天ぷらの神様、74歳。昨日より今日のほうがおいしいに決まってる【「みかわ是山居」主人】

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望月理恵(左)、早乙女哲哉(中央)、小山薫堂(右)

日本の食を盛り上げる特別プログラム『J-WAVE HOLIDAY SPECIAL 9CHEFS』(ナビゲーター:望月理恵、オーガナイザー:小山薫堂)が、9月21日(月・祝)にオンエアされた。9人の料理人が登場し、成功をつかむまでのバイタリティあふれるエピソードや、日々のうちごはんをハッピーにする とっておきのレシピやアイデアを語った。

ここでは、門前仲町にある天ぷらの名店「みかわ是山居」の主人・早乙女哲哉さんが登場したパートを紹介しよう。研鑽を続ける職人の、突き抜けた遊び方、ベストを追求する生き方とは。

世界一の天ぷら職人・早乙女哲哉

小山は「早乙女哲哉さんは日本一、いや世界一の天ぷら職人です」と紹介した。

小山:この方をして“職人"だと思います。とにかく早乙女さんの技術の右に出る人はいません。それ以上に生き方がかっこいい。おそらく現代の数寄者(すきしゃ)ですよ。
早乙女:自分では「どんな天ぷら屋さんなんですか?」って訊かれたら「たいしたことない天ぷら屋です」って、それしかないんですよ。だから「ラジオでなにか話してくれ」って言われても「たいした話はできませんよ」って。
小山:よく今回来てくれましたね。
早乙女:昼間に店を2回転やって、すぐにタクシーに乗って飛んできたんですよ。これが終わったらまた帰って2回転やるんです。
望月:えー!?
小山:今、おいくつでしたっけ?
早乙女:74歳。
小山:すごいですよ。

5万円のコーラ!? パワフルな遊び方

小山は早乙女さんを料理人として絶賛しながらも、「遊びもすごいんです」とプライベートを少し明かす。

小山:仕事もすごいんですけど、遊びもすごいんです。
早乙女:あはは(笑)。
望月:どんな遊びをされているんですか?
早乙女:一応昼2回転、夜2回転やるんです。それから銀座へ行ってお寿司を食べて、それから急いでグルグルとお店を回るんです。
望月:銀座のお店を回られるんですか?
早乙女:時間が間に合わないじゃないですか。仕事が終わってから行くんだから。向こうにつくと、だいたいそういうお店に入る時間が22時半くらい。そうしたらドア開けて「チェック」って言って入っていくんですよ。
小山:あはは(笑)。
望月:入ってすぐに(笑)。
早乙女:「お勘定をしてくれ」って言ってから椅子に座る。それで勘定を払って帰ってくるんです。お金だけ払いに行くんです。
望月:それでも行くんですね。
早乙女:そうです。
小山:あとはなにがすごいかって、早乙女さんは下戸なんです。
望月:あ、お酒を飲まれないんですか?
早乙女:そうなんですよ。1件の店でだいたいコーラを半分くらい飲むんです。半分ぐらい飲んで5万円ずつ払って帰っていくんです。世界で俺より高いコーラを飲んでるやつがいるのかって(笑)。

常にベストを更新し続ける職人のすごみ

さらに小山によると、早乙女さんは寿司の名店「すきやばし次郎」に誰よりも足を運んでいる人物なのだという。

早乙女:「すきやばし次郎」の寿司は、ざっと7500回は食べてます。毎日食べても20年ですね。
望月:へえ!
小山:今も行かれているんですか?
早乙女:昼も夜も仕事をしているから、毎週水曜日の昼しかいけないんですよ。‏昼は息子さんで、親父さんは夜にやっているんですけど、今まで7500回昼間に行っているのに、親父さんが夜やっているからって夜に行くのも息子さんに悪いでしょ? だからずっと昼間。
小山:へえ! そこまで「すきやばし次郎」に惚れ込んでいるのは、職人としても惚れ込んでいるということですか?
早乙女:まあそうですね。やっぱり親父さんの寿司に対する姿勢ですよ。絶対にゆずるところがないんですよね。今は親父さんが94歳ですから、78歳のときに私が「親父さん、昨日より今日はまた上手になってるね。自分でもわかってるでしょ?」って言ったら「わかるさ」って。
望月:へえ!
早乙女:78歳で昨日よりも今日のほうが仕事が上手になっているのがわかる。私もそれを見てわかりますけどね。
小山:やっぱり毎日違うんですか?
早乙女:違います。親父さんが「昨日より今日のほうがまた上手になっちゃった」と思って寿司を握っているのがわかるんですよ。だからそう言ったら本人も「俺もわかってるから」って。
小山:それはどのへんが違うんですか?
早乙女:仕事をしていて10のことを「絶対にゆずれない」と埋めるんです。そうすると10埋めた人には20の穴が見えるんです。その20の穴をひとつずつ埋めていこうとすると、また今日も埋めた、また埋めた、となる。40埋めると80の穴が見えるんです。だからひとつずつ埋めようとするんです。その気概が見えるし「ああ、あそこはクリアした」という親父さんの意気込みみたいなものも読めるんです。
小山:そんな「すきやばし次郎」の親父さんでさえも「今日は調子が悪いな」と思うことはあるんでしょうか。
早乙女:調子が悪い、とかはないんです。私もそうなんですけど、ようするに「今がベストか」というチェックを必ず入れているんです。だから昨日より今日のほうがおいしいに決まってるんですよ。
小山:あはは(笑)。じゃあ明日行くお客さんはラッキーですね。
早乙女:そうですよ。今日より明日のほうが絶対に上手。今まで天ぷらを2000万個揚げて、その都度「今がベストか」と思ってやってきた。その経験の上で今度は2000万と1個目をやっているので、昨日より今日がおいしくなかったらおかしいんですよ。

・「みかわ 是山居」
東京都江東区福住1-3-1
完全予約制