「得意分野の連携不可欠」 県警本部長になった 早川智之さん(51)

早川智之さん

 〈8月24日付で県警本部長に着任した。新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中での警察業務や、今夏相次いだ台風災害への対応などについて聞いた〉

 -本県の治安情勢は。
 全国的に見ても、刑法犯認知件数は少なく、人口10万人当たりの犯罪率は低い。検挙率は全国と比べても高く、犯罪を抑止しながら検挙もできている。数字で見ると比較的良好な状況だと言える。しかし、特殊詐欺の被害は依然として発生し、サイバー犯罪の相談は高止まりの状況。取り組むべき課題もある。

 -力を入れる分野は。
 ストーカーやドメスティックバイオレンス(DV)、児童虐待といった人身安全事案への対応は重要性が高まっている。今年、人身安全対策課が発足し、県内全ての事案に、相談段階から捜査と抑止の両面での対処ができるようになった。被害を拡大させないことが一番の目的だ。
 さらに他機関との連携が大切だ。警察、行政は、それぞれに得意分野がある。例えば児童虐待では、検挙や警告などは警察が得意な部分。ただ、基本的には子どもは親の元で生活するもの。児童相談所など行政機関の継続的な対応は必要となる。児童虐待だけでなく、さまざまな場面で他機関との連携は欠かせない。

 -新型コロナは収束が見通せない。警察業務への影響や対応面での変化は。
 まずは、警察職員が感染しないよう努める。仮に感染したとしても拡大を防ぐ。交通安全の街頭活動や交番での道案内、運転免許の更新など、県民との接点は多い。だからこそ、感染予防をしなければならない。新型コロナで生活様式が変わった。あらゆる面で変化が生じ、治安への影響について、動向を注視しておく必要がある。

 -9月には台風が相次いで接近した。災害には、どのように対応するか。
 着任後、台風9号と10号を経験した。特に10号は「最大級の警戒」が呼び掛けられた。甚大な被害を懸念し、一部離島には事前に機動隊が現地入りし待機した。これは初めてのことだった。最も危惧したのは、道路が寸断されるなどの被害が発生したときに人手が足りないこと。海が荒れると、早期の応援は出せない。災害への対応では、考えられるだけの下準備が求められる。今回のことは、今後にも生かしていきたい。

 -あらためて抱負を。
 個人としてできることは限られているが、できることは必ずあると考えている。約3500人の職員の声を聞きながら、一番能力が発揮できる組織にしていきたい。

 【略歴】はやかわ・さとゆき 三重県出身。東京大法学部を卒業後、1992年に警察庁に入った。沖縄県警警備部長、神奈川県警刑事部長、警察庁交通企画課長などを歴任。「仕事は自分が納得できるまでやる」と語る。

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