【大学野球】大学に入り直した2人のドラフト候補 伊藤大海と河村説人が戦った最後の試合

苫小牧駒大・伊藤大海(右)と星槎道都大・河村説人【写真:石川加奈子】

明治神宮大会が中止となり急遽行われた「北海道大学王座決定戦」

12日に苫小牧とましんスタジアムで行われた「北海道大学王座決定戦」で、ドラフト候補が投げ合った。北海道六大学を制した苫小牧駒大の伊藤大海投手(4年、駒大苫小牧)と札幌六大学を制した星槎道都大の河村説人投手(4年、白樺学園)。ともに1年遅れで現在の大学に入り直した23歳右腕は大学最後の試合を楽しみ、試合は3-3で引き分けた。

ドラフト1位候補に挙がる伊藤は「7番・投手」で先発した。投げては5回5安打2失点。2回にソロ本塁打を浴び、3回にも2本の長短打で1点を失った。直球は自己最速に6キロ及ばない150キロ止まり。試合後には「ピッチングは5点です。こういう天候(小雨)の中で制球が中々定まらなかったですし、ちょっと力んでしまった部分もあったので。学生として最後に投げる試合で子供っぽさが出てしまいました」と苦笑いした。

気持ちの強さが売りで、厳しい場面になればなるほど力を発揮する156キロ右腕にとって難しい試合だった。本来なら明治神宮大会の代表権を争う大会として行われる予定だったが、9日に大会中止が決まり、急遽1試合の「王座決定戦」として開催された。「勝っても先がないし、負けても何も残らないという中で、モチベーションは難しかったですが、周りの大学より長く野球ができることに喜びを感じて投げきろうと思いました」と語る。

勝負にこだわりながらも、野球を思いきり楽しんだ。9回の第4打席では左翼フェンス直撃の当たりを放ち、50メートル5秒8の快足を飛ばして、楽々二塁を陥れた。6回からは左翼の守備に就き、1点リードで迎えた9回2死二塁の場面で左中間への打球にダイビングキャッチを試みた。ボールに届かず同点二塁打とされると悔しがった。「自分のことよりもチーム最優先で、できることをやろうとしか考えていませんでした」と。怪我を心配する周囲の声を笑い飛ばした。

来春には大学名が北洋大に変わるため「苫小牧駒大」として戦うのも最後だった。投げて、打って、走って、飛んでユニホームを泥んこにした伊藤は「(最初に入学した駒沢)大学をやめた時に“あと4年間やり直すのか”という気持ちを持っていたんですけど、それが今日で終わってしまうんだなと思うとグッと来るものがありました」と感慨深げに語った。

侍ジャパン大学代表にもなった伊藤を意識してきた河村

一方の河村は、打席には立たずに投手に専念した。最速150キロを誇る192センチの長身右腕は、7回3安打2失点(自責1)、10奪三振で大学最後の試合を終えた。球場のスピード表示では最速148キロだったが、プロのスカウトのスピードガンでは自己最速タイの150キロをマーク。「相手は伊藤大海が投げるということで、自分としても特別な気持ちを持って試合に入りました。いい試合でした」と充実感を漂わせた。

1年遅れで現在の大学に入り直した伊藤と同様、河村も亜大を1年夏で退学して翌春、星槎道都大に入学した。「(伊藤は)境遇も同じ。彼は大学日本代表でも投げていましたし、ドラフト1位候補と言われてメディアに出ることも多い。かなり刺激を受けました」と特別に意識する存在だ。昨冬に愛媛・松山で行われた大学日本代表候補合宿では伊藤と同部屋で過ごした。

伊藤よりも2イニング長く投げた河村は「同点に追いつかれてしまったことは反省点ですが、悔いのない投球ができたのかなと思います」と胸を張った。点数を聞かれると「今日は100点をつけておきます。何も思い残すことなく大学野球を終えることができたので」と明るい表情。26日のドラフト会議に向けて「自分ができることはやったので、自信を持って当日を迎えるだけです」とうなずいた。

全国切符を争うことなく行われたラストゲームは3-3の引き分けに終わった。表彰式を終えた後、2人は談笑しながらお互いの健闘を称え合っていた。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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