主力の打順を“凝縮”…大量入れ替え後初勝利のロッテ、戦いが不変だった理由

ロッテ・井上晴哉【写真:荒川祐史】

ヤクルトで活躍し、ソフトバンクでコーチも務めた飯田哲也氏が解説

■ロッテ 4-1 オリックス(7日・ZOZOマリン)

主力が新型コロナウイルスに感染して大量離脱したロッテが、チーム一丸となり、大きな1勝を手にした。7日の本拠地でのオリックス戦。初回2死から相手のミスから掴んだ好機に、井上の13号3ランで先制。先発・小島が6回1失点で粘ると、7回を唐川、8回を澤村、9回を益田が締めた。これまでと変わらぬパターンで勝利を収め、離脱の不安を感じさせない戦いだった。野球解説者の飯田哲也さんに試合のポイントを振り返ってもらった。この1勝が持つ意味とは……。

試合そのものを振り返ると、ロッテが初回、オリックスの“ミス”に乗じて得点、それも3点を奪えたことが大きかった。2死からマーティンの右安打の後、安田の打球は二塁後方へ。遊撃の安達が捕球したが、難しい体勢から二塁へ転送するも、間に合わず。一塁に投げていれば間に合うタイミングのように見えた。一、二塁から、井上の3ランが生まれた。

「相手がミスをしてくれたところの本塁打が大きかったですね。ロッテらしい戦いができた。ミスで点がしっかりと取れるのは強い。相手のダメージを考えても、大きい3点でした。それでピッチャーも楽に投げられましたね」

先発の小島は6回まで6安打されたが粘りの投球でオリックス打線を封じた。1失点でマウンドを降り、7回以降は、盤石の勝利の方程式へ。7回を唐川、8回を澤村、9回は益田がピンチ招くも無失点で切り抜けた。

「これまで通り、終盤の投手がいいので、そこまでにリードをすればいい。益田は褒められた内容ではなかったですが、満塁で大下をフルカウントからチェンジアップで空振り三振に打ち取ったところは見事。なかなかああいう展開であの球は投げられないし、バッテリーの信頼感があってこそと感じました。大幅なメンバー入れ替えで代打や控えの層は薄くなっているため、逆転勝ちとかは望めない。今のチーム編成だと逃げ切って勝つというのが一番、確率が高いので、今日のような勝ち方が一番いい」

打順は2~7番に主力打者を“凝縮”して流れを、1番と下位に若手を起用

コロナ禍で大量入れ替えとなった前後のスタメンを比較すると、1番・荻野、3番・菅野、9番・藤岡が抜け、前夜とこの試合は2~7番に他のスタメン選手を“凝縮”させ、1番、8~9番に若手を抜擢。6日はルーキーの高部、この日は高卒2年目の藤原を1番に起用。たとえ、昇格組が力を発揮できなくても、従来のメンバーで点が取れる打順を井口監督は組んでいた。

「ロッテとしては中軸で点が取れないと厳しい展開でしたが、しっかりと形になったのでよかったと思います。中村奨が2番にいることで、1番打者が倒れても、中村がその役割になれますし、チャンスで回ってくればポイントゲッターにもなれる。人数が減っても野球は変わってない。変える必要なく野球ができているのは、このような打順を組んでいること、その意図を選手が把握して、役割を担っているのが大きいですね」

3-1、2点リードの7回1死二、三塁ではその中村奨が追加点となる中犠飛。大きな1点が入り、勝負あった。その直前には、藤原がしっかりと送りバントで御膳立てしていることも見逃せない。中村奨はヒットこそ出ていないが、送りバントや犠飛などで勝利に貢献した。

「井口監督が言っていたように、藤原ら若手にはチャンス。中軸で打って、投手で勝った。こういう野球を首脳陣が考え、先輩たちがやってくれているのだから、のびのびとやればいい。この若手が出てきたら、またさらに良くなるんじゃないかなと思います。安心はできませんが、前向きになれる要素。監督は若手出てこいと思っているはずですよ」

優勝を争うチームには勢いも必要だ。ピンチをチャンスに変え、さらにチーム力を伸ばそうとするロッテ・井口監督のタクトが見て取れた。(Full-Count編集部)

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