「収入減っていれば誰でも…」SNSに誘い文句 持続化給付金の不正受給、神奈川でも相次ぐ

持続化給付金の不正受給が相次ぎ、中小企業庁はホームページなどを通じて注意喚起している

◆多くが若者 自首50人以上 無自覚加担も

 新型コロナウイルスの影響で収入が減った事業者らを支援するため、政府が設けた持続化給付金の不正受給が神奈川県内でも相次いでいることが、県警への取材で分かった。会員制交流サイト(SNS)などを通じて、安易に不正受給に手を染めたケースは少なくとも70件に上り、その多くで自首や返金の相談があるという。迅速な給付のために簡素化された申請手続きが逆手に取られており、県警は「詐欺行為に当たる。甘い話に乗らないよう注意してほしい」としている。

 「収入が減っていれば誰でも持続化給付金がもらえる」

 7月下旬、横浜市内に住む40代の男性会社員のもとに、数年前にインターネット上で知り合った知人から無料通話アプリLINE(ライン)でメッセージが届いた。いぶかる気持ちもあったが「もらえるものなら」との思いが勝り、知人と対面。紹介料や手続き代行料として受給額の半額程度を支払う約束をし、自身の口座情報や給与関係書類などを手渡した。9月初めに、“期待通り”100万円が振り込まれた。

 しかし、国から給付金をだまし取ったとして、全国の警察が不正受給に関わった人物を詐欺容疑で摘発していることを報道で知り、男性は自身も意図せぬままに不正に加担しているのでは、と思い悩んだ。「自分も捕まるかも」。不安と後悔の念にさいなまれ、数日後に、同市内の警察署に電話で相談し、自首したという。署は返金の手続きを取るよう指導した。

 県警によると、同様のケースによる自首はすでに50人以上に上る。10~20代の若者が多いといい、SNS上で「給付金がもらえる」などの誘い文句を見たり、知り合いから不正受給に誘引するSNSアカウントを教えられたりしたのをきっかけに手を染めている。多くが、手続きを代行すると称する人物や組織に口座や給与関係などの情報を伝達。見返りに、数十万円の手数料を支払うパターンという。

 「不正とは思わなかった」「怖くなった」-。捜査関係者によると、自首した人の多くは異口同音にそう話す。中には、家に送られてきた給付通知書を親が見つけて発覚。親に伴われて署に相談に訪れるケースもあるという。深く考えずに加担し、不安や罪悪感に耐えられずに警察を頼る若者らの姿が浮かぶ。

 梶山弘志経済産業相は6日、不正受給に関わった疑いで逮捕されたのが全国で30人を超えたと明らかにした。県警は税務署などからも情報提供を受け、悪質性の高い事案を中心に捜査を進めている。捜査幹部は「SNSなどを介し、ねずみ講式に広まっている」と警戒。中小企業庁は「原資は税金で、不正は許されない。自主的返還の場合は加算金を課さない予定で、身に覚えのある人は速やかに申告してほしい」と促している。

◆持続化給付金 新型コロナウイルスの影響で売り上げが落ち込んだ個人事業主や中小企業を政府が支援する制度。5月に申請受け付けを開始した。1カ月の収入が前年同月比で5割以上落ち込んだ場合、個人事業主に最大100万円、中小企業に最大200万円を支給する。専用ホームページで申請できるが、簡素さを悪用した不正受給が問題となっている。国は返金を受け入れるが、不正の自己申告がなく、国の調査で発覚した受給者には2割増しの額の返還を求める。

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