AIで「人間の鼻」再現へ 長崎大発ベンチャー「レボーン」研究開発 FFGが出資 さまざまなにおいデータ化

香りのレシピをつくるサービス「アイセント」の画面。利用者が好みのイメージを入力すると、AIが香料の配合比率を提案する(レボーン提供)

 においをセンサーで情報化し、人工知能(AI)で解析することで「人間の鼻」を再現したい-。長崎大発ベンチャーのレボーン(東京)は、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG、福岡市)から出資を受け、この研究開発を加速させる。産業界では、識別や判定をいまだ専門家の感覚に頼っており、データ化により誰でも可能に。食品の品質管理や快適な生活空間づくりなどに役立てる。
 出資したのは、FFGベンチャービジネスパートナーズ(福岡市)のファンド「FFGベンチャー」と、同社とGxPartners(同市)が共同で運営するファンド「九州オープンイノベーション」。レボーンは第三者割当増資で調達し、事業拡大や人材確保に充てる。出資額は非公表。
 レボーンは、長崎大大学院工学研究科博士前期課程修了の松岡広明代表取締役(29)が2016年に設立した。従業員数約30人。東京や長崎で開発・製造し、約30社でそれぞれ実証実験をしている。来年の本格運用を目指す。
 例えば、ある大手飲料メーカーは原料の異臭を人がチェックして取り除いており、個々の技能や体調に左右されかねない。そもそもにおいは時間がたてば変化することもあるため、化合式だけでは表せず、再現が難しい。レボーンはさまざまなにおいをデータベース化している。
 同社は9月、香りのレシピをつくる無料オンラインサービス「アイセント」を開始。利用者が季節や感覚など好みのイメージを入力すると、AIが香料の配合比率を提案する。手軽な調合キット(1万7600円)も販売。新型コロナウイルス流行でテレワーク利用者や、社員のヘルスケアに取り組む企業から注文が寄せられているという。
 長崎県で開発に関わる技術職や営業職を募集中。松岡氏は取材に「人間の視覚や聴覚はロボットに任せることができるが、嗅覚はまだ実現していない。世界中のにおいのデータを使い、新たな産業を生み出したい」と述べた。

松岡広明氏

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