DNP、スマートフォンで自動車の施錠・解錠を行うデジタルキープラットフォームを提供開始

生活者のライフスタイルやモノの所有に関する意識の変化により、シェアリングエコノミー(共有経済)への移行が予想されている。自動車関連では、2019年10月に国土交通省により道路運送車両法の保安基準が改正され、自動車のシェアを前提としてスマートフォンによるドアの施錠・解錠やエンジン始動が認められるなど、デジタルキー導入への流れが加速している。スマートフォンから車への接続ソリューション向けの技術開発等を推進する団体「Car Connectivity Consortium(以下、CCC)」のデジタルキーの仕様は、高度化する自動車の盗難手口やサイバー攻撃に対応すべく、ICカードや車載機の近距離無線通信の国際規格「Near Field Communication(以下、NFC)」等をベースとしたセキュリティ技術が施されており、グローバルな企業がスマートフォンや自動車への適用を発表するなど注目を集めている。大日本印刷株式会社(以下、DNP)は、CCCが策定する標準仕様に準拠した、スマートフォンで自動車の施錠・解錠を行うデジタルキーの配信・管理のためのプラットフォームを提供する。同プラットフォームは、自動車のデジタルキーにとって重要とされる暗号鍵や電子証明書を生成し、安全・安心に車載機やスマートフォンなどに配信するためのプラットフォームである。暗号鍵や電子証明書等の重要データは、DNPのデータセンターで生成・発行される。暗号鍵はデータセンター内で厳重に管理して車載機に書き込むデータを製造工場に安全に配信する仕組みを提供するほか、個人情報の安全な取り扱いとデジタルキーの利用状態を管理する。そして、車載機やスマートフォンに対して遠隔で電子証明書等の更新データを配信する。また、車載機用のセキュアエレメントはCCC準拠のアプリケーションを搭載しており、車載機側で複雑な処理を行う必要がない。また、デジタルキーを含む各種サービスのトラストアンカー(電子的な認証手続きの基点)として利用できる。加えて、NFCのリーダに搭載するアンテナのチューニングや回路形成等のノウハウを基にドアハンドル以外にも実装可能な多様な形状のNFCモジュールを提供する。セキュアエレメントとの連携も可能だ。さらに、車の予約から本人確認、決済、鍵の授受や廃棄までの一連の手続きを、非対面かつ利用者自身の操作のみで完結できる新サービスが求められるなか、DNPの本人確認(eKYC:electronic Know Your Customer)や決済関連サービスなどと同プラットフォームを組み合わせることで、セキュリティと利便性を両立させたサービスを提供する。DNPは今後、2020年10月から自動車メーカーやデジタルキー用車載機メーカーなどに開発環境を提供し、2023年頃を目処に共同利用可能なデジタルキーセンターの構築を目指す。また、自動車デジタルキー用の車載セキュアエレメント(セキュリティ機能がある半導体製品)、バックアップキーとして利用可能なICカードの提供も順次開始し、NFCとワイヤレス充電器Qi(チー)の一体型モジュールの提供も検討しているという。これらによりレンタカーやカーシェアリングなどのMaaS(Mobility as a Service)の拡大やスマートシティの実現を推進する。そして、販売目標として同プラットフォームと関連サービスで2025年度に10億円、2030年度に累計84億円の売上を目指すとした。

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