米FBI、ミシガン州知事拉致計画を阻止 13人逮捕

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米連邦捜査局(FBI)は8日、ミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致計画を阻止し、13人を逮捕したと発表した。同知事は新型コロナウイルス対策に懐疑的な人々から敵視されている。

ウィトマー知事は、厳格な新型ウイルス対策法案を成立させて以降、ウイルス懐疑派の攻撃対象となっている。成立した法律は先週、裁判所が無効とした。

FBIによると、逮捕した13人のうち拉致計画に関わった6人の男は、ウィトマー氏を「反逆罪の裁判」にかけようとしていた。

ウィトマー氏は、「憎悪、偏見、暴力は認められない」と述べ、男たちを「下劣」だと批判した。

隠し扉の地下室で

FBIの宣誓供述書によると、6月にオハイオ州ダブリンであった会合に覆面捜査員が潜入した。ミシガン州を本拠とする武装集団が、「合衆国憲法に違反していると彼らがみなした」複数の州政府を転覆しようと話し合っているのを確認した。

「メンバーの何人かは『暴君』の殺害や、現職知事を『取ること』について話をしていた」という。ビデオ映像では容疑者の1人が、新型ウイルス対策のロックダウンで閉鎖したスポーツジムの再開時期を、州当局が決めることを非難していた。

FBIによると、男たちは敷物で隠した床の扉から出入りする地下室で会合を開いていた。隠し撮りを防ぐため、参加者の携帯電話を集めて別の部屋に保管していた。しかし、FBIの覆面捜査員は別の記録機器を身に着けていたという。


知事の拉致を計画したとされる6人は、アダム・フォックス、バリー・クロフト、ケイレブ・フランクス、ダニエル・ハリス、ブランドン・カサート、タイ・ガービンの各容疑者。5人がミシガン州、1人がデラウェア州在住。

捜査当局は7日、ガービン容疑者のトレーラーハウスを家宅捜索した。

逮捕された他の7人は、知事拉致計画に絡んで、テロリズムとギャング関連の犯罪の容疑がかけられている。

7人は、ポール・ベラー、ショーン・フィクス、エリック・モリター、マイケル・ナル、ウィリアム・ナル、ピート・ミュージコ、ジョセフ・モリソンの各容疑者。


武器購入し訓練か

武装集団は約200人の仲間を集めて州政府ビルに突入し、ウィトマー知事らを人質に取る計画だった。来月3日の大統領選挙の前に実行する考えだった。うまくいかなかった場合は、知事を自宅で襲撃する予定だったという。

ミシガン州の司法当局は容疑者らについて、「連携してウィトマー知事の別荘を監視していた」とした。また、警官への火炎瓶による攻撃を計画し、電気ショックを与えるテーザー銃を購入していたほか、爆発物や作戦実行のための道具を買うため資金をためていたという。

FBIによると、容疑者らはいくつかの州で武器使用の訓練をし、爆弾を作ろうとしたこともあった。訓練の様子はビデオ録画されたという。

ミシガン州のダナ・ネセル司法長官は、知事拉致計画とは別に、武装集団のメンバー7人を訴追すると述べた。ギャングと関係をもち、テロリストに物資を提供した疑いがあるという。また、7人は内乱を引き起こそうとしていたとした。

トランプ氏の発言を非難

ウィトマー知事は8日の記者会見で、自らを拉致する計画は、ドナルド・トランプ大統領の発言と関係があると主張。トランプ氏は過去数カ月間、「不信感をあおり、怒りをたきつけ、不安や憎悪、分断を広める人たちに温情を与えている」と述べた。

トランプ氏は4月、「ミシガンを解放せよ」とツイート。同州政府への抗議行動者を支持する姿勢を示唆した。翌月、ロックダウンに反対する武装抗議行動者らが州政府庁舎になだれ込んだ。

同州のネセル司法長官は8日夜、5月の抗議行動で写真撮影された男2人が、今回の逮捕者に含まれていると明らかにした。

一方、トランプ氏は同日夜、FBIによる逮捕を自らの得点にしようとした。

トランプ氏は、「彼女(ウィトマー知事)は感謝するどころか、私を白人至上主義者と呼んだ。(民主党大統領候補の)バイデンと民主党は、民主党が政権を握る街を破壊するアンティファやアナーキスト、略奪者、ギャングを非難するのを拒んでいる」とツイートした。

大統領選をにらんで

来月の大統領選では、中西部ミシガン州は勝敗を左右する可能性があるとみられている。

トランプ氏と争うジョー・バイデン前副大統領は、武装集団を「真の脅威」と呼んで非難。トランプ氏の「解放せよ」というツイートが武装集団を活気付けたとした。

バイデン氏は、「大統領の言葉は影響力がある」、「なぜ大統領はただ、やめろ、やめろ、やめろ、やめろと言わないのか?」と述べた。

アメリカでは近年、数多くの暴力事件に市民の武装集団が関係している。白人男性が中心の「アドヒアランツ」は、抗議デモで武器を誇示することもある。国土安全保障省は今週公表した年次報告書で、暴力的な白人至上主義が「国内で最も根深く致命的な脅威」だとした。

ウィトマー知事が新型ウイルス対策のロックダウンを命じると、州都に数多くの人が押し寄せた。多くの抗議行動者が、知事を独裁者ヒトラーになぞらえた。


ウィトマー氏は8日、「誰も(新型ウイルス感染症)COVID-19のような難題に直面したことはない」、「私たちが敵対している場合ではない。ウイルスこそが、私たちの敵だ。しかも、容赦ない敵だ」と述べた。

同州最高裁判所は今月2日、ウィトマー氏には緊急命令を出す法的権限がないと判断。州議会が権限を保有するとした。

この判決を受け、裁判を争った弁護士は州民に「マスクを燃やす」よう呼びかけた。保健当局はCOVID-19の拡大を防ぐには、マスク着用が必要だとしている。

(英語記事 FBI busts 'plot' to abduct US governor