「クレジットカードの色」はどこまで大事? “固定費削減”はセミリタイアへの近道

最近クレジットカード会社の「デフレ」化が進んでいるように感じます。15年ほど前まで「黒いカード」というものは、選ばれし者だけが持てるもので、今から1時間後に○○航空のファーストクラスを突如として確保できる、的な都市伝説まであったほどです(いや、本当かもしれないけど)。しかし、今、新興のカード会社が次々と「黒いカード」を出しており、それらがそこまで年会費が高くないんです。


特別感を示していた「ブラック」

私は2005年、雑誌の特集で「アメリカンエキスプレスブラックカードを持っている人の生活」特集というものを作ったことがありますが、それはそれは特別な方々でした。「ゴールド」や「プラチナ」を超えた「ブラック」ということで紹介したわけで、とにかく取材相手がスゴい金持ちでした。そうした経験を経て、一度、完全に勝ち組となったベンチャー企業の副社長におごってもらったことがあるのですが、この時もおでん屋に光る黒いカードには「へへぇ~、御馳走様です!」と土下座したくなったほどです。

そんな状況でありながら、最近は若手社員でも「金色」のカードを持っていることが増えています。実際はそこまで高いランクではないのですが、カード会社が顧客の満足度を高めようと金色にしているわけです。

そして私ですよ。47歳、一応は会社経営者。しかし、会計の時に出すのは、1998年、25歳の時にANAのCAと合コンをした時に無理矢理つくらされた紺色のANAカード(VISA)で、現在の年会費は1650円。

これ1枚しか持っていません。色々とアップグレードさせれば空港のラウンジ使えたりするみたいですが、海外に行く機会なんて年に1回ぐらいしかないし、空港にいたとしても、その間、寿司でも専門店で食べた方が満足度高いじゃないですか。

フェイスブックの広告でも年会費14万円以上する黒いカードの審査を「してやるぜ」的なものがありますが、ワシ、そんなもんいりません。本当の金持ちにだけそういった広告は出してください。

50に手が届こうかとする、「これまでそこそこ年収が高かったから、まぁ、これから苦労する人生は送らないで大丈夫かな」的な人間は別に黒いカードとか金色のカードっていらないと思うんです。

黒いカードを持ちたいとは思わない

私自身、貯金額は同世代では多い方だと思います。だからこそ2020年8月31日をもってセミリタイアをすることができたのですが、仕事を辞めたいのであれば、お金を貯めるに限る。そのためのもっとも簡単な手段は「固定費を減らす」こととなります。

天井が高いが故に同じ広さでも4万円高い部屋やら、都内を週末だけ運転するだけでパワーが不要なのに3000ccの高級外車を買った――こんなことを「無駄」と私は考えるからさっさとセミリタイアできたのだと思います。そして、これからの人生、一切「これはこれは、黒いカードのお客様ですね。お待ちしていました」なんて恭しく扱ってもらいたい気持ちはありません。

あくまでも、仲のいい人とそこそこ楽しめればいいだけですし、黒いカードを出した瞬間に「おぉーっ!」と言われる人生を送りたいわけではない。しかし、最近はカード業界の「色」のデフレ化が進んでいるだけに、むしろ黒いカードを持っていたりしたら「実はたいしたことがないのに見栄を張っている恥ずかしい人wwww」なんて思われてしまうリスクもありますので、本当に年会費が高く、ステイタスがある黒いカードを持つことをお勧めします。まぁ、「黒いカードであっても、マジものの黒いカードかどうかは判断しなくてはならない」という理解が広がってしまっているからこそ、最近は「黒よりもすごい純金カード」なんかも出てきてしまっているわけですが。

そうでない方は、私のようにもっとも安いカードを持ち「この人、お金そこそこ持っているけど自然体なんだな」と思わせた方がいろいろと得すると思います。最近、むしろ「えっ? 僕だってゴールドなのに中川さん、紺色なんですか?」と若者から驚かれることも出てきました。

見栄を張らない人生、ラクですよ、本当に。

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