日本の魚は「3分の1」まで減っている…シェフたちの水産資源を守る活動

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日本の食を盛り上げる特別プログラム『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL 9CHEFS』(ナビゲーター:望月理恵、オーガナイザー:小山薫堂)が、9月21日(月・祝)にオンエアされた。9人の料理人が登場し、成功をつかむまでのバイタリティあふれるエピソードや、日々のうちごはんをハッピーにする とっておきのレシピやアイデアを語った。

ここでは、東京・北参道にあるレストラン「Sincere」のシェフ・石井真介さんが登場したパートをお届けしよう。石井さんが取り組む、水産資源を守る活動とは。

石井真介は、信念と革新の人。笑顔になる料理で客の心を掴む

『dancyu』編集長・植野広生さんいわく、「Sincere」では店内のオープンキッチンでスタッフが料理を作るところを見ることができ、ライブ感を堪能できるそうだ。

コース料理の提供で必ず出てくるのが「たいやき」。しかし、「たいやき」といっても中身はあんこではなく魚が入っており、これはフレンチの「スズキのパイ包み焼き」という伝統的な料理に対するオマージュとなってるとのこと。スズキのパイ包み焼きは大人数で食べる料理だが、1皿ずつ食べられるように工夫されている。

植野さんによると「Sincere」は、決して奇をてらっているわけではなく、しっかりとしたフレンチの技術に支えられた、信念をもった味わいがあるそうだ。そして「石井さんは信念と革新の人。そして、熱い男」と評する。ただ料理をおいしく作るだけではなく、環境問題にも積極的に取り組んでおり、植野さんは「その思いも含めて味わっていただきたい」と紹介した。

それらを踏まえ、望月が石井さんに話を聞いた。望月も過去に「Sincere」を訪れたことがあるという。

望月:「Sincere」はどんなレストランですか?
石井:さきほど植野さんに紹介していただいたように、僕はクラシックなフランス料理をずっとやってきたんです。クラシックなフランス料理でありながら、思わず笑顔になるような演出をコースのなかに入れています。食事を楽しんでいただけるような、緊張せずに楽しい時間をすごせるような食事を心がけています。
望月:おいしい、楽しい。女性のツボを知っていますよね。
石井:まさにそこです。
望月:出てきた瞬間にみんな「キャー」って。
石井:それが僕の生きがいです(笑)。
望月:あはは(笑)。あちらこちらでそんな声が聞こえるところなんですよね。

石井のブリオッシュに舌鼓

この日、石井さんは望月に「たぶん好きだと思います」と、ある料理を持参した。

石井:僕の前の店「restaurant bacar(バカール)」のときからやっている四角い型で焼いたブリオッシュです。

望月:おおー! 大好きです。しかも「Sincere」のパンは何種類かワゴンで出てきますよね。あれが出てきたときには「かわいい!」って声があがります。石井シェフの思い通りみたい。食べていいんですか?
石井:ぜひ。早起きして、スタッフじゃなくて僕が焼いてきました。まだ温かいと思います。
望月:ブリオッシュって本当に幸せですよね。いただきます。……んー! じわっとバターなんでしょうか、その味が広がっておいしいですね。生地もきめ細かい。大好きです。
石井:よかったです。ありがとうございます。
望月:私はこれを食べているので、シェフがラジオ進行をお願いします。
石井:できないですよ(笑)。
望月:あはは(笑)。おいしいです。朝からありがとうございます。

サンマやマグロ、ウナギだけじゃない。日本は魚が減っている

石井はおよそ3年半前から「Chefs for the Blue(シェフス・フォー・ザ・ブルー)」という、水産資源を守る活動のリーダーを務めている。サンマが不漁などのニュースはよく耳にするが、それ以外の魚も減ってきているという。

石井:日本は海に囲まれているので、魚がたくさんあると思いがちなんですが、実際には魚が減っているんです。僕たち料理人はずっと前から気が付き始めていたことではあるんですけど、僕たちは料理をする仕事なので、なかなかそこに目を向けられなかったんです。でも、あることがきっかけでシェフたちが集まって、水産資源を守ろうという活動を始めました。
望月:きっかけはなんだったんでしょうか。
石井:佐々木ひろこさんというジャーナリストの方から海の現状を聞いたことです。「Sincere」に僕の仲間のシェフを30人ぐらい呼び、大学の教授に現状を訊いて、すごくショッキングな実態を知りました。僕たちメンバー全員そうなんですが、料理人は魚がなかったら料理ができないので、なんとかしなくてはいけないなと、この活動を始めたんです。

ここで、先ほど名前が出た水産資源の現状に詳しいジャーナリスト・佐々木ひろこさんが登場した。

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望月:私たちの耳に入ってくるのは「マグロが不漁」「サンマが獲れない」といった情報で、断片的に「今年はこういうものなのだ」と聞き流している状況でした。実際にはどのような状況なんでしょうか。
石井:僕はサバの文化干しが大好きなんです。「文化干し」って、日本で水揚げされたサバを浜で塩漬けにしたものを干して……みたいなイメージがありましたが、実際には99パーセントがノルウェーから来ていて、日本のサバは1パーセントぐらいなんです。日本のおいしい太ったサバの文化干しなんかまず食べることができないんですよね。僕が食べていたものも、実際にはノルウェーから来たものを解凍して塩漬けして干物にしている。僕たちの知らないところで、サバやホッケが獲れていない状況が数字で出てしまっているんです。それを見て僕たちはショックを受けたんです。
佐々木:具体的な魚種もそうなんですが、大きく見ると1984年に日本の総漁獲量はピークを迎え、それ以降は直線的に減っていき、今は当時のだいたい1/3ぐらいにまで減っているんです。たとえばどんな魚種が減っているのかというと、ほとんど減っていてマグロやウナギは当然なんですが、サケ、サンマ、アサリもです。
望月:アサリもですか?
佐々木:はい。あとイカ類は特にスルメイカも有名ですけど、アカイカといったほかのイカ類もかなり減っています。ホッケ、トラフグ、イカナゴ、サクラエビ。ここ10年間で、1/3とか1/4という数字になっている魚種が本当に多いんです。
望月:アサリやイカは、普通に「いつでもあるでしょ」ぐらいの感覚でした。
石井:マグロやウナギが「ない、ない」と言っていてもあるのは、輸入業者さんが優秀すぎて、僕たちが知らないあいだに日本のものじゃないものにすり替わっているんです。僕たちが勝手に勘違いしているだけで、知れば知るほどゾッとするような事実があります。単純に昔いた1/3しかいないわけですから。

望月は「なぜ、そのようなことになってしまったんでしょうか」と根本的な疑問をなげかける。

佐々木:水産資源というのは限りがあるものなんですね。みなさんは海のなかが見えないので、いくらでも魚がいるんだと思いがちなんですが、有限な資源です。魚というのは自発的に増えていってくれる資源でもありますが、彼らが自分で卵を産んで増えていくスピードを越えて獲ってしまうと、当然減ってきてしまいます。それに日本人が気付くのが遅すぎた、というのが現状です。
望月:世界では改善されているんでしょうか。
佐々木:世界的に見ると1980年代くらいから先進国と言われている国々は「これ以上獲るとどんどん減る」ということに気付いて、漁獲規制を始めたんです。日本はそれに乗り遅れてしまい、獲り続けてきてしまったんです。「ここまでは獲っていいよ」という漁獲規制をせずに今まできてしまったんですね。2018年12月にやっと漁業法の改正が70年ぶりにおこなわれて、やっとそういう方向にはきているんですが、まだまだ今後の法令といったいろいろなものを整備してかなくてはいけない状況です。
望月:そういった現実を知り、料理人たちが集まって活動をされているんですね。

「Chefs for the Blue」の公式サイトでは、わかりやすく学べるコラムなどが掲載されている。