医薬卸大手4社談合、昨年に続き2度目の強制捜査 厚労省は薬価データ削除

独立行政法人「地域医療機能推進機構」(JCHO)発注の医薬品入札を巡り、談合していた疑いが強まったとして、公正取引委員会が2020年10月13日、医薬品卸大手4社の本社など関係先を独占禁止法違反容疑で強制調査を始めた。同機構の入札案件に関する4社への強制捜査は2度目。入札額が巨額で国の薬価改定における影響が大きいことから、厚生労働省は同機構が発注した価格データを調査対象から外した。

調査対象の4社でシェア約90%、加藤官房長官「厳正に対処する」

昨年11月に引き続き強制捜査を受けているのは最大手のメディパルホールディングス(以下HD)傘下のメディセオ、アルフレッサHD傘下のアルフレッサ、スズケン、東邦HD傘下の東邦薬品。4社は2018年にJCHOが発注した医薬品の一般競争入札を巡り、事前に落札業者を決めて受注調整を図った疑いが持たれているが、その捜査過程で16年の入札においても談合の疑いが浮上。再度強制捜査を受けるに至った。4社の幹部が入札前に都内の貸会議室などで事前調整したなどの経緯が、捜査関係者に把握されているという。

JCHOは、旧社会保険庁から社会保険病院や厚生年金病院を引き継いだ独立行政法人が前身。57病院、26の介護老人保健施設などを運営しており、扱う医薬品の品目は7,000を超えるため、調達の効率化・費用圧縮の目的で、複数の病院が扱う医薬品については本部が一括調達する共同入札方式を採用している。入札は2年に1回で、落札者はJCHOと2年間の購入契約を結ぶ。疑われているのはこの共同入札における談合のうち、16年と18年の分とみられる。2年ごとに実施されたこの共同入札は、JCHOが発足した14年、16年、18年において4社が受注を分け合っている。

この入札での年間受注規模は数百億円に上るため、4社のみならず卸市場全体における影響は大きく、さらに、国が関係する機関の調達案件においても巨額だったこの入札は、卸会社が医療機関に納入する市場価格を基に見直される薬価改定にも大きな影響を及ぼす可能性が排除できない。談合で価格が高止まりすれば病院経営の悪化や患者負担の増加につながるため、厚生労働省は公取委の強制調査を受け、19年の薬の市場価格の調査データから、JCHO発注分の販売データを除外した。

また、加藤勝信官房長官は13日の記者会見で、捜査中のためこの件に対する直接の言及は避けるとしたが、一般論として「談合は公正かつ自由な競争を通じた価格形成を阻害するものなので、法令にのっとり厳正に対処する必要がある」と述べた。

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