中小企業の賃上げには、菅政権と真逆の政策が必要?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。9月28日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、政策コンサルタントの室伏謙一さんが“中小企業の賃上げ・生産性向上の手段”について述べました。

◆中小企業再編で地域経済は衰退する!?

菅首相が持論とする「最低賃金の引き上げ」を実施すれば、中小企業が淘汰される可能性があると経済産業省内で警戒感が漂っています。また、政府の成長戦略には「中小企業の生産性向上に向けた事業統合・再編を促すために予算・税制などを含めた統合的な支援策を示す」と明記されており、菅政権の中小企業政策に注目が集まっています。

日本の企業の99%を占める中小企業は「地域経済、地域の雇用、さらにはものづくりやイノベーションの担い手」と室伏さんは言います。それを"再編”という大義名分のもと潰すと当然雇用は失われ、地域経済も衰退。「地方を活性化、さらには起業し、企業数を増やせと言っているのに中小企業再編で数が多すぎるというのはおかしな話」と疑問を呈します。

また、優良な事業や技術も外資ファンドに奪われかねないだけに「それでいいんですか」と危惧。普段は経産省を批判してばかりという室伏さんですが、今回は「経産省の懸念はその通り」と同意。

◆賃上げが実現しない4つの要因

室伏さん曰く、中小企業の賃上げが困難な要因は「デフレ」、「コーポレートガヴァナンス改革」、「過剰なグローバル化」、「消費税」の4つ。

デフレについては「結局、需要が足りない」と言い、そのため作ってもものが売れず、企業はコーポレートガヴァナンス改革(株式資本主義)と銘打ち株主に対する配当を増やしているとか。そして、経常利益を上げようとコスト削減、人件費と設備投資が削られ賃金低下。そうなれば人々はものが買えず、価格も下げざるを得ず、さらなるコスト削減という悪循環に。

また、グローバル化も「結局は賃下げ・コスト下げ競争」と室伏さん。消費税も価格転嫁ができずに身銭を切らざるを得ないだけに賃金が上がらず、なおかつ生産性が上がらない理由も同じことが言えると指摘。

◆さらなる格差拡大、貧困が国をおかしくする

総じて室伏さんは賃上げ・生産性向上の手段として、まずは「デフレからの脱却」を挙げ、「財政支出を拡大し、有効需要を作るしかない」と言います。さらには、「コーポレートガヴァナンス改革をやめること」。でないと「国民は貧困化するばかり」と警鐘を鳴らします。

そして、「脱グローバル化」。今後は生産拠点を国内に戻し、「過度な自由貿易から緩やかな管理貿易に戻すべき」と提唱。トランプ政権がよく関税引き上げを叫びますが、「それは当たり前」と室伏さんは言い、「関税は自国の産業や国民を守るための1つの手段」と明言。あとは「消費税ゼロ」にすることで価格転嫁から身銭を切る必要がなくなるとも。

しかし、これらは菅政権の政策とは正反対だそうですが、「そうすれば賃上げも可能だし、生産性も向上する」と室伏さんは断言します。

ジャーナリストの長友佐波子さんは室伏さんの意見に賛同しつつ、安倍前首相が提唱していたトリクルダウン理論に対し「下から回して上げていく形に発想を変えていかないと難しい」と主張。

今や配当など不労収入を得るほうが財を生し、コロナ禍では格差が拡大していますが、室伏さんは「その構造を変えないと」と危機感を募らせます。というのもアメリカがまさにその状況で、昨今の暴動も「アメリカが抱えている矛盾が爆発した」と室伏さん。「その姿を見てほしい。いかに貧困が国をおかしくしていくのかが、よくわかる」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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