ホンダF1田辺TD会見:レッドブル&アルファタウリと良好な関係を構築。活動終了を告げられ「彼らの顔が浮かんだ」

 ホンダが来年いっぱいでF1での活動を終了するという発表後、最初のレースとなる今週末の第11戦アイフェルGP。山本雅史マネージングディレクターによれば、田辺豊治テクニカルディレクターを含めた現場スタッフは、発表直前まであえて撤退は知らされてなかったとのことだ。田辺TD自身は、「今週末のレースを含め、1戦1戦全力を尽くすだけ」と語る。

 奇しくも言うべきか、田辺TDはかつてのホンダF1第2期、第3期、そして今回の第4期の活動終了に立ち会ってきた唯一のエンジニアでもある。普段は滅多に感情をあらわにしない田辺TDだが、「自分が全力投球してきたプロジェクトが終わりだと言われるのは、辛い感情はある。それは今回も、同じです」と、ほんの少し本音をのぞかせていた。

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──ニュルブルグリンクでのF1開催は、2013年以来となります。

田辺豊治テクニカルディレクター(以下、田辺TD):私自身久しぶりに来たのですが、ピットもガレージも設備は一新されていますね。前戦は4台完走、4台入賞の結果を出せた。いつも同じコメントで恐縮なのですが、今週末もそれを目指して全力を尽くします。

──寒いレースになりそうです。

田辺TD:今週末は非常に寒く、さらに雨の予報も出ています。外気温も非常に低いです。そんな状況でパワーユニットの冷却と車体側のセットアップの兼ね合い、それから雨で十分な周回ができない可能性もありますから、限られた時間のなかでしっかりデータを取って、天候変化にもきっちり対応していきたいですね。

 一方で、現行パワーユニットでは初めてのニュルブルグリンクですが、今季たとえばムジェロのような初めてのサーキットでもそこそこ機能してきました。今回も同様にシミュレーションとフリー走行の結果から、最大限のパフォーマンスを引き出せればと思います。

──ここまで寒いコンディションでのレース週末は、最近ではかなり珍しいと思います。それでもパワーユニット的には、さほど問題ではないのでしょうか?

田辺TD:予報では気温が一桁台まで下がるとも言われてます。そこまで寒いのは、2月のバルセロナテストでもちょっとない。路面温度も10℃台の可能性があります。パワーユニットとしては、単純に冷えればいいというものではなく、当然ながら低温側にも適正温度があります。油温、水温、各ユニットの温度ですね。そこが下がりすぎないよう、きちんと冷却設定を車体側と一緒にやっていく必要があります。

──活動終了の発表を聞いた時の、田辺さんの思いを聞かせてください。

田辺TD:我々現場のスタッフはチーム、ドライバーと密接に関わってやってきています。そのなかで2021年までしか契約を結んでいないというのは、常に頭の中にありました。最終的な結論はいつ出るのかと、やはり気になってましたね。それが、とうとう出た。ここまでレッドブルファミリーの2チームとは非常にいい関係を築いてやっていますから、彼らの顔が浮かんだりもしました。そこから私が去るのは、やはり残念です。

 ただそれと同時に、今までも1戦1戦全力で戦ってきたという思いはある。なので撤退が決まったからといって、何かが変わるかといえば、それはないです。今までと何も変わらないよう、今年残り7戦、来年1年を戦っていくということです。最後まで足を地につけて、悔いのないように、勝利への信念を持ってやっていこうと思ってます。

──田辺さんは第3期でも同じような経験をしています。前回はシーズン終了後に決定というドタバタの状況で今回と違うとは思いますが、受け止め方は違いますか。

田辺TD:実は私は、第2期の終了にも立ち会ってるんですね。これで3回目になります。第2期の際はシーズン終盤、モンツァでの休止発表でした。第3期はオフシーズン、そして今回が1年前ということになる。第3期では2009年のクルマのLPL(開発主査)も任され、これから行くぞ、という時期でした。それぞれ状況は違いますが、自分が全力投球してきたプロジェクトが終わりだと言われるのは、つらい感情はありました。それは今回も、同じです。

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2020年F1第5戦今季初優勝を果たしたレッドブル・ホンダ。レース後にトロフィーを掲げるホンダF1の田辺豊治氏(左)と山本雅史氏(右)
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