新規感染者約2万7000人 コロナ再燃のパリで “マスク警察”が取り締まり?殺人事件にも発展

「ムッシュー、公共交通機関に乗る時にマスクは義務よ」

マスクを着用せずパリ市内の路線バスに乗り込んできた若い男性に向かって、中年の女性の乗客が声をかけました。現在パリでは、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、市内全域でのマスク着用が法律で義務付けられています。違反すると135ユーロ(約1万6,000円)の罰金です。

日本では、マスクをしないなど感染拡大を防ぐためのマナーを怠っている人に対して指摘をする「マスク警察」と呼ばれる行為が、しばしば話題に上っています。フランスにもマスク警察はいるのでしょうか。現在のパリの状況を伝えします。


パリにもいる「マスク警察」

フランスでは、再び新型コロナの感染が拡大しています。10日の新規感染者数は2万6,896人、死者は54人を数えました。5月には新規感染者は1日200人を下回った日もありましたが、経済活動の再開などもあり、8月ごろから増加傾向が続いています。現在は再び、医療体制を逼迫させる状況に近づきつつあります。

以前、フランスでマスクをしている人を見かけることは珍しかったのですが、罰金を伴う義務化がされて以降、マスク姿は普通の光景になりました。マスクを巡るいざこざは依然あるものの、義務化が導入された初期に比べると目にする機会は減りました。

フランスでも、マスクをしていない人に対して指摘する人はいます。しかし、マスク着用義務の場所とそれ以外の場所が、明確に法律により線引きされているため、指摘する側もされる側も分かりやすく、そこが日本の雰囲気と異なるかもしれません。

鉄道駅で見た“マスク警察”

ただ、相手への伝え方によって、口論になることは多々あります。前もこんな光景に出くわしました。

パリ市内中心部レ・アール駅。市内と郊外をつなぐ路線がいくつも乗り入れる、パリ市内でも乗降者の多い駅です。駅のホームで、中年の男性が「マスクしろよ」とマスクをせずホームを歩いていた若い女性に注意しました。

マスクを持ってくるのを忘れてしまったと思われる女性は、バツが悪そうな顔をしつつ男性を無視して歩きますが、男性は執拗に女性をとがめます。ついに女性が反論すると、男性は「コロナに感染するから、お前とは話したくない」と、あからさまに嫌な顔をし、女性と距離を取るジェスチャーをしました。

マスク着用をめぐる殺人事件も

コロナ禍になってから、フランスではマスクを巡って殺人に発展する事件も起きました。

今年7月フランス南西部バイヨンヌで、バスの運転手がマスクを着用していない22歳と23歳の男の乗車を拒否したため、男たちはその運転手を暴行。その後、運転手は病院で脳死となり、その後息を引き取ったのです。男2人は殺人罪で訴追。フランスの各メディアで大きく報道されました。

マスク着用も正しく使えていない人も

新型コロナが流行し始めた初期に比べれば、フランスでのマスクの使い方に対する理解も,
ずいぶん進んでいます。しかし、それでも正しく使われていない例を、パリで目にすることがあります。

ときどき出会うのが、くしゃみをするときにマスクを外している人。くしゃみをしたときに、自らの飛沫でマスク内が不快になるからでしょうか。先日も、マスクを取って口を押さえつつクシャミをして、またマスクを着けるという人を列車内で見かけました。

黙っている時はマスクをしていても、喋るときにマスクを顎にずらす人もいます。自分の言葉を相手にはっきり伝えるためだと思われますが、これは年配者に多い印象です。また、道ゆく人を見ていても、マスクは着けていても顎にかけているという人は多いです。

フランス人の7割はマスク着用に賛成

マスク着用義務化について、フランスの人々はどう思っているでしょうか。オドクサ・デンツー・コンサルティング社が8月末に発表した世論調査の結果があります。この調査によると、新型コロナウイルスを防ぐため屋外でのマスク義務化をどう思うかという問いに対し、44%が「完全に好意的」、32%が「どちらかといえば好意的」と回答し、フランス人の7割以上が、現在のマスク義務化に賛成しています。

しかし、手放しで賛成というわけではありません。フランス政府は9月から始まった新学期にあわせて、学校における11歳以上の生徒のマスク着用を義務にしました。保護者は子供たちに日々のマスクに、追加の出費がかかってしまうことに負担を感じているようです。上記の調査によると、生徒のマスク無料化を78%が望んでいるという結果になりました。なお、教員には他の公務員と同じくマスクの支給があります。

再び感染が広がるパリ

また10月4日に調査会社Elba社が発表した世論調査によると、新型コロナウイルスのフランス国内での蔓延について、73%が不安と答えています。

このようにコロナ禍の状況になかなか終わりが見えないなか、10月5日にパリおよび周辺自治体は、感染状況の悪化のため「最大警戒地域」となりました。

すでに気温がぐっと下がり、霧雨の天気が毎日続くパリ。冬はすぐそこまで来ています。フランス人がマスクを着用する日々は、まだまだ続きそうです。

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