<レスリング>【2020年全日本大学グレコローマン選手権・展望】V20を目指す日体大、強力新人を擁する拓大が台頭するか

 全国高校選抜大会に続き、大学生の大会も再開へ-。全日本大学グレコローマン選手権が10月15日(木)~16日(金)、東京・駒沢体育館で行われ、今年初めてとなる学生選手の闘いが行われる。昨年は日体大が3階級で優勝し、大学対抗得点は62点をマーク。2位の山梨学院大に11点の差をつけて4年連続19度目の優勝を達成した。

 2017年には7階級制覇で圧勝優勝だったのが、2018・19年と2年連続で3階級の優勝にとどまった。他大学のレベルアップの前に、20度目の優勝はすんなりとはいきそうにもない。優勝ラインは「60点」か(優勝=12点、2位=9点、3位=6点、5位=3.5点、7位=2点、8位=1点)。

 大学対抗得点と各階級の見どころをさぐった。

(注)各大学の正エントリー選手の昨年までの成績をもとにした予想です。コロナ禍によるブランクや直前の負傷による実力ダウン、選手の交代等は勘案しておりません。


大学対抗得点・展望

 4年連続優勝を目指す日体大は、60kg級の稲葉海人、63kg級の矢部和希、67kg級の曽我部京太郎、72kg級の日下尚、77kg級の下山田周、97kg級の仲里優力の6階級で優勝を目指せる力がある。

昨年優勝の日体大、4年連続20度目の優勝なるか

 確実性が高いのは下山田仲里。全日本王者の日下の階級には3連覇を目指す前田明都(専大)がおり、足元をすくわれる可能性もある。軽量級は拓大や中京学院大などが壁になる場合も。6階級優勝は厳しいのではないか。残る87kg級と125kg級で得点「0」に終わったら、優勝はかなり厳しくなるだろう。

 拓大は55kg級で塩谷優(東京・自由ヶ丘学園高卒)、60kg級で清水賢亮、63kg級で竹下航生(香川・高松北高卒)、67kg級で萩原大和(埼玉・花咲徳栄高卒)の軽量級に優勝の望みがある。日体大と重なる階級で、日体大選手を破って優勝を重ね、重量級も3位以内を目標に得点を重ねたいところ。

 山梨学院大は125kg級にエントリーしたバグダウレット・アルメンタイの優勝は堅そう。87kg級は山田修太郎が期待されるが、奈須川良太(神奈川大)との勝負か。この2階級で優勝し、他の階級でコンスタントに上位を取れば優勝も見えてくる。奈須川を筆頭に神奈川大も選手層が厚いので、その踏ん張り次第で優勝ラインはかなり下がってくるだろう。


各階級・展望

 【55kg級】

1年生王者を目指す塩谷優(拓大)

 昨年2位の榊原凌我(国士舘大)が今年は栄冠を勝ち取るか。全日本学生選手権3位の岡本景虎(専大)、東日本学生秋季新人選手権優勝の松本健新(神奈川大)が台頭するか。

 新人では、全国高校生グレコローマン選手権で2連覇(51・55kg級)を達成し、全日本選手権では2位に躍進した塩谷優(拓大=東京・自由ヶ丘学園高卒)が1年生王者を目指す。全国高校生グレコローマン選手権と国体の51kg級で二冠を制覇した荒木瑞生(九州共立大=佐賀・鳥栖工卒)が大学のこの階級で上位へ食い込めるか。

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 【60kg級】

初の学生タイトル奪取なるか、稲葉海人(日体大)=撮影・保高幸子

 全日本学生選手権2位で全日本選手権は3位に食い込んだ稲葉海人(日体大)、昨年2位で全日本選手権3位の清水賢亮(拓大)、昨年3位の神田優人(中京学院大)の争いか。

 東日本学生春季選手権優勝の大城達人(国士舘大)や東日本学生選手権秋季新人戦優勝の河名真偉斗(専大)が優勝争いにからめるか。

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 【63kg級】

2階級にわたる連覇を目指す矢部和希(日体大)

 昨年2位の島谷東志(大東大)と、JOC杯とこの大会の60kg級を制した矢部和希(日体大)の争いか。全国高校生グレコローマン選手権と国体の60kg級で優勝し、全日本選手権同級2位の竹下航生(拓大=香川・高松北高)が一気に1年生王者に輝けるか。

 世界ジュニア選手権のフリースタイル57kg級で優勝した阿部敏弥(国士舘大)がエントリーしている。グレコローマンでも、2018年の全日本学生選手権とこの大会でともに3位に入賞した実力を持つ。

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 【67kg級】

国体3連覇の実績で日体大へ進んだ曽我部京太郎

 国体少年3連覇(55・60・65kg級)を達成した曽我部京太郎(日体大=愛媛・今治西高卒)が1年生王者をめざす。昨年の全日本選手権は8位に終わっている。学生・シニアの壁を打ち破れるか。新人では、全国高校生グレコローマン選手権65kg級2位の萩原大和(拓大=埼玉・花咲徳栄高卒)も上位進出が期待される。

 受けて立つ形となった昨年3位の田口学容(中京学院大)、西日本学生選手権2位の向井克典(徳山大)らが意地を見せられるか。

 フリースタイル65kg級で学生二冠王者の安楽龍馬(早大)もエントリーしている。山梨・韮崎工高時代に2年連続で全国高校生グレコローマン選手権を制した実力を持っている。

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 【72kg級】

3連覇を目指す前田明都(専大)

 2018年世界ジュニア選手権5位の実績を持つ前田明都(専大)が3年連続優勝を目指す。最大の敵は、全日本選手権で日本グレコローマン史上最年少(19歳0ヶ月22日)の王者に輝いた日下尚(日体大)だろう。2月のアジア選手権でも5位入賞を果たしており、実力を伸ばしているだけに、激しい闘いが予想される。

 全日本学生選手権優勝の北條良真(神奈川大)、昨年3位の永松麗(徳山大)が優勝争いに残れるか。

 全国高校生グレコローマン選手権と国体71kg級を制した松居俊伍(慶大=福井・敦賀気比高卒)が、同大学から初のメダル獲得の殊勲なるか。

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 【77kg級】

兄・培(現警視庁)が達成できなかった大学王者の戴冠なるか、下山田周(日体大)

 JOC杯と全日本学生選手権を制した下山田周(日体大)が一歩リードか。全日本選抜選手権でも3位に入った実力者だ。

 72kg級でJOC杯を制し、この大会でも3位だった菅原魁一(日本文理大)、JOC杯72kg級2位の古川裕貴(九州共立大)、昨年82kg級3位の谷口空良(青山学院大)、フリースタイルが中心の選手だが昨年3位だった横山凛太郎(山梨学院大)らが、どう挑むか。

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 【82kg級】

西日本大学の意地を見せられるか、山﨑翔馬(九州共立大)

 西日本インカレ3連覇(75・77・79kg級)で、昨年この階級2位の山﨑翔馬(九州共立大)が、今年は優勝できるか。階級を上げて1年が経ち、パワーアップの成果を発揮したいところ。西日本からは全日本学生選手権3位の今村太陽(福岡大)も意地を見せたい。

 全日本選手権フリースタイル79kg級3位の梅林太朗(早大)が、このスタイルでどこまで上位へ食い込むか。

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 【87kg級】

両スタイルで大活躍の山田修太郎(山梨学院大)

 昨年82kg級で優勝した山田修太郎(山梨学院大)と、この階級で全日本学生選手権2連覇の奈須川良太(神奈川大)の争いか。山田は今年2月のアジア選手権(インド)ではフリースタイル86kg級で優勝。両スタイルともに実力を持っていて勢いがある。奈須川は、この大会は2度とも優勝を逃している。しっかり勝って学生のナンバーワンを手に入れたい。

 全日本選抜選手権82kg級3位の田中真男(日体大)、全国高校グレコローマン選手権優勝の玉岡颯斗(早大=群馬・館林高卒)らが両者の優勝争いを阻止できるか。

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 【97kg級】

全日本王者も視野に入れている仲里優里(日体大)

 JOC杯と全日本学生選手権を制した仲里優力(日体大)が一歩リードか。全日本選手権でも2位に躍進しており、実力をアップさせている。全日本学生選手権3位の三浦庶宏(神奈川大)がどこまで食いつけるか。

 フリースタイルの選手だが、全日本選手権92kg級王者の大津拓馬(山梨学院大)、全日本大学選手権97kg級優勝の吉田ケイワン(日大)、東日本学生選手権春季新人戦97kg級優勝の山本壮汰(拓大)、同秋季新人戦優勝の山崎祥平(早大)がエントリーしている。このスタイルでどこまで闘えるか。

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 【130kg級】

最重量級でも強さを見せるか、バグダウレット・アルメンタイ(山梨学院大)

 番地啓太(国士舘大)が昨年の学生2大会(全日本学生選手権、全日本大学グレコローマン選手権)を制し、今年も優勝候補と考えたいが、この大会2年連続で97kg級を制したバグダウレット・アルメンタイ(山梨学院大)が階級を上げてエントリーし、3連覇を目指す。日本選手相手は負け知らず。今大会も優勝候補と言えよう。

 昨年2位のアビッド・ハルーン(日体大)、全日本学生選手権2位の鈴木翔真(拓大)、同3位の森右秀(中京学院大)庄司樹(専大)らが優勝戦線に加われるか。

 新人では、全国高校生グレコローマン選手権と国体を制した宮内勇真(神奈川大=静岡・伊豆総合高卒)がどこまで上位に食い込めるか。

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