【アメリカの教育】博士が抱えるローン事情とは

アメリカの博士の数

 博士のローン事情について紹介する前に、アメリカの博士の数について少し言及したい。アメリカの2017年度の博士号取得者数は、全米教育統計センター(以下 NCES)の統計資料によると、米国市民だけでなく永住者、非居住者を含めて184,074人である。

 この数は1976年からの統計で、最も多い数であり、ほぼ毎年増加傾向にある。また、184,074人の内訳としては、男性が85,568人、女性が98,506人であり、女性の方が博士号取得者数が多く、人種としては圧倒的に白人の数が多い。なお、このアメリカの博士号取得者数には、医学、法律などの分野も入れたProfessional fieldsと呼ばれる分野の博士号も含まれている。

アメリカの博士のローン事情

 次はアメリカの博士のローン事情について少しデータを紹介したいと思う。ここでいうローンとは貸与奨学金などの借金のことだ。

  2015年度にDoctor’s research(研究職博士。工学などの博士号や教育博士号などが含まれる)、Doctor’s professional (専門職博士。上記のProfessional fieldsと同義)が学生ローンを受給している割合を見てみよう。

 研究職博士は48%、専門職博士は75%の学生ローンを受給している。NCESによると、博士の学生について、この割合は1999年度から大差はないとのことだ。

 次は、1999年度から2015年度の大学院修了者の学位別の平均累積学生ローン残高の推移に注目してみよう。

 2015年度の平均累積ローン残高は、専門職博士号取得者が186,600ドルで最も高額だった。また、研究博士号取得者の平均ローン残高は108,400ドルだった。この残高は、学士号取得者(67,800ドル)と修士号取得者(66,000ドル)の平均ローン残高よりも多かった。

 また、1999年度から2015年度の間に、平均学生ローン残高は、すべての学位タイプで増加した。研究博士号取得者の平均学生ローン残高は、この期間中におよそ2倍の53,500ドルから108,400ドル(103%の増加)まで増加した。専門職博士号取得者の平均学生ローン残高は98,200ドルから186,600ドル(90%の増加)まで増加した。

  これらのデータから、アメリカの博士はかなりの割合でローンを抱え、また、その債務額は年々増加しており、多くの博士は金銭面で厳しい状況下で研究を続けていることがわかる。アメリカでは昨今学生ローンが問題として取り上げられているが、先に紹介したデータからは、特に博士において、金額的にもローンを抱えている学生の割合的にも大きな問題となっていることがわかる。

 先のデータは少し古いものだが、現在のコロナ禍ではこの状況がなおのこと悪い方向に進んでいると推測できる。ほとんどの学生が自ら望んで多額のローンを抱えてまで博士号を取得する道を選んだのだとは思うが、それでも各分野での将来を担う人材に給付型の奨学金などのローンを抱えずとも、博士号を取得できる制度などをさらに充実させるべきではないだろうか。

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