貯金残高を確認して愕然!貯められない結婚15年目夫婦の家計管理の問題点

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、45歳、パートの女性。結婚15年目の相談者。ある日貯金残高を確認したら、少なさにショックを受けたと言います。なぜ貯めることができないのでしょうか。家計の問題点は? FPの横山光昭氏がお答えします。

結婚15年の記念に家族で海外旅行に行こうと貯金を確認したら、150万円しかありませんでした。教育費の心配もあり、その旅行自体はあきらめることにしたのですが、15年経っても150万円しか貯まっていないということを初めて知り、ショックを受けています。

お金のやりくりについては、日々の生活は私が管理、月の支払いは夫が管理する形をとっています。毎月夫から7万円を受け取り、自分のパート代を合わせて食費や日用品、交際費、交通費など日々の生活をやりくりします。頑張ってやっているつもりなのですが、2週間目の後半でお金が足りなくなる月もあり、都度、夫にお金をもらうこともあります。

夫は住宅ローンや水道光熱費、塾代など口座引き落としになる支出を管理しています。貯金もしてくれていたはずなのですが、実際はできていなかったようです。こづかいでネットショッピングをすることが多く、夫自身がこづかいと決めている5万円を大幅に超えてしまうこともあるようです。そして赤字が出るとボーナスから補てんするということを繰り返していたようです。

今回、思うように貯金ができていなかったことが分かり、夫にその原因を聞いたところ、このように話していました。生活費を追加で渡したりしていたので、私のほうできちんと貯めているだろうと思っていたとも言われました。

今の状況を改善しないとお金は貯まらないのではないかと不安に思うのですが、どこから手を付けていけばわかりません。夫の協力も得られるかどうか……。どのようにしていけばよいでしょうか。

【相談者プロフィール】

女性、45歳、パート

同居の家族:夫(46歳 メディア関係の会社員)、長女(小3)次女(小1)

毎月の手取り収入:夫48万2,000円、妻3万4,000円

年間の手取りボーナス:夫約140万円(業績による)

貯金:約150万円

毎月の支出の目安:60万円

【毎月の支出の内訳】

住居費:10万4,000円(住宅ローン)

食費:9万6,000円(外食含む)

水道光熱費:2万6,000円

通信費:1万6,000円(スマホ2台)

生命保険料:1万8,000円

日用品代:5,000円

教育費:9万4,000円(子ども塾、夫ジム代、妻の習い事代)

被服費:4万3,000円(夫の被服費が多い)

交際費:5万1,000円(夫の交際費がほとんど)

こづかい:6万円(夫5万、妻1万)

ネットショッピング代:2万5,000円(夫の買い物)

使途不明:2万8,000円

その他:3万4,000円


横山:今回、貯金の金額に驚くまで、互いのお金の管理の仕方、使い方を知らなかったようですね。支出を書き出してみると、知らないうちにかなり支出が多くなっていることがよくわかります。知らないうちにメタボ家計になっていたのです。その原因は、どうやら支出を夫婦別々に管理する「夫婦別財布」にありそうです。このような家計管理は互いのお金の状況が見えないので、管理の仕方を工夫しないと、上手くいかない場合が多いものです。どのように家計改善していくとよいか、考えてみましょう。

夫婦別財布の欠点

近年は共働きが多いので、収入は自分自身で管理するという夫婦別財布のご夫婦は多いものです。また、出産や病気などさまざまな事情で妻が休職したことをきっかけに、または結婚当初から、相談者さんのように稼ぎは夫がメイン、妻がその一部をもらって日々の生活費をやりくりするようになったという夫婦別財布も、多く見かけます。

どちらにせよ、支出を別々に管理していると、相手が自分が思っているのとは違うお金の使い方をしていることがあります。また、互いに重複した支出をしている場合もあるでしょう。ムダ使いをしていることもあるかもしれません。

このようなことに、なかなか気が付けないのが、夫婦別財布の欠点です。互いのお金のことをオープンにしてみたところ、相手に多額の借金があることが分かったなど、ひどい状況でショックを受けたというケースもあります。互いが自立・尊重されるという点はメリットといえるかもしれませんが、お金の使い方がばらばらだと、生活の仕方もばらばらになってしまうこともあります。

できれば家計は昔のように1つにして管理することが良いのですが、「自分の稼ぎ」の意識が強い現代では、なかなか難しいことのようです。

家計を一つにするメリット

家計を一つにするという一見ハードルが高いと思えることが、夫婦別財布による問題を解決する糸口になります。ですが、急に1つにするとどうしてよいかわからないとか、自分の収入を相手に任せられない、自分でお金を自由に使えないのが嫌だなど、さまざまな問題が発生しがちです。

こういった気持ちもわかるのですが、そのままでは家計は良い方向に向かないので、支出の仕方を共有することができるように話し合い、報告しあえるような機会を設けることが大切になります。もちろん、妻や夫には知らせたくない買い物などは無理に共有しなくても良いでしょう。こづかいの範囲での支出となれば良いのですから。それ以外の家族が暮らすための住居費や水道光熱費、食費、日用品代など、一緒に暮らすための支出は、互いに知っておくべきです。共有できていれば、「今月はなぜ支出が多かったのだろう」「これは必要なかったのかも」という、支出のふりかえりもしやすいですし、ムダも見つけやすくなります。

夫婦別財布から家計を「一つ」に近づける方法

そして、夫婦別財布のもとで家計管理を上手くしていくには、共有する部分を多く持つということもポイントになります。家計を一つにするといっても、急にすべてを共有することはムリだと考える人もいいので、食費、日用品代、水道光熱費、通信費など、毎月変動する支出の一部を報告しあうところから始める人が多いのですが、次第に被服費、交際費……というふうに共有する部分を広げていったほうが、互いの価値観を合わせた家計管理ができます。

家計を風通し良くする、家族マネー会議のススメ

家計の共有部分を増やすには、支出状況(いわゆる家計簿など)を見せたりあ、話し合ったりすることが良いのですが、私はお子さんも含めて家族で家計について話す「家族マネー会議」をお勧めしています。

家計のことを家族に、しかも子どもに知られるのは抵抗がある、お金の話など暗い雰囲気になりそうだなど、不安に思われることも多いのですが、やり方次第では家族のコミュニケーションの場ともなり、非常に効果的だと思っています。

「お金の話をしましょう」と誘うよりは、「欲しいと言っていた○○を買うかどうかみんなで相談しましょう」程度をきっかけに、明るく話ができるといいですね。話す日はいつでもよいのですが、できれば給料日あとの家族全員が集まれる日がよいでしょう。

家族マネー会議のやり方は?

進め方は簡単です。

1、今月の収入の報告(やりにくい人はカットしても可)
2、先月の支出の報告(消費・浪費・投資に支出を分けて振り返る)
3、貯金額の発表
4、欲しいもの等のプレゼンテーション。多数決で「家計からの購入」が可かどうか判断
(5、雑談)

目的は家族の将来に向けたお金の話なので、「買うことができない」「お金の準備ができない」という話よりは、「こうするとお金の準備ができる」「このようにやりくりすると、買えるんじゃない?」といった前向きな話に持っていきます。時には商品やその値段など、調べなくてはわからないこともあると思いますので、パソコンなどもあるとよいでしょう。

夫婦の財布を1つに合わせ、お金の使い方や価値観を共有し、管理しやすい家計を作ることが、夫婦別財布の家計を改善する策となります。今回紹介したやり方は一例で、皆さんのご家庭に合わせてカスタマイズしていただいて構いません。ご自分なりのやり方で、取り組んでいきましょう。

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