頂点を目指すドジャース 計り知れないベッツの存在の大きさ

昨季まで7年連続地区優勝と充実の戦力を誇っていたドジャースだが、アンドリュー・フリードマン野球部門社長は32年ぶりとなるワールドシリーズ制覇を実現するために「ラストピース」の獲得を諦めなかった。ゲリット・コール(ヤンキース)、アンソニー・レンドン(エンゼルス)、フランシスコ・リンドーア(インディアンス)の獲得はいずれも実現しなかったが、今年2月にムーキー・ベッツの獲得に成功。レッドソックスからやってきた球界屈指の5ツール・プレーヤーはドジャースを32年ぶりの頂点へ導こうとしている。

今季のベッツは55試合に出場して打率.292、16本塁打、39打点、10盗塁、OPS.927と例年通りの好成績をマーク。ブリュワーズとのワイルドカード・シリーズでは2試合で二塁打を3本放ち、ジャスティン・ターナー、マックス・マンシー、ウィル・スミスといった主力打者に当たりが出ないなか、リードオフマンとして打線を牽引した。これだけでもベッツ獲得の成果は十分にあったと言えるが、ドジャースが得たものは「素晴らしい外野手」だけではなかったのだ。

ベッツの加入は周囲の選手を刺激し、チームの戦力を底上げする効果があった。もちろん、そのなかにはベッツの加入によって自然に発生したものもあったが、ベッツが新天地で積極的にコミュニケーションを取ったことで生まれたものもある。たとえば、今季開幕から22打数2安打という打撃不振に陥ったオースティン・バーンズはベッツから助言を受けてスランプを脱出。「彼のクラブハウスでの貢献の大きさは言葉では言い表せない。彼は僕をものすごく助けてくれたんだ」とベッツへの感謝を口にする。

エース左腕のクレイトン・カーショウでさえ「僕たちはここ数年素晴らしいチームだったけど、まだ何も勝ち取っていない。今年は違う結果になればいいと思っているし、ムーキーはその大きな『違い』を生む存在になると思う」とベッツを絶賛する。「彼はヒットを打てなくてもしっかり切り替えができる男なんだ。彼は自信に溢れているし、それには周囲を落ち着かせる効果がある。彼がこのチームにいてくれるのは本当にありがたいよ」とカーショウ。ベッツはドジャースに単なるスター選手の加入以上のものをもたらそうとしているのだ。

ベッツは7月にドジャースと12年3億6500万ドルという巨額の契約を結び、ドジャースで複数のチャンピオンリングを獲得することが目標であると明言した。そして、ドジャースでの最初のチャンピオンリングを獲得するのは今年かもしれない。

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