「少数者 切り捨てるな」 石木ダム控訴審  住民が意見陳述 第1回弁論

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没地区の住民らが県と同市に工事差し止めを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が8日、福岡高裁(矢尾渉裁判長)であった。住民はあらためて古里への思いと工事による権利侵害の状況を語り、県と同市側は引き続き争う姿勢を示した。
 一審の長崎地裁佐世保支部判決は、住民側が主張する「古里に平穏に住み続ける権利」を「抽象的で不明確」として棄却。利水、治水のダムの必要性については判断を示さなかった。
 意見陳述で住民の岩下すみ子さん(71)は「私たちが何十年もの間、重ねてきた暮らしが強制的に排除されようとしている。そんなに私たちの人生や決断は軽いものなのか。少数者として切り捨てないでください」と訴えた。
 代理人弁護士も意見陳述し、「住民はダム工事で居住地を奪われる。権利が不明確との指摘は当たらない」と一審判決に反論。同市が昨年度に示した最新の水需要予測の問題点も指摘した。裁判官に現地の視察も要求した。
 県と同市は、一審判決やダムの必要性を認めた事業認定取り消し訴訟判決などを根拠に請求棄却を求める答弁書を提出した。次回期日は12月10日。

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