どうなる「大阪都構想」 コロナ禍の中、迫られる重い判断

 「大阪都構想」への賛否を問う大阪市民対象の住民投票が12日、告示されました。大阪都構想は政治団体・大阪維新の会の看板政策で2015年にも住民投票が行われましたが僅差で否決され、今回は2回目です。投開票は11月1日。投票結果には法的拘束力があり、可決されれば25年1月1日に大阪市は廃止されます。新型コロナウイルス感染収束が見通せない中、大阪市民は重い判断を迫られています。(47NEWS編集部)

「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が告示され、大阪市役所前に並んだ投票参加を呼びかける電気自動車「行こう!投“ヒョウ”号」。車体にはヒョウの写真がラッピングされている=12日午前

 Q 大阪都構想って、何ですか

A 政令指定都市の「大阪市」を廃止して東京23区のような特別区に再編する構想です。今回は4つの特別区「淀川」「北」「中央」「天王寺」に再編する案です。政令市が廃止されれば1956年の制度創設以来、初めてのことになります。

Q 実現したら何がどう変わるのでしょう。

A 特別区は教育や福祉、ごみ処理など住民に必要なサービスを提供します。特別区の区長と区議は選挙で選ばれ、独自に予算を組みます。教育委員会や児童相談所、保健所は各特別区に設けられます。一方、大規模開発や成長戦略策定、観光振興、インフラ整備といった広域行政は大阪府に一元化します。大阪維新の会は、特別区では今より地域に合った医療、福祉、教育事業ができると主張します。また、大阪府と大阪市が同じような事業や政策を別々に実施してきた「二重行政」の状態をなくせば、より効率的に大阪全体を成長させることができると訴えています。

「大阪都構想」の住民投票が告示され、街頭演説を終えて聴衆にアピールする(左から)公明党の佐藤茂樹衆院議員、松井一郎大阪市長、吉村洋文知事=12日午前、大阪・難波

Q 反対する人の意見はどのようなものですか。

A 自民、共産、立憲民主各党などは、市を4つに分割すると人件費などが余計にかかることなどから、財源が不足して現在の住民サービスを維持できなくなる恐れがあると指摘しています。特別区の間で税収に格差が出ると心配する声もあります。

「大阪都構想」の住民投票が告示され、「反対」のボードを掲げる立憲民主党の辻元清美氏(手前右から4人目)ら=12日午前、大阪・新世界

Q 大阪府の名称は「大阪都」になるのですか。

A 大阪都に変更するには新たな法整備が必要です。今回構想が可決されたら松井一郎大阪市長は名称変更の実現を政府に求める考えです。

Q 可決か否決かは、どのように決まるのですか。

A 今回の住民投票は、投票率に関係なく「賛成」が「反対」を1票でも上回れば可決です。賛成と反対が同数のときは否決、反対多数のときも否決です。賛否双方が主張を展開する「投票運動」は、通常の「選挙運動」と異なりテレビCMや新聞広告も自由。運動費用も無制限です。選挙運動は投票前日までしかできませんが、投票運動は投開票当日の午後8時まで訴えが可能です。15年5月の住民投票のときは投票所での呼び掛けも繰り広げられました。ちなみに、15年は反対70万5585票、賛成69万4844票の1万741票差で否決されました。

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