満を持して晴海―虎ノ門間にBRTが開業

晴海ターミナルで出発を待つ新橋行き連節タイプ

 【汐留鉄道倶楽部】コロナ禍で鉄道旅ができず、今回は新たな交通システムとなるバスの話題。

 10月1日、東京・晴海の湾岸地域と虎ノ門を結ぶバス高速輸送システム(BRT)の運行が始まった。名称は「東京BRT」。通常の路線バスとは違い、途中停留所を2個所に限定し短時間で結ぶ。一部は2両分の連節タイプの大型バス(全長18メートル)として一度に大量輸送できるのが特徴。

 BRTそのものは既に全国で走っているが、東京都心部では初めて。本来なら今春からの運行スタートだったがコロナ禍で延期、バス停は早々に完成していただけに満を持しての開業となった。連節タイプが1台のほか燃料電池方式などの一般型が8台の計9台で運行する。

 開業前の1カ月間は連節タイプの試運転を晴海通りや新橋駅近くで良く見かけた。通常バスの1・5倍、「東京BRT」のシンボルだ。都バスの独壇場の町並みで、目立つ色彩と大きさにじっくり見入いる歩行者もいた。

 わたしは前任地の福岡市で既に走っている天神や中洲など中心部を周回する連節タイプのバスに乗っていたため、東京ではそれほど感動はしなかったが、福岡で初めて見たときはさすがに「でかい」「長い」と驚いた。高度な運転テクニックがないと交差点など曲がれないだろうな、と舌を巻いたものだ。

 今回の「東京BRT」開業は本格運行前のプレ運行、との位置付けとなっている。当面の運行を担う京成バスによると、本格運行は「旧築地市場の下にトンネルでできる環状2号の完成以降」というからまだ先のこととなる。それまでは今の区間に加え、豊洲や有明方面と路線を段階的に増やし、やがて東京五輪の先、2022年度以降に本格運行に移るという。

 そのころには改装を終えた選手村は「晴海フラッグ」という一大民間マンション街に生まれ変わり、路線網に加わる。

 現在の選手村はいつでも住めそうなくらいに完成しているが、夜など真っ暗な“ゴーストタウン”と化している。五輪延期で入居時期も先延ばしを余儀なくされた「晴海フラッグ」も街開きして賑わいのあるマンション街に変貌するはず。最大のネックだった「最寄りの地下鉄駅まであまりに遠い」という交通の不便さも「東京BRT」の本格運行で解消されることになるだろう。

(上)連節タイプは長い!、(下)静寂さを保つ晴海の選手村

 さて、早速1日の開業日、「晴海BRTターミナル」から連節タイプに乗ってみた。運賃は都バスより10円高い220円。バリアフリーは徹底され、乗り心地も良い。途中の停留所は「勝どきBRT」「新橋」の2つだけ。交差点を左折する時、車体は想像以上に大きく膨らむ。

 ただ、専用レーンがあるわけではないので、信号のたびに止まる点は路線バスと変わらない。停車駅は2つでも渋滞に2回引っ掛かった。それでも都バスを抜いたり隅田川最下流の「築地大橋」からの景色を楽しんだりと、ちょっとした「極小旅」気分で心地よく乗って新橋で下車した。晴海―新橋は23分。意外に早く着いた。

 今後、地下化で完成した環2区間だけでも専用レーンができて、信号の調整などもうまくいき高速化すればさらにBRTらしくなるだろう。

 現在月島、勝どき、豊洲、有明といった湾岸地区は大規模再開発だらけで建設中や計画されている高層マンションは「乱立」「雨後のたけのこ」状態。なんでこんなに再開発しちゃうの? 低い目線で見てきた街が、どんどん高さ比べの街になってしまうのか。とはいえコロナ禍で住居や仕事場の都心離れが進んでいくのでは、とも言われる中、終息した後の東京の日常生活の姿は見えない。

 本当に全ての再開発は実現するのか。まだまだ湾岸地域はパワー全開で発展し続けるのか…。それだけにこの地域の大幅人口増を見越して、本格運用に向け整備が進む「東京BRT」の行方は気になるところである。

 ☆共同通信 植村昌則

 ※汐留鉄道倶楽部は、鉄道好きの共同通信社の記者、カメラマンが書いたコラム、エッセーです。

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