『星の子』無意識の偏見に気づかされる

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 第157回芥川賞候補にもなった今村夏子の同名小説を、「さよなら渓谷」「日日是好日」の大森立嗣監督が映画化した作品。女優・芦田愛菜が、2014年公開の「円卓 こっこ、ひと夏のイマジン」以来の実写映画主演を果たしています。

 芦田が演じる主人公・ちひろの両親は、彼女が赤ちゃんのころ、ひどい湿疹を治した「特別な水」を購入したことがきっかけで宗教団体に入信します。娘を救った特別な宗教を両親は盲信していますが、団体に使うお金で家計は破綻し、長女との関係も崩壊してしまいます。ちひろはそんな両親の宗教観を静かに受け止めながら、世間とのズレを感じている中学生。そんな彼女の心をかき乱す出来事が起きます。

 芦田愛菜ちゃんが素晴らしい女優さんに成長していて本当に驚き!狂信的な両親を見る目、差別的な発言によって深く傷ついた目、大好きな人を憧れの目で見るあどけなさ、表情だけであんなにも心の中の動きを伝えられる芝居力は圧倒的で、日本映画界を牽引する若手女優としての期待は高まるばかり。成長といえばこの映画を観た後につい観てしまったのが10年前に公開された『告白』です。のんちゃんや三吉彩花など今をときめく役者が数多く出ているこの映画は、小さな愛菜ちゃんと、本作と同じ教師役の岡田将生が共演しているので先に観ておくと二人の俳優の成長が見えて面白いかもしれませんね。

 愛ってなんだろう、親子ってなんだろうって考えながら観ていた本作のラスト、私は自分の中にある無意識の偏見やいつの間にか凝り固まった先入観に気付いてしまってハッとしました。みなさんは、鑑賞後何を感じるのでしょうか。(森田真帆)★★★★★

10月9日から全国公開

監督:大森立嗣

出演:芦田愛菜、岡田将生

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