『望み』この国の加害者家族への冷たい報道のリアル

(C) 2020「望み」製作委員会

 「犯人に告ぐ」などの雫井脩介の同名小説を、堤幸彦監督が堤真一と石田ゆり子を夫婦役に迎えて映画化したサスペンスドラマ。一級建築士の父と校正者の母、高校生の長男・規士、中学生の妹・雅は、父が設計したオシャレな家に住むリッチな家族。ある日、サッカー選手への道を断たれて以来、夜遊びで無断外泊が続いていた規士が家に帰ってこなくなります。翌日、彼の同級生が車のトランクから発見されたというニュースが流れ、行方不明になった息子は事件の関係者として捜索され始めます。

 行方不明となっているのは3人で、そのうち犯人と見られる逃走中の少年は2人。息子は加害者なのか、被害者なのか分からないまま、何もできない時間が過ぎていく。加害者でもいいから生きていてほしいと祈る母と、加害者ではないことを信じたい父は対立してしまいます。どちらの結果だったとしても辛い結末であるから苦しい時間は永遠であるかのように続いていく。ハリウッド映画だったら、きっと息子の友達を探しまくり親父が真実を追求したりしそうなのですが何もできない。

 作中、行方不明というだけでネット上で憶測が飛び交い、テレビ局が過熱報道していく様子は、日本の加害者家族への容赦の無さを浮き彫りにしていて嫌悪感を覚えるほど。散々家の前にいたマスコミが落としていったゴミを父親が拾うシーン。先日偶然観たドキュメンタリー『わたしは分断を許さない』で東日本大震災の取材で福島に行ったテレビ局のマスコミがゴミやタバコを落としていたシーンを思い出しました。★★★☆☆(森田真帆)

10月9日から全国公開

監督:堤幸彦

出演:堤真一、石田ゆり子

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