リック・スプリングフィールドが歌う “80年代洋楽三大ストーカーソング” の恐怖! 1982年 3月23日 リック・スプリングフィールドのアルバム「アメリカン・ガール」が米国でリリースされた日(ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー 収録)

歌詞に登場する “友人の彼女を奪いたい横恋慕男” と “見返り要求男”

ギターをかき鳴らしながら歌うのは、ストレートかつポップなロック。役者もこなす、爽やかなグッドルッキング・ガイ。1980年代前半、そんな売り方をされていたリック・スプリングフィールドだが、私にはなんだか違和感があった。

初めて聴いたリックの曲が、全米No.1ヒットとなった「ジェシーズ・ガール」。友人ジェシーの彼女に横恋慕した男の歌なのだが、その横恋慕度がハンパない。

ジェシーと彼女がイチャついて話していると、悪意が湧くのが抑えられない。夜に愛し合うジェシーと彼女を想像しては悶々とする。そして、しつこいくらいに「♪ I wish that I had Jessie's girl!」を繰り返す。え、ジェシーは友人なんだよね? いい奴なんでしょ?

曲調は、ノリのいい明るいロックンロールだが、歌詞に込められたのは、“良き友人の彼女を奪いたい” という薄暗い感情だ。

次のシングル曲「エヴリシング・フォー・ユー」に登場するのは、見返り要求男。「オレは君のために何だって捧げたのに、君は何にもしてくれないよね」と、しつこいくらいに繰り返す。「いつかたくさんのお金を手に入れて、ミリオネアになるんだ。どうせ君が欲しいのは、たくさんのお金なんだろ」って、まるで寛一お宮じゃないか。

そしてついに “強烈な嫉妬に燃えるストーカー男” が登場!

極めつけが、1982年5月に米ビルボードチャートで最高位2位までいった「ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー」だ。ここで歌われているのは、男の嫉妬。今カノか元カノか、片思いの相手か、そこは謎だが、他の男に傾いている彼女にやきもきし、「他人とは話すな、オレ以外の男とは口をきくな」と、しつこいくらいに繰り返す。

嫉妬に燃える男のストーキング行為が詳細に描かれている、この曲のMVも印象的だった。暗い夜道を歩く彼女の後を、こっそりつける男。彼女が他の男と電話をしていると、その電話に火をつける。彼女が他の男とデートしているレストランでテーブルの下に潜り込み、彼女の脚をなでる。

このあと、男のストーキング行為はエスカレートする。彼女がデートをした男の家に入るのを確認し、ドア越しに様子をうかがう。そして、彼女がベッドに横たわる姿を外からじっと見つめていたと思うと、窓を突き破って、その部屋に飛び込んでいく。

この窓を突き破る場面、カッコよくスローモーションになる。悪人に奪われた美女を奪還せんとするヒーロー風な撮り方なのだが、いやいや、彼女、ノリノリでベッドに横たわっていたし。「これから彼と…… むふふ♡」ってなってたときに、とんでもなく危険なやり方で邪魔されたわけだから!と、ツッコミたくなる。

80年代洋楽三大ストーカーソングとは?

MVで、このストーカー男を演じているのは、もちろんリック本人。ラスト、スーツケースを提げた彼女は、ギターをかき鳴らして熱唱するリックをあきれ顔で見つめ、その横をすり抜けて去っていく。そりゃそうだ。こんな奴がいる街からは、一刻も早く旅立ったほうがいいだろう。

当時は、リックのカッコよさに目を奪われ、「こんなに好きなのに、振り向いてくれない彼女、イケズだわー」とのんきに思ったこともあったが、あらためて見ると、このMVはあまりに暗い。

80年代の洋楽ストーカーソングとして、よくあがる曲がある。ポリスの「見つめていたい」とダリル・ホール&ジョン・オーツの「プライベート・アイズ」だ。どちらも相手の女性をずっと監視し続ける男の歌だ。この「ドント・トーク・トゥ・ストレンジャー」も加えて、80年代洋楽三大ストーカーソングと勝手に呼びたい。

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カタリベ: 平マリアンヌ

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