契約書がなくても大丈夫! 劇団員に残業代の支払いを認める判決

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。9月9日(水)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の河西邦剛さんが劇団員や芸能人、フリーランスの“労働者性と契約書”について解説しました。

◆劇団員にも労働者性を認める画期的な判決が!

劇団員が労働者であるか否かが争われた訴訟で、画期的な判決がありました。元劇団員の男性が劇団の運営会社「エアースタジオ」に未払い賃金の支払いを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は男性が公演に出演したことなどについても労働者性を認め、会社に対して約186万円の支払いを命じる判決を下しました。

労働契約が適用されるとどうなるかといえば、例えば最低賃金や深夜労働の禁止など、さまざまな法律上の保護が受けられます。しかし、これまでは劇団員や芸能人、フリーランスの方などは、(立場的に)労働者かどうかが微妙だと見られていました。ただ、今回の判決では「二審において劇団員の練習や演劇時間などについても労働契約として賃金が発生する」とされ、労働者性が認められました。

実情として、芸能界では「売れるまでは賃金が発生しないということがあったりする」そうですが、そこで法律上の労働契約として保護されるのか、河西さんは「これは契約書だけでは決まらない」と言います。

芸能人やフリーランスは事務所や劇団に所属するときに契約書を作成せず、給料や労働契約に関しても口約束で済ませてしまうことがありますが、「労働契約かどうかは契約書だけではなく、メールや業務の指示の出し方などで『指揮監督関係』があるかないかという実態を見る」と河西さん。つまり、契約書がなくても実態として指揮監督関係があれば、「フリーランスと言われても、労働契約かもしれないよというところ」と話します。

しかも、メールだけでなくLINEやSNSなども有効で、今回の元劇団員も証拠として日記を提出。そこに書かれた労働時間と給料を検証したそうで、河西さんは「証拠は残しておくべき」と強く訴えます。

◆こんな契約書は危険! 契約書のチェック項目

劇団員の特徴として、プロデューサーや劇団側がセリフ量や役どころなどを決める権限を持っていることがあります。それだけに、劇団員は劇団などに逆らいにくく、もしも逆らえば干されてしまう可能性もはらんでいます。また、小劇団では俳優が裏方・スタッフを兼務するケースがあり、そういったなかで「無償労働が当然の感じになってしまう風潮がある」と指摘します。

現在はコロナ禍とあって劇団側も苦しい部分があり、そこは法律上難しいところだそうですが、「劇団員だから一律ではなく、実態として契約のなかでどういった縛りがあったのか、逆らえなかったのか、そこが大事」と双方の力関係に要因があると主張。

そして、ここ数年で芸能トラブルが増えてきた背景についても言及。多くの芸能人にとっての活動の場は、昔はテレビが主流でしたが、現在はYouTubeやSNSなどメディアが多様化。そのため「芸能人の活動の場が増えた」わけですが、その一方で誰でも芸能事務所を名乗れてしまうようになり、芸能人の数が増えたことでトラブルも増加していると河西さん。

最後に河西さんは、芸能人やフリーランスの方に向け、契約書のチェック項目を紹介。まずは、「契約書が長いのは要注意。それだけ禁止事項が多いということ」と言います。さらには、「芸能事務所がタレントに対して過去にネガティブな発表をしているかどうか」。例えば禁止行為があったから解雇した場合も、「確かにタレント側に非がある場合もあるが、それが連続していると事務所のマネージメントはどうなのか」と不信感に繋がるポイントを挙げていました。

※この番組の記事一覧を見る

<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

© TOKYO MX