【気になる一言】「決め手になるのはドライバーの実力」とアルファタウリ代表。角田裕毅の将来にホンダの影響なしか

 2020年F1第11戦アイフェルGPの金曜日、ホンダF1の山本雅史マネージングディレクターとともにFIA会見に出席したのが、そのホンダのパワーユニットを搭載しているレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表とアルファタウリ・ホンダのフランツ・トスト代表だった。

 このふたりに対する質問のほとんどは、2022年からどのマニュファクチャラーのパワーユニットを搭載するのかだった。まず、ホーナーの最初の答えだ。

「明らかに、すべてのオプションを検討する必要がある。レッドブルは標準的な単なるカスタマーチームではない。高い目標を持ち、勝利を目指して戦う集団だ。それはレースに勝つというだけでなく、チャンピオンシップを制するという意味だ。したがって、我々はすべての選択肢を検討し、然るべき時期までに最適な決定を下さなければならない」

 物理的に最も可能性が高いのはルノーだ。ある記者が「シリル(アビテブール/ルノー・マネジングディレクター)は、あなたのクリスマスカードを送るリストに載っていますか?」と変化球の質問をした。するとホーナーは笑ってこう答えた。

「シリルはいつも私のクリスマスカードリストに載っているよ。彼がそれをどこに取っているのかはわからないがね。いずれにしても、ルノーが我々のサプライヤーになる可能性は十分に考えられる。ルノーは前回、私たちに供給していたときとは異なる組織になっている。彼らの現在の会長はF1に情熱を注いでいるように見える。この世界では、組織のトップの意欲や熱意が重要だからね」

 ホンダの協力を得て、レッドブル自らが、あるいはほかの新しいテクニカルパートナーとともに、パワーユニットを開発していくという選択肢はないのだろうか。ホーナーは言う。

「今は時間をかけて、さまざまなオプションをすべて検討する必要がある。なぜなら、レッドブルには競争力のあるパワーユニットが必要だからだ。ただ、ひとつ言えることは、パワーユニット供給に伴うコストは莫大だということだ。それがF1に新しいパワーユニットマニュファクチャラーが参入しない要因となっている。今回のホンダの活動終了によって、我々F1界は、新しいエンジンの導入が2026年では遅すぎることを真剣に考え始める必要があると思う」

2020年F1第11戦アイフェルGP金曜会見 フランツ・トスト(アルファタウリ チーム代表)、クリスチャン・ホーナー(レッドブル チーム代表)、山本雅史(ホンダF1 マネージングディレクター)

 アルファタウリの前身であるトロロッソ時代には、レッドブルと異なるパワーユニットやエンジンを搭載していたこともあるアルファタウリ。レッドブルのパワーユニット選定が長引いた場合は、アルファタウリは独自にパワーユニットサプライヤーを選択する可能性はあるのか。トストの回答はシンブルだった。

「我々にはそのような選択肢はない。我々のマシンに搭載するパワーユニットはレッドブルとおなじものだ。なぜなら、我々はレッドブルとシナジー(相乗効果)のプロセスを継続したいので、レッドブルと別のパワーユニットを搭載するという家訓替えは毛頭ない」

「アルファタウリが1から自分たちでギヤボックス、リヤサスペンションをもう一度設計し始めることはない。私たちはレッドブル・テクノロジーと非常に緊密な協力関係にあり、それらを継続したいと考えている。したがって、おなじパワーユニットを使用するしか道は残されていない」

 トストはホンダの育成ドライバーであり、レッドブル・ジュニアチームの一員でもある角田裕毅の将来について、「個人的にはホンダの活動終了は関係ないと思っている」と語ったホンダF1の山本雅史マネージングディレクターの意見に同調し、こう続けた。

「(今シーズンの最終戦アブダビGP後に行われる)若手ドライバーテストで、我々は角田裕毅を起用する予定となっているが、これはホンダの今回の決断とは無関係だ。レッドブルの哲学では常にパフォーマンスが優先される」

「私の記憶が間違っていなければ、彼は今年のFIA-F2で、イギリスとベルギーで2勝を挙げるなど、素晴らしい活躍を披露した。ウエットレースとなったオーストリアでもトップを走っていたが、数周後に無線トラブルが出たために勝利を逃すこととなった」

「つまり、彼は本当に良い仕事をしているということだ。我々はジュニアドライバーを厳しく評価している。そこにはホンダの影響はなく、決め手になるのはドライバーの実力だよ」

2020年FIA-F2第7戦ベルギー レース1で優勝を飾った角田裕毅(カーリン)
2020年FIA-F2第10戦ロシア 2位表彰台を獲得した角田裕毅(カーリン)

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