野尻は、2台のGRスープラに追走してセクター3を駆け上がると、最終コーナーからのスリップ勝負でインサイドに振ったトヨタ勢に対し、レコードラインを進み1コーナーのブレーキング勝負へ。ここでついにKeePer平川を攻略し、WAKO’S坪井に続くポディウム圏内の3番手を死守して見せる。

 レースは残り10周を目前に後方でも動きがあり、トップ10圏内を争うau TOM’S GR Supraの関口雄飛と、序盤のドライブスルーで沈んでいたカルソニック IMPUL GT-Rの後半担当、平峰一貴がBコーナーのブレーキングでボディサイドを擦りながらの勝負を展開。そのままホームストレートまで並走すると、55周目の1コーナーへ雪崩れ込むように突入し、平峰が強引なまでのオーバーテイクで9番手へ。このバトルに乗じてZENTの石浦宏明も、au関口をパスしてトップ10へと上がってくる。

 残り3周で6番手走行中だった23号車MOTUL AUTECHの松田が緊急ピットでポジションを落とし、ファイナルラップではトップ10圏外へと下がっていたそのau関口が左フロントタイヤのエアを失いスローダウンするなど波乱はあったものの、上位勢のポジションは動かず。

 DENSO KOBELCO SARD GRスープラの中山が安定したレースラップを刻んで66周のトップチェッカー。シーズン初優勝を果たすとともに、今季からチームに”復帰”した脇阪寿一監督にも待望の勝利をプレゼント。2位には12番グリッド発進から終盤のオーバーテイクショーで躍進したWAKO’S 4CR GRスープラの坪井が続き、8号車ARTA NSX-GTはわずかに及ばずの3位表彰台に。

 また、4位には76kgものハンデを抱えていた37号車KeePer TOM’S GRスープラが、同5位にも64kg搭載の100号車RAYBRIG NSX-GTが入り、それぞれ貴重な8点と6点を加算し、37号車KeePerはランキング2位に浮上。ランキング首位には2位表彰台を獲得したWAKO’S 4CR GRスープラが立っている。

2020年スーパーGT第5戦富士 WAKO’S 4CR GR Supra(大嶋和也/坪井翔)
2020年スーパーGT第5戦富士 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)
2020年スーパーGT第5戦富士 KeePer TOM’S GR Supra(平川亮/ニック・キャシディ)
2020年スーパーGT第5戦富士 RAYBRIG NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)

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