【米大統領選2020】 副大統領候補の討論会、パンデミック対策などで応酬 

©BBCグローバルニュースジャパン株式会社

11月3日の米大統領選に向けて、副大統領候補の討論会が7日、ユタ州ソルトレイクシティーのユタ大学で行われた。副大統領候補の討論会は今回のみ。野党・民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(55)と現職のマイク・ペンス副大統領(61)は、新型コロナウイルス対策などについて90分間の論戦を交わした。ただし、1週間前の大統領候補討論会のように、候補同士がお互いを罵倒しあったりする異例の展開にはならなかった。

ハリス上院議員はドナルド・トランプ大統領について、「この国の歴史上、大統領政権として最大の失敗」だと非難した。

ペンス副大統領は、民主党のジョー・バイデン大統領候補が提案しているパンデミック対策について、現政権からの「盗作」だと呼んだ。

新型コロナウイルスによる感染症「COVID-19」のワクチンが接種できるようになったら、それを受けるかと質問されたハリス議員は、医療の専門家たちが推奨するなら受けるが、トランプ氏が勧めるだけなら受けないと答えた。

ペンス副大統領はこれについて、「人の命を政争の具にしないでもらいたい」と反発。「トランプ政権下でワクチンができたとして、ワクチンへの国民の信頼感を損ない続けるのは道義に反する」と批判した。ペンス氏はほかにも、「あなたが自分の意見を持つのは自由だが、自分独自の事実は認められない」とも、ハリス議員に繰り返した。

ペンス氏は時間切れを示す司会者の制止を遮り、話し続けることが多く、ハリス議員の発言を遮ることも繰り返した。そのたびにハリス議員は、「副大統領、今は私が話しているんです」と応酬した。

しかし、トランプ氏が不規則発言を繰り返し、両候補がお互いを「うそつき」などと罵倒し合った先週の討論会に比べると、これはきわめて穏やかで落ち着いた政治家同士の議論だった。

それだけに、ペンス氏の頭上にハエが止まり、2分余り動かずにいた時には、ソーシャルメディアが一気に盛り上がった。

感染予防のため12フィート(3.6メートル)離れて座った両候補の間には、2枚の透明な板が設置されていた。

COVID-19を発症して入院したものの、3日間で退院しホワイトハウスに戻ったトランプ大統領は、この日の討論会に先立ち、

。その中で、自分が感染したのは実は「神からの祝福」だったに違いないと述べ、自分が受けた投薬治療を全国民が無料で受けられるようにすると述べた。

この間、ホワイトハウスでの感染拡大は続き、政権やトランプ陣営関係者のほか、軍幹部にも感染者が出ている。

数々の質問に答えず

トランプ氏の発病を受け司会者が、大統領が執務できなくなった場合に備えた権限委譲の手続きについてトランプ氏と話し合ったのかとペンス氏に質問したものの、ペンス氏は回答を避けた。ペンス氏はほかに、人工中絶の廃止の是非についても回答しなかった。また、トランプ氏が既往症のある国民にも医療保険を提供すると公約していることについて、これを具体的にどうやるのか司会に尋ねられたが答えなかった。

気候変動についてハリス氏は、「人類存亡の危機」だと発言。「あなたも気候変動は人類存亡の危機だと思うか」と司会に質問されると、ペンス氏は直接は答えなかった。

一方で、もしもバイデン氏が勝てば民主党は最高裁判事の定数を増やすのかと言う司会やペンス氏の質問には、ハリス氏が明確な回答を避けた。バイデン氏がもしも当選すれば就任時には78歳と史上最高齢の大統領になることについて、万が一の時にどうやって権限を承継するのかという質問にも、ハリス氏は答えなかった。

人種差別めぐり白熱

やりとり全般の調子は落ち着いたものだったが、厳しい応酬もあった。中でも人種差別については、両候補が厳しく対立した。

黒人男性ジョージ・フロイドさんが警官に取り押さえられて死亡した事件について、ペンス氏は衝撃だったと述べつつ、「その後に続いた暴動や略奪は決して許されない」と批判。この日の会場に自分が招待した黒人女性は、そうした暴動で自分の美容院を破壊されたのだと紹介した。

「アメリカは構造的に人種差別的だと、ジョー・バイデンとカマラ・ハリスは絶えず繰り返す。法執行機関は潜在的に少数者に偏見を抱いていると、ジョー・バイデンは繰り返す。これはひどい侮辱だ」と、ペンス氏は述べた。

一方のハリス議員は、父がジャマイカ出身、母がインド出身で、黒人女性としてアメリカで初めて主要政党の副大統領候補になった。

そのハリス氏は人種差別について、「合衆国の大統領は先週、7000万人のアメリカ人を前に討論会の舞台に立ち、白人至上主義を非難しなかった」とトランプ氏を非難した。

「その機会がなかったわけではない。機会を与えられたのに非難しなかったし、言い訳をして、さらに問い詰められると、『いったん下がって待機せよ』と言った。ドナルド・トランプはこうしたことを繰り返している」

「違う、違う」とペンス氏は反論し、サンフランシスコの地方検事だったハリス氏は白人やヒスパニック系よりも黒人を多く軽い薬物違反で起訴していたと非難。これに対してハリス氏は、カリフォルニア州司法長官としての経験を生かして、警察改革を推進していくと述べた。

中国や所得税も論点に

ハリス氏はトランプ政権が中国と「貿易戦争」を繰り広げたことで、アメリカの製造業が後退したと批判。「あなた方は貿易戦争に負けたんです」と述べた。するとペンス氏は、「中国との貿易戦争に負けた? ジョー・バイデンはまったく中国と戦おうとしない。ジョー・バイデンはもう何十年も前から、中国共産党のチアリーダーだった」と反論した。

ハリス氏は、トランプ氏が2016年に納めた連邦所得税は750ドル(約8万円)だったという米紙ニューヨーク・タイムズの報道を取り上げ、「最初に聞いたときは『75万ドルでしょ?』と聞き返した」と述べた。さらに同紙報道によると、トランプ氏が個人的に約4億ドルの巨額借金を抱えていることを問題視し、その判断に影響しないか懸念されると述べた。これに対してペンス氏は、トランプ氏は実業家で「たくさんの雇用を作り出してきた」と答えた。

ハリス氏は、トランプ氏が「アメリカの友人たちを裏切り、世界中の独裁者と仲良くしてきた」と批判。ペンス氏は、トランプ大統領の指示で過激派勢力「イスラム国(IS)」の指導者や、イラン革命防衛隊のカセム・ソレイマニ司令官の殺害に成功したのだと強調した。

(英語記事 VP debate 2020: Pence and Harris clash on coronavirus pandemic